今回は令和4年度下期 機械科目 A問題10を解説します。与えられた出力電圧波形vRを得ることができる電力変換回路を、半波整流・全波整流・双方向位相制御など5つの回路図から選ぶ問題です。
波形は位相角0〜αがカットされた正弦波が正負両方に現れる形なので、半波整流((1)(2))や全波整流((4)(5))ではなく、極性を逆にした2個のサイリスタ(トライアック相当)による双方向位相制御回路が該当します。
ほぼ同じ問題が 【機械】平成18年度A問題9 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和4年度下期 機械科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題10
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 令和4年度下期 A問題10
図に示す出力電圧波形vRを得ることができる電力変換回路として,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし,回路中の交流電源は正弦波交流電圧源とする。
回路候補(1)〜(5)は、下の問題図を参照してください。

出題のポイント:正負どちらにも波形が現れる
出力波形が正負の両方に現れている——これが本問の最大の手がかりです。整流回路なら出力は片側の極性だけですから、整流回路ではありません。
| 出力波形の特徴 | 該当する回路 |
| 正側だけに現れる | 整流回路(半波・全波とも) |
| 正負の両方に現れる | 交流電力調整装置(逆並列サイリスタ/トライアック) |
| 正負に現れ、位相の途中から立ち上がる | ★双方向の位相制御 |
さらに「各半サイクルの途中から立ち上がっている」——これは位相制御の特徴です。電源電圧が0を横切ってから制御角αだけ遅れて導通が始まるので、波形の頭が欠けた形になります。
「正負両方」+「頭が欠けている」——この2つを満たすのは、逆並列サイリスタ(またはトライアック)による双方向位相制御だけです。


なぜ2個のサイリスタが必要なのか
サイリスタは一方向にしか電流を流せません。交流の両方の半サイクルを制御するには、逆向きに2個並べる必要がある——これが逆並列接続です。
| 電源電圧 | 導通するサイリスタ | 出力 |
| \( v_s>0 \) | 正方向のサイリスタ(点弧角αで導通) | 正の波形(α〜π) |
| \( v_s<0 \) | 逆方向のサイリスタ(点弧角π+αで導通) | 負の波形(π+α〜2π) |
2個を1つのパッケージにまとめたのがトライアックです。双方向サイリスタとも呼ばれ、機能は逆並列サイリスタと同じ——部品点数が減り、扱いやすくなります。
抵抗負荷では、電流が0になった時点で自然にオフします。電圧が0を横切れば電流も0になるので、半サイクルごとに確実に消弧する——だから毎回点弧し直す必要があります。

交流電力調整装置の用途
この回路は交流電力調整装置と呼ばれ、身近なところで使われています。電圧の実効値を連続的に変えられるのが特徴です。
| 用途 | 制御するもの | なぜこの方式か |
| 白熱電球の調光器 | 明るさ | 安価で小型。周波数を変える必要がない |
| 電気ヒーターの温度調節 | 発熱量 | 同上 |
| 電動工具の速度調整 | 単相整流子電動機の速度 | 電圧を変えれば速度が変わる |
| 電動機のソフトスタート | 始動時の電圧 | 徐々に電圧を上げて突入電流を抑える |
いずれも「周波数は変えなくてよい、電圧だけ変えたい」用途です。インバータなら周波数も変えられますが、そのぶん高価で複雑——必要な機能だけを安く実現するのが交流電力調整装置だと言えます。
欠点は波形のひずみです。正弦波の頭を切り取っているのですから、高調波が大量に含まれます——力率も悪化します。
だから大容量の用途には向きません。照明や小型ヒーターのような、系統への影響が小さい範囲で使われる——用途が限られる理由も、波形から説明できます。
⏱️ 本番での進め方
①「正負両方に波形が現れる」なら整流回路ではない。
②「頭が欠けている」なら位相制御。
③ この2つを満たすのは逆並列サイリスタ(トライアック)だけ。
④ 整流回路の出力は必ず片側極性。ここで4肢が落ちる。
💡 覚え方
「正負に現れたら交流出力、頭が欠けたら位相制御」——2つの特徴で回路が決まります。サイリスタ2個で交流を扱う=トライアック相当——この対応を押さえておけば、回路図を細かく読まずに判定できます。

トライアックとサイリスタ2個は同じか
逆並列サイリスタとトライアックは、機能としてはほぼ同じです。ただし実際には使い分けがあります——容量と用途で選ばれます。
| トライアック | 逆並列サイリスタ | |
| 素子数 | 1個 | 2個 |
| ゲート回路 | 1系統で済む | 2系統必要(絶縁も要る) |
| 容量 | 小〜中容量(数十A程度まで) | 大容量まで対応 |
| 用途 | 家庭用調光器、小型ヒーター | 産業用の大容量調整 |
トライアックは部品点数が少なく安価ですが、大容量品が作りにくいという制約があります。逆並列サイリスタなら、大容量のサイリスタをそのまま使える——だから産業用ではこちらが主流です。
位相制御以外の制御方法
交流電力を調整する方法は、位相制御だけではありません。もう1つよく使われるのがゼロクロス制御(サイクル制御)です。
| 位相制御(本問) | ゼロクロス制御 | |
| 点弧のタイミング | 各半サイクルの途中(制御角α) | 電圧が0を横切る瞬間のみ |
| 調整方法 | 点弧を遅らせる量で連続的に | 通電するサイクル数の割合で |
| 高調波 | 多い(波形を切り刻む) | ほとんど出ない(正弦波のまま) |
| 応答 | 速い(半サイクル単位) | 遅い(数十サイクル単位) |
| 用途 | 照明の調光、電動機 | 電気炉・ヒーターの温度制御 |
ゼロクロス制御では、正弦波をそのまま通すか通さないかを切り替えます。波形を切り刻まないので高調波が出ない——系統に優しい方式です。
ただし細かい制御はできません。「10サイクル中7サイクル通電」のような粗い調整になるので、照明に使うとちらついてしまいます——熱容量が大きく応答の遅いヒーターだからこそ使える方式です。
本問の波形は明らかに位相制御——半サイクルの途中から立ち上がっているからです。ゼロクロス制御なら、通電するサイクルは完全な正弦波になります。
まとめ
| 波形の特徴 | 正負両方に現れ、位相0〜αがカット |
| 該当回路 | 双方向位相制御(逆並列サイリスタ) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・単相双方向サイリスタスイッチの運転判定:【機械】平成23年度A問題9
・出力電圧波形から電力変換回路を選ぶ(平成18年):【機械】平成18年度A問題9

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