今回は平成26年度 機械科目 A問題10を解説します。★パワエレ28(令和6年度上期A問題10)と同じ回路・同じテーマの再出題で、選択肢の並び順が異なります。RL負荷の単相半波ダイオード整流回路で、環流ダイオードの有無による波形の違いを問う空欄補充問題です。
スイッチS開放時(環流ダイオードなし):リアクトルLのためidはvsより位相遅れの波形5、edはidが0になるまで負電圧が現れる波形1。スイッチS閉時(環流ダイオードあり):vs<0の瞬間に環流ダイオードが導通しed≒0となる波形2、電流が流れる期間はSを開いたときより長くなります。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和6年度上期A問題10 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成26年度 機械科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題10
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成26年度 A問題10
次の文章は,単相半波ダイオード整流回路に関する記述である。
抵抗とリアクトルとを直列接続した負荷に電力を供給する単相半波ダイオード整流回路を図1に示す。スイッチSを開いて運転したときに,負荷力率に応じて負荷電圧edの波形は図2の(ア)となり,負荷電流idの波形は図2の(イ)となった。次にスイッチSを閉じ,環流ダイオードを接続して運転したときには,負荷電圧edの波形は図2の(ウ)となり,負荷電流の流れる期間は,スイッチSを開いて運転したときよりも(エ)。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 波形2 波形4 波形3 長くなる (2) 波形1 波形5 波形2 長くなる (3) 波形1 波形5 波形3 短くなる (4) 波形1 波形4 波形2 長くなる (5) 波形2 波形3 波形3 短くなる


出題のポイント:環流ダイオードの有無で波形が変わる
R-L負荷の半波整流では、リアクトルのせいで電流が電圧より遅れます。電圧が負になっても電流が流れ続けるため、負荷電圧に負の期間が現れる——これが環流ダイオードのない場合の特徴です。
| S開放(環流ダイオードなし) | S閉(環流ダイオードあり) | |
| 負荷電圧 ed | 負の期間が現れる | ほぼ0(負にならない) |
| 電流の経路(電圧が負のとき) | 電源を通って流れ続ける | 環流ダイオードを通って閉ループを回る |
| 電流が流れる期間 | 短い | ★長くなる |
| 平均出力電圧 | 低い(負の分が差し引かれる) | 高い |
環流ダイオードがなければ、リアクトルの電流は電源を通って流れるしかありません。電源電圧が負でも電流が流れるので、負荷電圧に負の期間が現れます——その分だけ平均電圧が下がることになります。
環流ダイオードを付けると、電圧が負になった瞬間にそちらへ電流が移ります。負荷は電源から切り離され、リアクトル→負荷→ダイオードの閉ループ——だから負荷電圧はほぼ0で、負にはなりません。



なぜ電流の流れる期間が長くなるのか
直感的には「電源から切り離されたら電流が早く止まりそう」に思えます。ところが逆で、環流ダイオードがあるほうが電流は長く流れます——電流を減らす力が弱いからです。
| 環流ダイオードなし | 環流ダイオードあり | |
| 電圧が負のとき負荷にかかる電圧 | 負の電源電圧(大きな逆電圧) | ほぼ0 |
| 電流を減らす力 | 強い(逆電圧が押し戻す) | 弱い(抵抗で消費されるだけ) |
| 電流が0になるまで | 早い | 遅い |
負の電源電圧がかかっていれば、電流は急速に押し戻されます——だから早く0になる。環流ダイオードがあれば、負荷にかかるのはほぼ0 Vですから、電流は抵抗で消費されながらゆっくり減っていくだけです。
リアクトルが大きければ、次の半サイクルまで電流が続くこともあります——そうなれば電流連続モード。環流ダイオードは、電流を連続させる働きも持っているのです。

環流ダイオードの3つの効き目
| 効果 | 内容 |
| 平均出力電圧が上がる | 負の電圧期間がなくなるので、差し引かれる分が消える |
| 電流が連続しやすくなる | 電流を減らす力が弱まり、次の半サイクルまで続きやすい |
| 電源側の力率が改善する | 電源から見た電流の遅れが小さくなる |
1個のダイオードを追加するだけで、これだけの効果があります。だからR-L負荷の整流回路には、ほぼ必ず環流ダイオードが付いている——コストに対する効果が非常に大きいのです。
フリーホイールダイオード、あるいはコミュテーションダイオードとも呼ばれます。「自由に回る(フリーホイール)」という名前が、電流が閉ループを回り続ける様子を表しています。
⏱️ 本番での進め方
① R-L負荷では電流が遅れ、電圧が負でも流れ続ける。
② 環流ダイオードがなければ ed に負の期間が現れる。
③ あれば ed≒0 になり、電流の流れる期間は長くなる。
④「切り離すのに長く流れる」のは、減らす力が弱まるから。
💡 覚え方
「環流ダイオードは負の電圧を消し、電流を長引かせる」——負荷から見れば0 V の閉ループができるから。結果として平均電圧が上がり、電流も連続しやすくなります。
出題履歴:令和6年度上期にも同じ問題(答えの番号は違う)
まったく同じ回路・同じテーマの問題が、令和6年度上期 A問題10でも出題されています(パワエレ28:単相半波ダイオード整流回路(環流ダイオード))。ただし選択肢の並び順が違うため、正解の番号は (2) と (3) で異なります。
入る波形の内容は同じですが、それが何番に置かれているかは年度しだい——「答えは(3)」と番号で覚えていると、本問で外します。覚えるべきは「負電圧が出るか出ないか」「期間が長くなるか」という内容です。

平均出力電圧はどれだけ変わるのか
環流ダイオードを付けると平均出力電圧が上がります。どれくらい違うのかを、式で確かめておきましょう。
| 条件 | 平均出力電圧 | 備考 |
| 純抵抗負荷(半波) | \( 0.45V \) | 基準。負の期間がない |
| R-L負荷・環流ダイオードあり | \( 0.45V \) | 負の期間が0になるので抵抗負荷と同じ |
| R-L負荷・環流ダイオードなし | \( 0.45V \) より小さい | 負の面積が差し引かれる |
環流ダイオードを付ければ、R-L負荷でも純抵抗負荷と同じ平均電圧が得られます——負の期間が消えるからです。リアクトルが入っているせいで下がっていた電圧が、元に戻ることになります。
どれだけ下がっていたかは、リアクトルの大きさ(力率角)しだいです。誘導性が強いほど電流の遅れが大きく、負の期間も長い——その分だけ平均電圧が下がります。
だから誘導性負荷の整流回路では、環流ダイオードがほぼ必須です。ダイオード1個で平均電圧が回復し、電流も連続しやすくなり、力率も改善する——これほど費用対効果の高い部品も珍しいと言えます。
チョッパ回路の還流ダイオードと役割は同じです。リアクトルの電流に逃げ道を用意する——回路が違っても、リアクトルがあるところには必ず還流路が要るという原則は共通しています。
まとめ
| (ア) | 波形1 |
| (イ) | 波形5 |
| (ウ) | 波形2 |
| (エ) | 長くなる |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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