今回は平成27年度 機械科目 A問題11を解説します。太陽光発電システムの基本構成(昇圧チョッパ+PWMインバータ)と、太陽電池の出力特性・インバータの力率に関する空欄補充問題です。
太陽電池の出力特性曲線は電力を最大化する点(最大点)で運転するよう制御されます。A部分は昇圧チョッパ、B部分はPWMインバータで、インバータ出力の力率を1(同相)に近づけて小形化を図ります。系統との接続にはインダクタンス成分を含む要素(絶縁変圧器など)の挿入が必須です。
平成27年度 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成27年度 A問題11
次の文章は,太陽光発電システムに関する記述である。
図1には,商用交流系統に接続して電力を供給する太陽光発電システムの基本的な構成の一つを示す。
シリコンを主な材料とした太陽電池は,通常1V以下のセルを多数直列接続した数十ボルト以上の直流電源である。電池の特性としては,横軸に電圧を,縦軸に(ア)をとると,図2のようにその特性曲線は上に凸の形となり,その時々の日射量,温度などの条件によって特性が変化する。使用するセル数をできるだけ少なくするために,図2の変化する特性曲線において,△印で示されている最大点で運転するよう制御を行うのが一般的である。
この最大点の運転に制御し,変動する太陽電池の電圧を一定の直流電圧に変換する図1のA部分は(イ)である。現在家庭などに導入されている多くの太陽光発電システムでは,この一定の直流電圧を図1のB部分のPWMインバータを介して商用周波数の交流電圧に変換している。交流系統の端子において,インバータ出力の電流位相は交流系統の電圧位相に対して通常ほぼ(ウ)になるように運転され,インバータの小形化を図っている。
一般的に,インバータは電圧源であり,その出力が接続される交流系統も電圧源とみなせる。そのような接続には,(エ)成分を含む回路要素を間に挿入することが必須である。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 電力 昇圧チョッパ 同相 インダクタンス (2) 電流 昇圧チョッパ 90°位相進み キャパシタンス (3) 電力 降圧チョッパ 同相 インダクタンス (4) 電力 昇圧チョッパ 90°位相進み インダクタンス (5) 電流 降圧チョッパ 90°位相進み キャパシタンス


出題のポイント:太陽電池の特性曲線は「上に凸」
(ア)の判定は、図2の曲線が「上に凸」だという記述から決まります。横軸が電圧のとき、上に凸の山形になるのは電力——電流なら右下がりの角ばった形になります。
| 縦軸 | 曲線の形 | 最大点の意味 |
| 電流(I-V特性) | ほぼ水平から、開放電圧付近で急に落ちる | 最大点は存在しない(単調減少) |
| 電力(P-V特性) | 上に凸の山形 | ★山の頂点が最大電力点 |
電力は電圧×電流です。電圧0では電流が最大でも電力は0、開放電圧では電流0なので電力も0——その中間に山ができます。問題文の「△印で示されている最大点」は、この山の頂点です。
「上に凸」「最大点がある」という記述から、縦軸が電力だと確定します——この1点で選択肢が3つに絞れます。



(イ)昇圧チョッパ
太陽電池は「数十ボルト以上の直流電源」と問題文にあります。商用系統に接続するには、これを持ち上げる必要がある——だから昇圧チョッパです。
インバータは直流電圧より高い交流電圧を作れません。単相200 V の系統ならピーク値283 V 以上の直流が必要——太陽電池の電圧では足りないことが多いのです。
問題文の「使用するセル数をできるだけ少なくするために」という一文も手がかりです。チョッパで昇圧できるなら、セルを何百枚も直列にする必要がない——設備が小さくて済みます。
(ウ)電流位相は電圧と同相
系統に電力を送るとき、電流の位相を電圧と同相にすれば力率1になります。同じ電力を送るのに電流が最小で済む——だからインバータを小形にできます。
力率が1なら電流が最小
無効電流を流さない
同じ電力に1.25倍の電流が要る
問題文が「インバータの小形化を図っている」と書いているのは、電流が小さければデバイスも小さくて済むから。90°位相進みでは有効電力が送れないので、そもそも成り立ちません。
(エ)電圧源どうしを結ぶにはインダクタンスが必要
インバータも系統も電圧源です。電圧源どうしを直接つなぐと、わずかな電圧差で大電流が流れます——間に何かを挟まなければなりません。
| 挟むもの | 結果 |
| 何も挟まない | 電圧差でショートしたのと同じ。制御不能 |
| キャパシタンス | 電圧源と並列なので意味がない(電圧を保つ素子どうし) |
| ★インダクタンス | 電流を制御できる。電圧差を電流に変換する |
リアクトルを挟めば、両端の電圧差によって電流が決まります。インバータの出力電圧の位相と大きさを調整すれば、流れる電流を自在に制御できる——だから連系リアクトルが必須なのです。
これは同期発電機を系統に並列するときと同じ構図です。同期リアクタンスが電圧源どうしを結んでいる——電圧源を並列にするには必ずリアクタンスが要るという共通の原理があります。

⏱️ 本番での進め方
①「上に凸で最大点がある」=縦軸は電力。ここで3肢が落ちる。
② 太陽電池は電圧が低い → 昇圧チョッパ。
③ 系統へ有効電力を送るなら電流は電圧と同相(力率1)。
④ 電圧源どうしを結ぶにはインダクタンスが必須。
💡 覚え方
「P-V曲線の山が最大電力点、そこを狙うのがMPPT」——そして「電圧源どうしはリアクトルで結ぶ」。同期機の並行運転と同じ理屈だと気づけば納得しやすくなります。

連系リアクトルで電流をどう制御するのか
(エ)で確認したとおり、電圧源どうしはリアクトルを介して結びます。ではそのリアクトルを通る電流は、何によって決まるのでしょうか。
インバータ側の電圧の大きさと位相を変えれば、電流のベクトルを自在に動かせます——だから有効電力も無効電力も制御できるのです。
| インバータ電圧の操作 | 結果 |
| 系統より位相を進める | 有効電力を系統へ送り出す |
| 系統より位相を遅らせる | 有効電力を系統から受け取る |
| 大きさを系統より大きくする | 進み無効電力を送り出す(コンデンサのように働く) |
| 大きさを系統より小さくする | 遅れ無効電力を送り出す(リアクトルのように働く) |
これは同期発電機を系統に並列したときとまったく同じ構図です。同期リアクタンスが電圧源どうしを結び、負荷角δと励磁で有効・無効電力が決まる——インバータでは、それを電子的に一瞬で操作できるという違いだけです。
本問の(ウ)で「電流位相は電圧位相に対してほぼ同相」とされているのは、無効電力を出さず有効電力だけを送る運転を意味します。太陽光発電の目的は電力を送ることですから、これが基本の運転になります。
ただし近年は、系統の電圧が上がりすぎたときにパワコンが遅れ無効電力を出して電圧を下げる制御(進相運転)も行われます。太陽光が大量に導入されると電圧上昇が問題になる——インバータの制御能力が系統の安定化にも使われているのです。
まとめ
| (ア) | 電力 |
| (イ) | 昇圧チョッパ |
| (ウ) | 同相 |
| (エ) | インダクタンス |
| 答え | (1) |
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