今回は平成19年度 機械科目 B問題16を解説します。サイリスタ2個を逆並列接続した回路で、制御角の違いによる抵抗負荷の発熱量の比(a)と誘導性負荷での動作の記述(b)を問う問題です。
発熱量(消費電力)は VR2/R に比例するので、制御角90°と30°での VR2 の比を求めます。誘導性負荷では電流のターンオフ点がずれ、力率角が大きいほどターンオフ直後の印加電圧の絶対値は大きくなります。
平成19年度 機械科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題16
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成19年度 B問題16
図は,2個のサイリスタを逆並列に接続し,位相制御により負荷電力を制御する回路を示す。次の(a)及び(b)に答えよ。
(a)負荷が抵抗負荷であるとき,制御角 α が90〔°〕のときの発熱量は,30〔°〕のときの発熱量の何倍か。最も近い値は次のうちどれか。
ただし,負荷の抵抗値は一定とする。また,制御角 α〔rad〕のときの負荷電圧の実効値 VR は,電源電圧の実効値を E とすると,VR=E√(1−α/π+sin2α/2π) で与えられるものとする。
(1)0.515 (2)0.717 (3)0.866 (4)0.912 (5)0.986〔倍〕
(b)負荷が抵抗値 R〔Ω〕,インダクタンス L〔H〕との直列回路からなる誘導性負荷である場合の記述として,誤っているのは次のうちどれか。ただし,電源の角周波数を ω〔rad/s〕とし,負荷の基本波力率角を φ=tan−1(ωL/R) とする。
(1)定常運転時に α<φ としたとき,サイリスタにオン指令を与えてもサイリスタを毎サイクルターンオン制御できない。
(2)負荷が純インダクタンスとみなされる場合は,サイリスタ制御リアクトル方式無効電力補償装置(TCR)と呼ばれ,図の回路を一相分として,無効電力補償装置に使用される。
(3)電流の通流幅は,制御角αと基本波力率角φの関数になる。
(4)負荷の基本波力率角(遅れ)が大きくなるほどターンオフ直後のサイリスタに印加される電圧の絶対値は小さくなる。
(5)電流高調波成分は,第3次成分が最も大きい。

出題のポイント:発熱量は実効値の2乗に比例する
(a)は式が与えられているので、代入するだけの計算です。ただし「発熱量」が何に比例するか——ここを取り違えると答えが変わります。
与えられた式は VR=E√(1−α/π+sin2α/2π)。2乗すれば根号が外れるので、括弧の中身をそのまま比較すればよいことになります。
根号が外れる
sin180°=0
sin60°=0.866
—


⚠️ よくある間違い
「90°のときの発熱量は30°のときの何倍か」——分子と分母を逆にすると 1/0.515=1.94 になり、選択肢にありません。制御角を大きくすれば電力は減る=比は1より小さい——この見当をつけておけば向きを間違えません。
(3) 0.866 は sin60°、(2) 0.717 は √2/2 に近い値——途中の数字がそのまま誤答として置かれています。
(b) 誘導性負荷では何が変わるか
誤りは(4)です。「力率角が大きくなるほどターンオフ直後の電圧の絶対値は小さくなる」——実際は逆で、大きくなります。
純抵抗なら、電流は電源電圧が0になる ωt=π で0になります。そのときサイリスタにかかる電圧も0——穏やかにオフできるわけです。
誘導性負荷では、電流が0になるのが π を過ぎてから。そのとき電源電圧はすでに大きな負の値になっている——だからターンオフ直後に大きな逆電圧がかかるのです。
| 負荷 | 電流が0になる位相 | そのときの電源電圧 | ターンオフ直後の電圧 |
| 純抵抗(φ=0) | ωt=π | 0 | 小さい |
| 誘導性(φが大) | π より後 | 負で大きい | ★大きい |
これは素子にとって厳しい条件です。急峻な電圧上昇(dv/dt)が加わると、ゲート信号なしに誤点弧することがある——だからスナバ回路で電圧の立ち上がりを抑えるのが実務での対策になります。
(1)(2)(3)(5) が正しい理由
(1) α<φ では毎サイクル制御できない
正しい記述です。誘導性負荷では、前の半周期の電流がまだ流れているうちに次の点弧時期が来てしまう——そうなると制御が効きません。
制御できるのは α>φ の範囲だけ。力率が悪いほどφが大きく、制御できる範囲が狭くなる——純誘導(φ=90°)なら、90°より大きい制御角しか使えません。
(2) TCR(サイリスタ制御リアクトル)
正しい記述です。純インダクタンス負荷を位相制御すれば、流れる遅れ無効電流を連続的に調整できる——これがTCR(Thyristor Controlled Reactor)。
コンデンサと組み合わせれば、進みから遅れまで無効電力を自在に制御できます。SVC(静止形無効電力補償装置)の中核となる回路——電力科目でも登場する重要な装置です。
(3) 通流幅はαとφの関数
正しい記述です。いつ点弧するか(α)と、電流がどれだけ長く流れ続けるか(φで決まる)——両方が通流幅を決めます。純抵抗なら通流幅は π−α で単純ですが、誘導性負荷ではそう簡単にはいきません。
(5) 第3次高調波が最大
正しい記述です。位相制御で切り取られた電流波形は、正負対称なので偶数次を含みません——残るのは奇数次で、次数が上がるほど小さくなる。だから3次が最大になります。
3次高調波は三相回路では零相分として中性線に集まります——だからTCRはΔ結線にして、3次を回路内で還流させるのが定石。系統へ流出させない工夫がなされています。


⏱️ 本番での進め方
①(a) 発熱量は VR2/R。2乗すれば根号が外れて括弧の中身の比になる。
② α=90°で0.500、α=30°で0.971。比は0.515。1未満になるはず。
③(b) 誤りは(4)。誘導性が強いほどターンオフ直後の電圧は大きい。
④ α>φ でないと制御できない、TCR、3次高調波が最大——他は正しい。
💡 覚え方
「発熱は実効値の2乗」「誘導性が強いほど厳しい逆電圧」——2つの原則で(a)(b)とも解けます。TCRとSVCは電力科目でも問われるので、名前だけでも覚えておいてください。


交流電力調整装置の使いどころ
本問の回路——サイリスタ2個を逆並列にしたものは、交流電力調整装置(AC電力コントローラ)と呼ばれます。交流を交流のまま、大きさだけ変える装置です。
| 用途 | 負荷 | 制御するもの |
| 電気炉・ヒータ | 抵抗 | 温度 |
| 白熱灯の調光 | 抵抗 | 明るさ |
| 誘導電動機の始動 | 誘導性 | 始動電流(ソフトスタータ) |
| TCR(無効電力補償) | 純インダクタンス | 無効電力 |
周波数は変えられません——電源の波形を切り取っているだけだからです。周波数まで変えたければインバータが必要になります。
位相制御とゼロクロス制御
電気炉のような熱容量の大きい負荷では、別の方式も使われます。ゼロクロス制御(サイクル制御)——電圧が0の点でオンオフし、通電する周期の数で電力を調整する方式です。
| 位相制御 | ゼロクロス制御 | |
| 切るタイミング | 半周期の途中 | 電圧が0の点 |
| 高調波・ノイズ | ★多い | ほとんど出ない |
| 応答 | 速い | 遅い(周期単位) |
| 向く負荷 | 照明・電動機 | 電気炉など熱容量が大きいもの |
波形を途中で切らないので、高調波もノイズもほとんど出ません——ただし応答は周期単位なので遅い。温度のようにゆっくり変わる量なら、それで十分なのです。
まとめ
| P90 | 0.5E²/R |
| P30 | 0.971E²/R |
| 比 | ≒0.515倍 |
| (a) | (1) |
| (b)誤りの記述 | (4) |
| 答え | (a)-(1),(b)-(4) |
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