今回は平成22年度 理論科目 B問題18(選択問題)を解説します。演算増幅器(オペアンプ)について、(a)特徴に関する記述の誤り、(b)非反転増幅回路(図1)と反転増幅回路(図2)の出力電圧を求める問題です。
オペアンプは入力インピーダンスが大きく、出力インピーダンスが小さいのが特徴です。非反転増幅回路の増幅度は1+Rf/Ri、反転増幅回路は−Rf/Riで計算します。
平成22年度 理論科目 B問題18:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題18
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成22年度 B問題18
演算増幅器(オペアンプ)について、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 演算増幅器の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)反転増幅と非反転増幅の二つの入力端子と一つの出力端子がある。
(2)直流を増幅できる。
(3)入出力インピーダンスが大きい。
(4)入力端子間の電圧のみを増幅して出力する一種の差動増幅器である。
(5)増幅度が非常に大きい。(b) 図1及び図2の直流増幅回路のそれぞれの出力電圧Vo1[V]、Vo2[V]の値の組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、演算増幅器は理想的なものとし、Vi1=0.6[V]、Vi2=0.45[V]は入力電圧である。
Vo1[V] Vo2[V] (1) 6.6 3.0 (2) 6.6 −3.0 (3) −6.6 3.0 (4) −4.5 9.0 (5) 4.5 −9.0


解説①:(a) オペアンプの特徴を判定する

理想オペアンプは入力インピーダンスが非常に大きく、出力インピーダンスは非常に小さいため、(a)の誤りは(3)です。図1は非反転増幅でVo1=(1+100/10)×0.6=6.6 V。図2は反転増幅でVo2=−(200/30)×0.45=−3.0 Vとなり、(b)は選択肢(2)です。
解説②:図1の非反転増幅回路を導出する

| 選択肢 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | 反転・非反転の2入力と1出力 | ○ | 基本の端子構成 |
| (2) | 直流を増幅できる | ○ | 「演算」の名は直流演算に由来 |
| (3) | 入出力インピーダンスが大きい | × | ◎ 出力Zは小さい |
| (4) | 入力端子間の電圧のみを増幅する差動増幅器 | ○ | 同相成分は出力に出ない |
| (5) | 増幅度が非常に大きい | ○ | 開ループで10万倍以上 |
入力インピーダンスが大きいのは「前段から電流を取らない」ため、出力インピーダンスが小さいのは「次段へ十分な電流を供給できる」ためです。役割が逆なのだから、大小も逆になります。
(2)の「直流を増幅できる」も重要です。結合コンデンサを使わない直結増幅なので、周波数ゼロ(直流)から増幅できます——だから加算・減算・積分といった「演算」ができるのです。
解説③:図2の反転増幅と選択肢を照合する

「1+」を忘れない
マイナスを忘れない
\(200/30\) は割り切れませんが、\(0.45\) を先に掛けると \(200\times0.45=90\)、\(90/30=3\)——割り算を最後に回すと暗算できます。
誤答の正体:符号ひとつで全部決まる
| 選択肢 | \(V_{o1}\) | \(V_{o2}\) | どこを間違えたか |
| (1) | 6.6 | 3.0 | 反転のマイナスを忘れた(最頻誤答) |
| (2) | 6.6 | -3.0 | ◎ 正解 |
| (3) | -6.6 | 3.0 | 符号を両方とも逆にした |
| (4) | -4.5 | 9.0 | 回路を取り違えた |
| (5) | 4.5 | -9.0 | 非反転で「1+」を忘れた等 |
大きさは合っているのに符号で落とす——それが(1)です。「反転増幅器」という名前がマイナスを意味していると、名前から思い出してください。
⚠️ よくある間違い
非反転増幅の増幅度は絶対に1より小さくなりません(\(1+R_f/R_1\geqq1\))。反転増幅なら1未満も作れます——この非対称性を覚えておくと、公式を取り違えたときに気づけます。
深掘り①:2つの公式をイマジナリショートから導く
非反転増幅
入力は \(+\) 端子
入力端子に電流は流れない
「1+」が自然に出る
反転増幅
\(+\) 端子が接地
入ってきた電流はそのまま抜ける
マイナスが自然に出る
「1+」もマイナスも、覚えるものではなく導かれるものです。この2つの導出を一度自分の手で書いておけば、本番で迷いません。
深掘り②:入力インピーダンスの違いと使い分け
非反転増幅は、信号が直接 \(+\) 端子に入ります。そこはオペアンプの入力そのものなので、入力インピーダンスは数MΩ以上です。
反転増幅は、信号が \(R_1\) を通ってから仮想接地点に入ります。信号源から見ると \(R_1\) がそのまま入力インピーダンス——本問なら 30 kΩです。
「信号源から電流を取りたくない」ときは非反転、「複数の信号を足したい(加算回路)」なら反転——仮想接地点に電流を集められるからです。
💡 覚え方
非反転=入力Zが大きい・同相・1倍以上、反転=入力Zは \(R_1\)・逆相・1倍未満も可。3点セットで対比して覚えると、どちらを使うべきかも判断できます。
深掘り③:オペアンプ基本回路の一覧
| 回路 | 出力の式 | 特徴 |
| 反転増幅 | \(-\dfrac{R_f}{R_1}V_i\) | 入力Zは \(R_1\) |
| 非反転増幅 | \(\left(1+\dfrac{R_f}{R_1}\right)V_i\) | 入力Zが非常に大きい |
| ボルテージホロワ | \(V_i\) | インピーダンス変換専用 |
| 加算回路 | \(-R_f\left(\dfrac{V_1}{R_1}+\dfrac{V_2}{R_2}\right)\) | 複数入力を足す |
| 差動増幅 | \(\dfrac{R_f}{R_1}(V_2-V_1)\) | 差だけを増幅 |
| 積分回路 | \(-\dfrac{1}{CR}\displaystyle\int V_idt\) | \(R_f\) をコンデンサに置換 |
どれもイマジナリショートと「入力端子に電流は流れない」の2つから導けます。公式を丸暗記するより、この2つで組み立てるほうが応用が利きます。
⏱️ 本番での進め方
❶ (a)は「入力Z大・出力Z小」だけ覚えていれば即答——「入出力とも大」は必ず誤り。
❷ (b)は図1が非反転(\(+\) 端子に入力)、図2が反転(\(-\) 端子に入力)と確認。
❸ 非反転は「1+」、反転は「マイナス」——この2点で選択肢が1つに絞れる。
❹ 割り算は最後に:\(200\times0.45/30=3\)。
出題履歴:★令和6年度下期にほぼ同じ問題が出た
令和6年度下期B問題18は、本問とほぼ同じ問題です。(b)の回路と数値はまったく同一で、(a)の誤りの肢だけが「入出力インピーダンスが大きい」から「入力Zが小さくて出力Zが大きい」に差し替えられています。
そして正解の番号が違います——(b)の答え(6.6, -3.0)は本問では選択肢(2)、令和6年度下期では選択肢(1)。過去問を「番号」で覚えていると必ず外します。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
★同型問題:【理論】令和6年度下期 B問題18とほぼ同じ
この問題は 【理論】令和6年度下期 B問題18 と誤りの肢と選択肢番号だけ違うだけの、実質同じ問題です。解き方も答えの中身も変わりません。
| 項目 | 平成22年度 B問題18 | 令和6年度下期 B問題18 |
| (a)の誤りの肢 | (3)「入出力インピーダンスが大きい」 | (2)「入力Zが小さく出力Zが大きい」 |
| (b)の回路と数値 | 10 kΩ/100 kΩ・30 kΩ/200 kΩ | まったく同じ |
| (b)の入力電圧 | 0.6 V/0.45 V | 同じ |
| (b)の答えの値 | 6.6 V/\(-3.0\) V | 同じ |
| (b)の選択肢番号 | (2) | (1) ★ここが違う |
★注意すべきは「選択肢の番号が違う」ことです。過去問の答えを番号で暗記していると、そのまま外します——必ず本文の中身で判断してください。
▼あわせて解きたい同型問題:【理論】令和6年度下期 B問題18
まとめ
| (a)誤り | 出力インピーダンスは小さい→(3) |
| 図1 | 非反転増幅(1+Rf/Ri) |
| Vo1 | (1+100/10)×0.6=6.6V |
| 図2 | 反転増幅(−Rf/Ri) |
| Vo2 | −(200/30)×0.45=−3.0V→(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・トランジスタ小信号増幅回路のVceと遮断周波数(電子回路33):【理論】平成23年度 B問題18

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