今回は平成22年度 機械科目 A問題10を解説します。降圧チョッパで、IGBT(Q)がT/2ずつオンオフしているときの負荷電流iRの波形が与えられたとき、ダイオードDに流れる電流iDの波形を選ぶ問題です。
QがONの間は電源ESから負荷に電力供給されiRは増加、DにはESで逆電圧が加わりiD=0です。QがOFFの間はLに蓄えたエネルギーがR→D→Lの経路で放出されiD=iRとなり、次第に減少していく鋸歯状波形になります。
平成22年度 機械科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題10
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成22年度 A問題10
図1は,降圧チョッパの基本回路である。オンオフ制御バルブデバイスQは,IGBTを用いており,T/2〔s〕の期間はオン,残りのT/2〔s〕の期間はオフで,周期T〔s〕でスイッチングし,負荷抵抗Rには図2に示す波形の電流iR〔A〕が流れているものとする。
このとき,ダイオードDに流れる電流iD〔A〕の波形に最も近い波形は,図2の(1)から(5)のうちのどれか。
電流iDの波形候補(1)〜(5)は、下の問題図(図2)を参照してください。


出題のポイント:Qがオフの間だけダイオードが働く
降圧チョッパでは、スイッチQとダイオードDが交互に電流を受け持ちます。両方が同時に導通することはありません——だからiDの波形は「Qがオフの期間だけ現れる」ことになります。
| 期間 | スイッチQ | ダイオードD | 電流の経路 | iD |
| 前半 T/2(Qオン) | 導通 | 逆電圧がかかり非導通 | 電源 → Q → L → R | 0 |
| 後半 T/2(Qオフ) | 遮断 | 導通(還流) | L → R → D → L の閉回路 | iR と同じ(減少していく) |
Qがオンの間、ダイオードのアノード側には電源電圧が加わり、逆電圧の状態になります。だから導通できず、iD=0——電流はすべてQを通ります。
Qをオフにすると、リアクトルの電流が行き場を失います。リアクトルの電流は急に変えられないので、電流を流し続けようとしてダイオードに順電圧をかけ、導通させる——これが還流(フリーホイール)です。



還流中に電流が減っていく理由
Qオフの期間、電流はL→R→D→Lという閉回路を回ります。この回路には電源がありません——リアクトルに蓄えられたエネルギーだけで電流が流れている状態です。
抵抗Rでエネルギーが消費されるので、電流はしだいに減っていきます。減り方は時定数 L/R で決まる指数関数——ただし周期が十分短ければ、ほぼ直線的に減少して見えます。
逆にQオンの期間は、電源から電流が供給されて増加します。増えて減ってを繰り返すので、iR は鋸歯状の波形になる——これが問題の図2に示された負荷電流の波形です。

波形問題の絞り込み方
波形を選ぶ問題では、判定しやすい条件から順に当てはめるのが定石です。
| 確認する順 | 見るところ | 正しい姿 |
| ① | 電流が0になる期間があるか | 前半T/2 が0 |
| ② | 0でない期間は増加か減少か | 減少(還流でエネルギーが消費される) |
| ③ | 電流の大きさは iR と一致するか | 一致する(同じ電流が流れている) |
☝️ ひっかけの作り方:QオンとQオフを取り違えるのが最頻の誤りです。「ダイオードが働くのはスイッチが休んでいる間」——2つが交代で仕事をしていると考えれば、向きを間違えません。
また「増加する波形」を選んでしまう誤りもあります。還流中は電源から供給がないのですから、電流が増えることはありません——必ず減少です。
⏱️ 本番での進め方
① QオンならDは非導通(iD=0)、QオフならDが還流。
② 還流中は電源がないので電流は必ず減少する。
③ iD は iR の「後半だけを切り出した」形になる。
④ 0の期間があるか、増加か減少か、の2点で選択肢が絞れる。
💡 覚え方
「スイッチとダイオードは交代制」——どちらか一方だけが導通する。そして「還流中は必ず減少」——この2つで波形が決まります。

電流の分担を数字で確かめる
本問は通流率0.5(T/2 ずつ)です。ということは、負荷電流をスイッチQとダイオードDが半分ずつ受け持っている——平均値で見れば、それぞれ iR の平均の半分になります。
| 素子 | 導通する期間 | 平均電流 | 通流率 d の一般形 |
| スイッチQ | 前半 T/2 | 負荷電流平均の 1/2 | \( d\,I_R \) |
| ダイオードD | 後半 T/2 | 負荷電流平均の 1/2 | \( (1-d)I_R \) |
| 負荷R | 常時 | iR の平均そのもの | \( I_R \) |
QとDの平均電流を足すと、必ず負荷電流の平均になります——負荷には途切れなく電流が流れており、その供給元が交代しているだけだからです。
通流率が0.9 なら、Qが9割・Dが1割を受け持ちます。逆に0.1 ならQが1割・Dが9割——この分担は素子の選定(電流定格)に直結します。
なぜ電源電流と負荷電流は違うのか
降圧チョッパでは、電源から流れる電流と負荷に流れる電流が違います。電源はQがオンの間しか電流を出していない——だから電源電流の平均は、負荷電流の平均の d 倍になります。
Qがオンの間だけ流れる
損失を無視すれば入力=出力
降圧チョッパの公式が導ける
電力が保存されることから、降圧チョッパの公式 Vd=dE が導けます——公式を丸暗記しなくても、電流の分担から組み立て直せるのです。
「電圧は d 倍に下がり、電流は 1/d 倍に増える」——チョッパは直流版の変圧器のようなものだと考えると、電圧と電流の関係が腑に落ちます。
昇圧チョッパではダイオードの役割が入れ替わる
降圧チョッパではQオン中にダイオードが休み、Qオフ中に働きました。昇圧チョッパでは、この関係が逆になります——回路の形が違うので、当然と言えば当然です。
| 降圧チョッパ(本問) | 昇圧チョッパ | |
| スイッチQの位置 | 電源と直列 | リアクトルの後ろで並列(負荷と並列) |
| Qオン中 | 電源→Q→L→負荷。Dは逆電圧で休む | 電源→L→Q の閉路でLにエネルギーを蓄える。Dは逆電圧で休む |
| Qオフ中 | L→負荷→D→L で還流。電流は減少 | 電源→L→D→負荷。Lの逆起電力が電源に上乗せされる |
| 負荷への電流 | 常時流れる(Lが直列) | Qオフ中だけ流れる(だからCが必須) |
どちらもQオン中はダイオードが休んでいる点は共通です。違うのは「Qオン中に負荷へ電流が流れるかどうか」——降圧では流れ、昇圧では流れません。
だから昇圧チョッパには平滑コンデンサが不可欠でした。Qオン中の負荷電流をコンデンサが肩代わりする——この一点が、回路図から昇圧か降圧かを見分ける決め手になります。
波形の問題では「その素子がいつ働くか」を回路から読み取るのが第一歩です。スイッチとダイオードは必ず交代で働く——この原則さえ押さえれば、どちらのチョッパでも波形が描けます。
まとめ
| Qオン中 | iD=0 |
| Qオフ中 | iD=iR(次第に減少) |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・直流チョッパ回路の基本構成図:【機械】令和4年度上期A問題10
・降圧チョッパの電流経路(令和6年度下期):【機械】令和6年度下期B問題16

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