今回は平成27年度 理論科目 A問題14を解説します。目盛が正弦波交流の実効値になるよう作られた整流形(全波整流形)電圧計で、方形波電圧を測定したときの指示値を求める問題です。(令和7年度下期 A問題14と同一の問題です。)
整流形電圧計は整流した波形の平均値に反応しますが、目盛は正弦波の実効値で校正されています。よって指示値=(測定波形の平均値)×(正弦波の波形率1.11)で求めます。実際の実効値ではない点がポイントです。
平成27年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成27年度 A問題14
目盛が正弦波交流に対する実効値になる整流形の電圧計(全波整流形)がある。この電圧計で図のような周期20msの繰り返し波形電圧を測定した。
このとき、電圧計の指示の値[V]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)4.00 (2)4.44 (3)4.62 (4)5.14 (5)5.66 V

出題のポイント:計器が「何を測っているか」と「何を表示するか」は別
整流形電圧計は、内部では【平均値】を測っています。ところが目盛りには【実効値】が書いてある——この二重構造が本問のすべてです。
目盛りは「正弦波を測ったときに実効値が読めるように」打たれています。そのために平均値を 1.11 倍した値を表示——だから正弦波以外では、真の実効値からずれます。

解説:平均値を出して 1.11 倍する
8 V が半分、0 V が半分
計器が勝手に掛けている
この波形は「0 V と 8 V が半分ずつ」なので、平均は素直に \(8/2=4\ \mathrm{V}\)。積分を計算する必要はありません——面積を時間で割るだけです。
誤答の正体:5つのうち3つが「もっともらしい値」
| 選択肢 | 値 | その正体 |
| (1) | 4.00 V | ★平均値そのもの(1.11 を掛け忘れた) |
| (2) | 4.44 V | ◎ 平均値 4.00 × 1.11 |
| (3) | 4.62 V | 三角波の波形率 1.155 を掛けた形 |
| (4) | 5.14 V | \(8\times2/\pi\) など中間の値 |
| (5) | 5.66 V | ★この波形の【真の実効値】 \(8/\sqrt2\) |
(1)と(5)が二大誤答です。(1)は「平均値を測る計器だから」で止まった形、(5)は「実効値を答える問題だ」と思い込んだ形——どちらも半分だけ正しいのが厄介です。
問われているのは「電圧計の指示」——計器が実際に表示する数字です。真の実効値ではありません。
⚠️ よくある間違い
「目盛が正弦波交流に対する実効値になる」という問題文が全てを語っています。=正弦波を測る前提で目盛りが打ってあるという意味です。測っているのは平均値、表示は実効値——この二重構造を押さえてください。
深掘り①:整流形計器の中身
整流形は「整流器+可動コイル形」の組合せです。可動コイル形は直流しか測れないので、交流を整流して直流にしてから測ります。
可動コイル形が指すのは平均値——整流したあとの波形の平均です。そこに正弦波の波形率 1.11 を掛けた目盛りを打てば、正弦波なら実効値が読めます。
| 整流の方式 | 整流後の平均値 | 掛ける係数 |
| 全波整流 | \(2V_m/\pi=0.637V_m\) | 1.11 |
| 半波整流 | \(V_m/\pi=0.318V_m\) | 2.22 |
半波整流なら平均値が半分になるので、掛ける係数は 2 倍の 2.22。本問は「全波整流形」と明記されているので 1.11 です。
長所は「感度が高く安価」。可動コイル形の高感度をそのまま活かせるので、アナログテスタの交流レンジはほぼこの方式です。
深掘り②:波形率という考え方
| 波形 | 最大値 | 実効値 | 平均値(全波整流) | 波形率 |
| 正弦波 | \(V_m\) | \(0.707V_m\) | \(0.637V_m\) | 1.11 |
| 方形波(本問) | \(8\ \mathrm{V}\) | \(5.66\ \mathrm{V}\) | \(4.00\ \mathrm{V}\) | 1.41 |
| 三角波 | \(V_m\) | \(0.577V_m\) | \(0.5V_m\) | 1.15 |
波形率=実効値÷平均値です。本問の波形は 1.41 なのに、計器は 1.11 だと思って掛けている——だから \(1.11/1.41=0.79\) 倍、つまり 21 %低く表示されます。
逆に言えば、指示値に \(1.41/1.11=1.27\) を掛ければ真の実効値になります。\(4.44\times1.27=5.64\fallingdotseq5.66\ \mathrm{V}\)——ちゃんと合います。
深掘り③:真の実効値を測るには
| 方式 | 測っているもの | ひずみ波での正確さ |
| 整流形 | 平均値×1.11 | 不正確(正弦波専用) |
| 可動鉄片形 | 電流の二乗の平均 | 正確 |
| 熱電形 | 発熱量(電流の二乗) | 正確(高周波にも強い) |
| ディジタル(True RMS) | 二乗和の平均の平方根を演算 | 正確 |
実効値の定義は「二乗平均平方根(RMS)」です。二乗に反応する物理現象を使えば、波形によらず正確に測れます——可動鉄片形や熱電形がそれです。
インバータの出力やパソコンの電源など、いまの電気機器はひずんだ波形だらけです。整流形のテスタで測ると数十 %も違うことがあります——実務では True RMS 対応が必須です。
💡 覚え方
整流形=「平均値を測って 1.11 倍して表示」。問われているのが「指示値」なら 1.11 を掛け、「真の実効値」なら二乗平均平方根——この読み分けだけで、この形式の問題はすべて解けます。
深掘り④:計器ごとに「何を指示するか」を整理する
| 種類 | 動作原理 | 使える電源 | 指示する値 | 主な用途 |
| 可動コイル形 | 永久磁石と電流の力 | 直流のみ | 平均値 | 直流電流計・電圧計 |
| 可動鉄片形 | 磁界による鉄片の吸引 | 交流・直流 | 実効値 | 交流電流計・電圧計 |
| 電流力計形 | 2つのコイルの電流の積 | 交流・直流 | 実効値 | 電力計 |
| 整流形 | 整流して可動コイル形へ | 交流 | 平均値×1.11 | 安価な交流計 |
| 誘導形 | 回転磁界による渦電流 | 交流のみ | 実効値 | 電力量計 |
| 静電形 | 電極間の静電力 | 交流・直流 | 実効値 | 高電圧計 |
指示する値の欄が「平均値」なのは、可動コイル形と整流形だけです。他は全部実効値——力が電流の二乗に比例する仕組みだからです。
整流形は「平均値を測るが実効値で表示する」という特殊な位置にいます。この一覧の中で唯一「測る値」と「表示する値」が違う計器——だから試験で狙われます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「整流形」と書いてあれば平均値×1.11。
❷ まず1周期の平均値を出す:面積÷時間。本問は \(80/20=4.00\ \mathrm{V}\)。
❸ 1.11 を掛けて 4.44 V。
❹ 真の実効値(5.66 V)と平均値(4.00 V)が両方選択肢にある——罠に注意。
★半波整流形なら係数は 2.22。
出題履歴:★令和7年度下期にそっくり再出題された
本問は令和7年度下期A問題14として、図も数値もそのまま再出題されています。ただし選択肢の並び順が完全に逆——本問では(2)、令和7年度下期では(4)が正解です。
過去問の答えを「番号」で覚えていると必ず外します。「平均値×1.11」という手順で覚えておけば、どちらの年度でも確実に取れます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
★同型問題:【理論】令和7年度下期 A問題14とまったく同じ問題
この問題は 【理論】令和7年度下期 A問題14 と、図も数値もそのまま同じです。解き方(平均値 4.00 V × 1.11 = 4.44 V)も変わりません。
★ただし選択肢の並びが完全に逆順になっており、正解の番号が違います。
| 選択肢 | 平成27年度 A問題14 | 令和7年度下期 A問題14 |
| (1) | 4.00 V | 5.66 V |
| (2) | 4.44 V ◎正解 | 5.14 V |
| (3) | 4.62 V | 4.62 V |
| (4) | 5.14 V | 4.44 V ◎正解 |
| (5) | 5.66 V | 4.00 V |
並びが逆なので、真ん中の(3) 4.62 V だけが同じ位置にあります。過去問の答えを「番号」で覚えていると、確実に外す作りです。
どちらの年度でも、選択肢には「平均値 4.00 V」と「真の実効値 5.66 V」の両方が置かれています。「整流形は平均値を測って 1.11 倍して表示する」——この手順さえ覚えておけば、番号がどう並んでも迷いません。
▼あわせて解きたい同型問題:【理論】令和7年度下期 A問題14
まとめ
| 整流形の指示 | 平均値×波形率1.11 |
| 平均値 | (8×10+0×10)/20=4V |
| 指示値 | 4×1.11=4.44V |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同型問題(電気及び電子計測1・令和7下期):【理論】令和7年度下期 A問題14

コメント