今回は平成19年度 機械科目 A問題10を解説します。パワエレ第4サブバッチ以降で扱ってきた直流チョッパ・インバータ・太陽光発電に続く、無停電電源装置(UPS)の回路構成と用途に関する空欄補充問題です。パワエレ問題としては今回でチャプター最終問題(本書問52)になります。
常時は交流入力を整流器で直流に変換し、インバータにより交流に変換して負荷に供給します。同時に充電器で二次電池を充電し、停電時にはDCスイッチで電池からインバータへ切り替えて定電圧・定周波数の電力を供給し続けます。主にコンピュータシステムや放送・通信用機器などの電源に用いられます。
平成19年度 機械科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題10
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成19年度 A問題10
図は無停電電源装置の回路構成の一例を示す。常時は,交流電源から整流回路を通して得た直流電力を(ア)と呼ばれる回路Bで交流に変換して負荷に供給するが,交流電源が停電あるいは電圧低下した場合には,(イ)の回路Dから半導体スイッチ及び回路Bを介して交流電力を供給する方式である。主にコンピュータシステムや(ウ)などの電源に用いられる。
運転状態によって直流電圧が変動するので,回路BはPWM制御などの電圧制御機能を利用して,出力に(エ)の交流を得ることが一般的である。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) インバータ 二次電池 放送・通信用機器 定電圧・定周波数 (2) DC/DCコンバータ 一次電池 家庭用空調機器 定電圧・定周波数 (3) DC/DCコンバータ 二次電池 放送・通信用機器 可変電圧・可変周波数 (4) インバータ 二次電池 家庭用空調機器 定電圧・定周波数 (5) インバータ 一次電池 放送・通信用機器 可変電圧・可変周波数

出題のポイント:UPSは整流器+電池+インバータ
無停電電源装置(UPS)の基本構成は3つです。交流を直流にする整流器、エネルギーを蓄える蓄電池、直流を交流に戻すインバータ——この流れを押さえれば空欄は埋まります。
| 部分 | 機器 | 役割 |
| 入口 | 整流回路(コンバータ) | 商用交流を直流に変換する |
| 中間 | 蓄電池(二次電池) | 停電時に備えてエネルギーを蓄える |
| 出口 | インバータ(回路B) | 直流を交流に変換して負荷へ供給する |
常時は「交流 → 整流器 → 直流 → インバータ → 交流」という流れです。わざわざ直流を経由するのは、その途中に蓄電池をつないでおけるから——停電した瞬間に電池から供給を切り替えられます。
(ア)は直流を交流に変換する回路なのでインバータ——DC/DCコンバータは直流から直流で、交流は作れません。


(イ)二次電池でなければならない理由
一次電池は使い切りで充電できません。UPSは常時充電しておき、停電時だけ放電する——だから充放電を繰り返せる二次電池でなければなりません。
| 一次電池 | 二次電池 | |
| 充電 | できない | できる |
| 例 | マンガン乾電池、アルカリ乾電池 | 鉛蓄電池、リチウムイオン電池 |
| UPSでの使用 | 不可 | これを使う |
UPSでは長く鉛蓄電池が使われてきました。安価で大容量、しかも大電流を短時間流せる——停電時の数分〜数十分をしのぐという用途に合っているからです。
近年はリチウムイオン電池も使われます。小型軽量で寿命も長い——設置スペースが限られるデータセンターなどで採用されています。
(ウ)(エ)用途と出力の性質
UPSが使われるのは、一瞬でも電源が切れては困る機器です。コンピュータシステムはもちろん、放送設備や通信設備——止まれば社会的な影響が大きい設備が対象になります。
「家庭用空調機器」は当てはまりません。停電しても数分後に復旧すれば済む機器にUPSを付ける意味はなく、そもそも消費電力が大きすぎて電池では支えきれません。
(エ)は定電圧・定周波数(CVCF)です。UPSの目的は「商用電源と同じ品質の電気を切れ目なく供給すること」——電圧も周波数も一定でなければ、つないでいる機器が動きません。
| 用途 | 求められる出力 | 装置の呼び名 |
| UPS(無停電電源) | 定電圧・定周波数 | CVCF装置 |
| 電動機の可変速駆動 | 可変電圧・可変周波数 | VVVF装置(インバータ) |
同じインバータでも、目的によって求めるものが正反対です。UPSは「変わらないこと」が価値、電動機駆動は「変えられること」が価値——CVCF と VVVF は、その違いを表す略語になります。
問題文が「運転状態によって直流電圧が変動するので」と述べているのは、電池の電圧が放電とともに下がるからです。入力の直流が変動しても出力は一定に保つ——そのためにPWM制御で電圧を調整します。


UPSには3つの方式がある
| 方式 | 常時の電力の流れ | 切り替え時間 | 特徴 |
| 常時商用給電方式 | 商用電源をそのまま負荷へ | 数ミリ秒(切り替えあり) | 安価・高効率だが瞬断がある |
| 常時インバータ給電方式(本問) | 整流器 → インバータ → 負荷 | 0(無瞬断) | 電圧・周波数が安定。効率はやや低い |
| ラインインタラクティブ方式 | 商用給電しつつ電圧補正 | 短い | 両者の中間 |
本問の構成は常時インバータ給電方式です。常にインバータを通しているので、停電しても切り替えが不要——電池からの供給に移るだけで、負荷から見れば何も変わりません。
その代わり、常時インバータを動かしているので損失が出ます。効率は90 %台前半——常時商用給電方式(98 %程度)に比べると劣ります。無瞬断という価値と引き換えだと言えます。
⏱️ 本番での進め方
① UPSは「整流器 → 電池 → インバータ」。直流を経由するのは電池をつなぐため。
② 充電できるのは二次電池。一次電池は使えない。
③ 用途は止まると困る機器。家庭用空調は対象外。
④ UPSはCVCF(定電圧・定周波数)。VVVFは電動機駆動用。
💡 覚え方
「UPSはCVCF、電動機はVVVF」——同じインバータでも求めるものが正反対です。そして「直流を経由するのは電池をつなぐため」——構成の理由が分かれば、空欄は自然に埋まります。


UPSの容量と保持時間
UPSを選ぶときに問題になるのが、容量と保持時間です。どちらも蓄電池の大きさで決まる——用途に応じた設計が必要になります。
| 用途 | 求められる保持時間 | ねらい |
| 一般のサーバ | 5〜10分 | 安全にシャットダウンする時間を稼ぐ |
| データセンター | 10〜15分 | 非常用発電機が立ち上がるまでをつなぐ |
| 放送・通信設備 | 30分〜数時間 | サービスを止めない |
データセンターのUPSは「発電機が立ち上がるまでのつなぎ」という役割が中心です。非常用ディーゼル発電機は起動に十数秒かかる——その間をUPSが埋めるのです。
長時間の停電に備えるなら発電機、瞬間の切れ目を埋めるならUPS——役割分担がはっきりしています。両者を組み合わせるのが、重要施設の標準的な構成です。
近年はフライホイール式のUPSも使われます。回転体の運動エネルギーで数秒〜十数秒をしのぐ——電池のような劣化がなく、保守が軽いのが利点です。発電機が立ち上がるまでのつなぎなら、数秒あれば足りる——用途を絞ることで別の解が成り立つ好例だと言えます。
まとめ
| (ア) | インバータ |
| (イ) | 二次電池 |
| (ウ) | 放送・通信用機器 |
| (エ) | 定電圧・定周波数 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
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