今回は平成27年度 機械科目 A問題9を解説します。商用交流電圧を入出力する交流電力調整装置と、直流を交流に変換するインバータ(PWM制御)の出力電圧制御方式に関する空欄補充問題です。
交流電力調整装置は制御角を変えるサイリスタが一般的に使われます。インバータのスイッチング素子には電圧駆動形のIGBTが最近では一般的で、パルスの幅を変える制御がPWM制御です。
平成27年度 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成27年度 A問題9
次の文章は,電力変換器の出力電圧制御に関する記述である。
商用交流電圧を入力とし同じ周波数の交流電圧を出力とする電力変換器において,可変の交流電圧を得るには(ア)を変える方法が広く用いられていて,このときに使用するパワーデバイスは(イ)が一般的である。この電力変換器は(ウ)と呼ばれる。
一方,一定の直流電圧を入力とし交流電圧を出力とする電力変換器において,可変の交流電圧を得るにはパルス状の電圧にして制御する方法が広く用いられていて,このときにオンオフ制御デバイスを使用する。デバイスの種類としては,デバイスのゲート端子に電流ではなくて,電圧を与えて駆動する(エ)を使うことが最近では一般的である。この電力変換器はインバータと呼ばれ,基本波周波数で1サイクルの出力電圧が正又は負の多数のパルス列からなって,そのパルスの(オ)を変えて1サイクル全体で目的の電圧波形を得る制御がPWM制御である。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 制御角 サイリスタ 交流電力調整装置 IGBT 幅 (2) 制御角 ダイオード サイクロコンバータ IGBT 周波数 (3) 制御角 サイリスタ 交流電力調整装置 GTO 幅 (4) 転流重なり角 ダイオード 交流電力調整装置 IGBT 周波数 (5) 転流重なり角 サイリスタ サイクロコンバータ GTO 周波数
出題のポイント:交流→交流と直流→交流を分けて読む
本問は前半と後半で、まったく別の変換器を扱っています。前半は「交流を入力し、同じ周波数の交流を出力」、後半は「直流を入力し交流を出力」——混ぜずに順に読むことが大切です。
| 変換器の名前 | 入力 → 出力 | 主なデバイス | 制御方法 |
| 整流器(コンバータ) | 交流 → 直流 | ダイオード/サイリスタ | 位相制御(サイリスタの場合) |
| インバータ(逆変換器) | 直流 → 交流 | IGBT+逆並列ダイオード | PWM制御 |
| チョッパ | 直流 → 直流 | IGBT/MOSFET | 通流率(デューティ)制御 |
| 交流電力調整装置 | 交流 → 交流(同じ周波数) | 逆並列サイリスタ/トライアック | 位相制御 |
| サイクロコンバータ | 交流 → 交流(異なる周波数) | サイリスタ | 位相制御 |
前半の「同じ周波数の交流」がキーワードです。周波数が変わらないなら交流電力調整装置、変わるならサイクロコンバータ——(ウ)はこの一言で決まります。

(ア)(イ)(ウ)交流電力調整装置と位相制御
交流電圧の大きさを変えるには、サイリスタの点弧タイミングをずらします。電源電圧が正になってからどれだけ遅れて点弧するか——これが制御角(制御遅れ角)αです。
| 制御角 α | 導通する期間 | 出力電圧の実効値 |
| 0° | 半サイクル全部 | 電源電圧と同じ(最大) |
| 90° | 半サイクルの後半だけ | 約0.707倍 |
| 180° | なし | 0 |
点弧を遅らせるほど、電圧が加わる時間が短くなり、実効値が下がります——これが位相制御です。白熱電球の調光器や、電気ヒーターの温度調節に使われている身近な技術でもあります。
使うデバイスは(イ)サイリスタです。ダイオードでは点弧のタイミングを制御できません——「可変の交流電圧を得る」という目的には、オンを制御できるサイリスタが必要です。
☝️ ひっかけの作り方:(ア)に「転流重なり角」を入れる肢があります。転流重なり角は、交流側リアクタンスのせいで電流の切り替わりに時間がかかる現象——制御するものではなく、勝手に生じてしまうものです。電圧を「変える方法」としては使えません。
(エ)(オ)インバータとPWM制御
後半は直流から交流を作る話です。「ゲート端子に電流ではなく電圧を与えて駆動する」——これは電圧駆動デバイスの説明で、(エ)はIGBTです。
| デバイス | 駆動方法 | ゲート回路 |
| サイリスタ・GTO | 電流駆動 | 大きなゲート電流が要る(GTOは特に大きい) |
| IGBT・パワーMOSFET | 電圧駆動 | ゲート電流はほぼ流れず、駆動回路が簡単 |
電圧駆動のほうが駆動回路が簡単で消費電力も小さい——だからIGBTが主流になりました。GTOは電流駆動で、しかもオフさせるのに大きな逆ゲート電流が必要——駆動回路が大がかりになるのが欠点でした。
PWMは Pulse Width Modulation の略——Width=幅ですから、(オ)は「幅」です。「周波数」を変えるのは別の制御(PFM)で、PWMではありません。

2つの変換器を比べる
| 交流電力調整装置(前半) | インバータ(後半) | |
| 入力 → 出力 | 交流 → 交流(同一周波数) | 直流 → 交流 |
| デバイス | サイリスタ(オンのみ制御) | IGBT(オンオフ制御) |
| 制御方法 | 位相制御(制御角α) | PWM制御(パルス幅) |
| 周波数を変えられるか | 不可 | 可能 |
| 出力波形 | 正弦波の一部を切り取った形 | パルス列。フィルタで正弦波に近づける |
交流電力調整装置は構造が簡単で安価ですが、周波数を変えられず、波形もひずみます。インバータは高価で複雑ですが、周波数も電圧も自由に作れる——用途で使い分けられます。
電動機の速度制御には周波数を変える必要があるので、インバータが必須。ヒーターや照明の調光なら周波数は変えなくてよいので、安価な交流電力調整装置で足りる——そういう住み分けになっています。
⏱️ 本番での進め方
①「同じ周波数の交流→交流」なら交流電力調整装置。周波数が変わるならサイクロコンバータ。
② 位相制御にはサイリスタ。制御角αで実効値を変える。
③「ゲートに電圧を与えて駆動」=IGBT(電圧駆動)。
④ PWM の W は Width=幅。周波数ではない。
💡 覚え方
「交流の大きさだけ変えるなら位相制御、周波数まで変えるならPWM」——やりたいことでデバイスも制御方式も決まります。そして「サイリスタは電流駆動、IGBTは電圧駆動」——問題文の「電流ではなくて電圧を与えて駆動する」は、この区別を問うているのです。

サイクロコンバータという選択肢
(ウ)の誤答肢に出てくるサイクロコンバータも、交流を交流に変換する装置です。ただし交流電力調整装置とは、できることが決定的に違います。
| 交流電力調整装置 | サイクロコンバータ | |
| 出力周波数 | 入力と同じ | 入力より低い周波数に変換できる |
| 変換の段数 | 1段(直接) | 1段(直接) |
| デバイス数 | 少ない(2個〜) | 多い(三相なら36個など) |
| 用途 | ヒーター・照明の調整 | 大容量低速電動機の駆動(圧延機・セメントミルなど) |
サイクロコンバータは、入力の交流波形を切り貼りして低い周波数の波形を作ります。直流を経由しない(直接変換)のが特徴で、インバータのように直流リンクを持ちません。
ただし出力できるのは入力周波数の1/3程度までです。元の波形を切り貼りしているので、あまり高い周波数は作れない——低速の大容量電動機に用途が限られる理由がここにあります。
近年は大容量のIGBTやIEGTが実用化され、インバータで代替できるようになりました。サイクロコンバータの出番は減っていますが、電験では「交流→交流の直接変換」の代表例として今も問われます。
本問の(ウ)を判断するには「周波数が変わるかどうか」だけを見ればよい——問題文が「同じ周波数の交流電圧を出力とする」と明記しているので、サイクロコンバータではありません。
まとめ
| (ア) | 制御角 |
| (イ) | サイリスタ |
| (ウ) | 交流電力調整装置 |
| (エ) | IGBT |
| (オ) | 幅 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・単相インバータの構成と電圧制御方式:【機械】平成30年度A問題11
・出力電圧波形から電力変換回路を選ぶ(令和4年下期):【機械】令和4年度下期A問題10

コメント