今回は令和5年度上期 理論科目 A問題14を解説します。二電力計法で三相電力を測定するとき、電力計W2が逆振れを起こしたので電圧端子の極性を反転して読み直した、というのが最大のポイントです。
二電力計法では三相電力P=W1+W2。ただし逆振れした電力計は本来マイナスを指しているので、極性を反転して読んだ値には負号を付けて合計します。
令和5年度上期 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 令和5年度上期 A問題14
図のように、線間電圧200Vの対称三相交流電源から三相平衡負荷に供給する電力を二電力計法で測定する。2台の電力計W1及びW2を正しく接続したところ、電力計W2の指針が逆振れを起こした。電力計W2の電圧端子の極性を反転して接続した後、2台の電力計の指示値は、電力計W1が490W、電力計W2が25Wであった。ただし、三相交流電源の相回転はa、b、cの順とし、電力計の電力損失は無視できるものとする。
対称三相交流電源が三相平衡負荷に供給する電力の値[W]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)25 (2)258 (3)465 (4)490 (5)515 W

出題のポイント:逆振れした電力計の指示は「マイナス」
二電力計法では、2台の指示値を足すだけで三相電力が求まります。ただし逆振れした電力計は、極性を反転して読んだ値を【負】として足します。
本問なら \(490+(-25)=465\ \mathrm{W}\)。そのまま足して 515 W とすると誤り——選択肢(5)にちゃんと用意されています。

解説:符号を付けて足すだけ
極性を反転して読んだ値
「逆振れ→極性を反転して測り直した」という手順は、負の値を読むための操作です。アナログ電力計は負の方向には振れないので、いったん逆につないで読み、あとで符号を付けます。
誤答の正体:符号を付けるか付けないか
| 選択肢 | 値 | どう計算すると出るか |
| (1) | 25 W | \(W_2\) だけを答えた |
| (2) | 258 W | \((490+25)/2\) など、平均を取った |
| (3) | 465 W | ◎ \(490-25\) |
| (4) | 490 W | \(W_1\) だけを答えた(\(W_2\) を無視) |
| (5) | 515 W | ★\(490+25\)——符号を付けずに足した |
(5)がいちばん多い誤りです。「二電力計法は足す」という知識だけで反射的に足すと、逆振れの意味を見落とします。
⚠️ よくある間違い
「逆振れ」という言葉を読み飛ばさないでください。逆振れ=その電力計の指示が負であるという合図です。問題文がわざわざ「極性を反転して接続した後」と書いているのは、負の値を読ませるためです。
深掘り①:なぜ2台で三相電力が測れるのか
三相3線式では、3線の電流の和がゼロ(\(i_a+i_b+i_c=0\))です。だから3つのうち1つは他の2つから決まります——独立な量は2つだけ。
3相の合計
3線式だから
線間電圧×線電流の形
結果として「線間電圧×線電流」の積が2つ——これがそのまま2台の電力計の指示になります。だから2台で足りるのです。
この導出は「平衡・不平衡を問わず成り立つ」のが強みです。負荷が平衡していなくても、二電力計法は正しい電力を示します。
深掘り②:どんなときに逆振れするのか
\(\theta\) は力率角
力率0.5以下で逆振れ
力率が 0.5 を下回ると、片方の電力計が逆に振れます。本問は \(490\) と \(-25\) なので、かなり力率が低い負荷だと分かります。
やはり 0.5 以下
計算しても力率 0.46——逆振れが起きて当然の値です。問題の数値には物理的な整合性があります。
深掘り③:三相電力の測定法を整理する
| 方法 | 電力計の台数 | 適用条件 | 備考 |
| 一電力計法 | 1台 | 平衡負荷のみ | 1相分を測って3倍 |
| 二電力計法 | 2台 | 3線式ならどんな負荷でも | もっとも実用的 |
| 三電力計法 | 3台 | 4線式(中性線あり) | 各相を個別に測る |
三相3線式なら二電力計法、三相4線式なら三電力計法——線の本数から1を引いた台数と覚えると分かりやすいでしょう。
これはブロンデルの定理と呼ばれます。「\(n\) 線式の電力は \(n-1\) 台の電力計で測れる」——電流の和がゼロという制約から独立な量が1つ減るからです。
💡 覚え方
二電力計法は「足すだけ」。ただし逆振れした計器は必ずマイナス。逆振れ=力率0.5以下——この3点セットで、この形式の問題はすべて解けます。
深掘り④:力率も同時に求められる
二電力計法の便利なところは、2つの指示値から力率まで分かることです。\(\tan\theta=\sqrt3(W_1-W_2)/(W_1+W_2)\) を使います。
| 2台の指示 | 力率 | 状態 |
| \(W_1=W_2\) | 1.0 | 純抵抗負荷 |
| \(W_2=0\) | 0.5 | 逆振れの境目 |
| \(W_2<0\) | 0.5未満 | 逆振れが起きる |
| \(W_1=-W_2\) | 0 | 純リアクタンス負荷 |
\(W_1=W_2\) なら力率1——2台の差が力率のずれを表しています。差が大きいほど力率が悪い、と直感的に読めます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「逆振れ」を見たら即マイナス——これだけで正解できる。
❷ \(P=W_1+W_2\)(符号込み)。
❸ 選択肢に「符号を付けずに足した値」が必ずあると思って臨む。
❹ 検算:力率を出して 0.5 以下なら逆振れと整合している。
深掘り⑤:電力計はどんな原理で動いているのか
電力計の主流は電流力計形です。固定コイルに負荷電流を、可動コイルに負荷電圧に比例した電流を流し、両者の間に働く力で指針を振らせます。
力は2つの電流の積に比例します。交流では瞬時値の積の平均=\(VI\cos\theta\)——だから電力計は自動的に力率を含んだ有効電力を示します。
指針が逆に振れるのは、この積の平均が負になったときです。\(\cos(30^\circ+\theta)\) が負、つまり \(30^\circ+\theta>90^\circ\) のとき——力率角 \(\theta\) が \(60^\circ\) を超えたときです。
| 計器の種類 | 動作原理 | 測れるもの | 特徴 |
| 可動コイル形 | 永久磁石と電流の力 | 直流のみ | 感度・精度が高い |
| 可動鉄片形 | 磁界による鉄片の吸引 | 交流・直流 | 丈夫で安価、実効値を示す |
| 電流力計形 | 2つのコイルの電流の積 | 交流・直流 | 電力計の主流 |
| 誘導形 | 回転磁界による渦電流 | 交流のみ | 電力量計に使われる |
「積を取る」という性質を持つのは電流力計形だけ——だから電力計といえば電流力計形です。可動コイル形や可動鉄片形は、電流か電圧の一方しか測れません。
出題履歴:二電力計法は計測分野の定番
二電力計法は理論科目の計測ユニットで繰り返し出題されます。「単純に足すだけ」の年もあれば、本問のように逆振れを絡める年もある——符号の扱いを押さえておけば、どちらでも対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 測定法 | 二電力計法 P=W1+W2 |
| W2逆振れ | 本来は負。反転読み25W→真値−25W |
| 計算 | P=490+(−25)=465W |
| 答え | (3) 465W |
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