今回は令和3年度 機械科目 A問題11を解説します。スイッチQ・ダイオードD・リアクトルL・コンデンサCで構成された昇降圧チョッパの、通流率γによる定常動作に関する記述の誤りを見つける問題です。
昇降圧チョッパの出力電圧平均値は V0=γ/(1−γ)・E で表せます。γ<0.5のときはV0<E(降圧)、γ>0.5のときはV0>E(昇圧)となるので、問題文の「0.5より小さいときは昇圧、大きいときは降圧」は大小が逆で誤りです。
令和3年度 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 令和3年度 A問題11
図は昇降圧チョッパを示している。スイッチQ,ダイオードD,リアクトルL,コンデンサCを用いて,図のような向きに定めた負荷抵抗Rの電圧v0を制御するためのものである。これらの回路で,直流電源Eの電圧は一定とする。また,回路の時定数は,スイッチQの動作周期に対して十分に大きいものとする。回路のスイッチQの通流率をγとした場合,回路の定常状態での動作に関する記述として,誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)Qがオンのときは,電源Eからのエネルギーが Lに蓄えられる。
(2)Qがオフのときは,Lに蓄えられたエネルギーが負荷抵抗Rとコンデンサ Cに Dを通して放出される。
(3)出力電圧v0の平均値は,γが0.5より小さいときは昇圧チョッパ,0.5より大きいときは降圧チョッパとして動作する。
(4)出力電圧v0の平均値は,図のv0の向きを考慮すると正になる。
(5)Lの電圧vLの平均電圧は,Qのスイッチング一周期で0となる。

出題のポイント:昇降圧チョッパの境目はγ=0.5
(3)の記述が逆です。昇降圧チョッパでは γ<0.5 で降圧、γ>0.5 で昇圧——問題文はこれを入れ替えています。
| 通流率 γ | γ/(1−γ) | 出力電圧 | 動作 |
| 0.2 | 0.25 | 0.25E | 降圧 |
| 0.5 | 1.0 | E | 境目 |
| 0.8 | 4.0 | 4E | 昇圧 |
「オンしている時間が長いほど出力が高くなる」——直感どおりの関係です。γが大きい=Lにエネルギーを蓄える時間が長い=出力が高いと考えれば、向きを取り違えません。
| チョッパ | 出力電圧 | γ=0.5 のとき | 出力の極性 |
| 降圧 | \( \gamma E \) | 0.5E(必ず入力以下) | 入力と同じ |
| 昇圧 | \( \dfrac{E}{1-\gamma} \) | 2E(必ず入力以上) | 入力と同じ |
| 昇降圧 | \( \dfrac{\gamma}{1-\gamma}E \) | ★E(ちょうど境目) | 入力と逆 |
3種類のチョッパを並べると、昇降圧だけが「境目を持つ」ことが分かります。降圧は必ず入力以下、昇圧は必ず入力以上——昇降圧だけが両方をまたげるのです。


正しい4つの記述を確認する
(1)(2) エネルギーの蓄積と放出
Qがオンのとき、リアクトルLは電源Eに直接つながります——電流が増えてエネルギーが蓄えられる。このとき負荷へは電流が流れません(ダイオードが逆電圧で遮断)。
Qがオフになると、リアクトルの電流が行き場を失います。ダイオードDを通って負荷RとコンデンサCへ流れる——蓄えたエネルギーを放出するわけです。
オン中に負荷へ電流が流れないので、コンデンサが必須になります。昇圧チョッパと同じ事情——「オン中に負荷が電源から切り離される回路にはコンデンサが要る」のです。
(4) 出力の極性
昇降圧チョッパの出力は、入力と逆の極性になります。リアクトルが放電するときの電流の向きが、充電時と逆だからです。
問題文が「図のような向きに定めた負荷抵抗Rの電圧v0」と断っているのは、あらかじめ逆向きに定義してあるという意味——だから「v0の向きを考慮すると正になる」で正しいのです。
(5) リアクトルの平均電圧は0
定常状態では、1周期でリアクトルの磁束が元に戻ります。磁束が戻る=電圧時間積の合計が0=平均電圧が0——ボルト秒バランスそのものです。
オン中はE、オフ中はV0 がかかる
昇降圧チョッパの公式が導ける
(5)の性質から(3)の式が導ける——2つの記述はつながっています。(5)が正しいなら(3)の式は γ/(1−γ) のはず——選択肢どうしの整合性からも(3)の誤りが見えてきます。

⏱️ 本番での進め方
① 昇降圧チョッパは V0=γ/(1−γ)·E。γ=0.5 で境目。
②「オン時間が長いほど出力が高い」で向きが決まる。
③ 出力の極性は入力と逆。図の向きの定義に注意。
④ (5)のボルト秒バランスから(3)の式が導ける。整合性を確認する。
💡 覚え方
「昇降圧はγ/(1−γ)、0.5が境目」——降圧のγと昇圧の1/(1−γ)を掛け合わせた形だと見れば覚えやすくなります。実際、降圧と昇圧を直列につないだのと同じ働きをします。

昇降圧チョッパはどこで使われるのか
出力が入力より高くも低くもできる——この性質が生きるのは、入力電圧が大きく変動する用途です。
| 用途 | 入力の変動 | 昇降圧が要る理由 |
| 電池駆動機器 | 満充電から放電終止まで大きく下がる | 初めは降圧、終わりは昇圧が必要 |
| 太陽光発電 | 日射と温度で電圧が変わる | 最大電力点を追いながら一定電圧を出す |
| 自動車の電源 | 始動時に大きく落ち込む | 電圧が落ちても機器への供給を保つ |
リチウムイオン電池は満充電で4.2 V、放電終止で3.0 V——3.3 V を作りたいなら、初めは降圧、終わりは昇圧が必要になります。降圧チョッパだけでも昇圧チョッパだけでも足りない——まさに昇降圧の出番です。
ただし本問の回路には弱点があります。出力の極性が入力と逆になることです——これでは入力と出力で共通の基準電位(グランド)が取れません。
極性が反転しない昇降圧回路
実用回路では、極性が反転しない方式が使われます。スイッチを2組使って、降圧チョッパと昇圧チョッパを直列につないだ構成——Hブリッジ昇降圧チョッパと呼ばれます。
| 入力と出力の関係 | 動作モード | 使う素子 |
| 入力 > 出力 | 降圧チョッパとして動く | 入力側のスイッチのみ制御 |
| 入力 < 出力 | 昇圧チョッパとして動く | 出力側のスイッチのみ制御 |
| 入力 ≒ 出力 | 両方を切り替えながら動く | 制御が最も難しい領域 |
素子は増えますが、極性が保たれ、効率も高くできます——本問の回路は原理を学ぶための基本形だと位置づけておくとよいでしょう。
もう一つの弱点は、入力電流が断続することです。スイッチがオフの間、電源から電流が流れません——電源側にも平滑用のコンデンサが必要になります。昇圧チョッパは入力電流が連続するので、この点では昇圧チョッパのほうが有利です。
まとめ
| V0の式 | γ/(1−γ)・E |
| γ<0.5 | 降圧 |
| γ>0.5 | 昇圧 |
| 誤りの記述 | (3)(大小が逆) |
| 答え | (3) |
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