今回は令和7年度下期 理論科目 A問題14を解説します。目盛が正弦波交流の実効値になるよう作られた整流形(全波整流形)電圧計で、方形波電圧を測定したときの指示値を求める問題です。
整流形電圧計は整流した波形の平均値に反応しますが、目盛は正弦波の実効値で校正されています。よって指示値=(測定波形の平均値)×(正弦波の波形率1.11)で求めます。実際の実効値ではない点がポイントです。
令和7年度下期 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 令和7年度下期 A問題14
目盛が正弦波交流に対する実効値になる整流形の電圧計(全波整流形)がある。この電圧計で図のような周期20msの繰り返し波形電圧を測定した。
このとき、電圧計の指示の値[V]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)5.66 (2)5.14 (3)4.62 (4)4.44 (5)4.00 V

出題のポイント:整流形は「平均値×1.11」を表示する
整流形電圧計の中身は可動コイル形です。整流したあとの平均値を測っているのに、目盛りには正弦波の実効値が書いてある——平均値に波形率 1.11 を掛けた値を表示しています。
だから正弦波以外を測ると、真の実効値とはずれます。本問はそのずれを実感させる問題です。

解説:平均値を出して 1.11 を掛ける
8 V が半分、0 V が半分
計器が勝手に掛けている
この波形の【真の実効値】は \(\sqrt{(8^2\times10)/20}=\sqrt{32}=5.66\ \mathrm{V}\) です。整流形の指示 4.44 V とは 21 %もずれています——それが選択肢(1)に置いてあるのは偶然ではありません。
誤答の正体:4つの「もっともらしい値」
| 選択肢 | 値 | その正体 |
| (1) | 5.66 V | ★この波形の【真の実効値】 \(\sqrt{32}\) |
| (2) | 5.14 V | 平均値×\(\pi/2.44\) など中間の値 |
| (3) | 4.62 V | \(8/\sqrt3\)(三角波の実効値)に近い値 |
| (4) | 4.44 V | ◎ 平均値 4.00 × 1.11 |
| (5) | 4.00 V | ★平均値そのもの(1.11 を掛け忘れた) |
(1)と(5)が二大誤答です。(1)は「実効値を答える問題だ」と思い込んだ形、(5)は「平均値を測る計器だ」で止まった形——どちらも半分正しいのが厄介です。
問われているのは「電圧計の【指示】」です。計器が実際に何を表示するか——平均値を測って 1.11 を掛けた値が答えになります。
⚠️ よくある間違い
「目盛が正弦波交流に対する実効値になる」という問題文が全てを語っています。=正弦波だと仮定して目盛りが打ってあるという意味です。測っているのは平均値なのに、表示は実効値——この二重構造を理解してください。
深掘り①:波形率と波高率
| 波形 | 実効値 | 平均値 | 波形率(実効値/平均値) | 波高率(最大値/実効値) |
| 正弦波 | \(0.707V_m\) | \(0.637V_m\) | 1.11 | 1.41 |
| 方形波 | \(V_m\) | \(V_m\) | 1.00 | 1.00 |
| 三角波 | \(0.577V_m\) | \(0.5V_m\) | 1.15 | 1.73 |
| 本問の波形 | \(0.707V_m\) | \(0.5V_m\) | 1.41 | 1.41 |
本問の波形(8 V と 0 V が半々)は、実効値 \(5.66=8/\sqrt2\)、平均値 \(4.00=8/2\)。波形率は \(5.66/4.00=1.41\)——正弦波の 1.11 とはかなり違います。
だから整流形で測ると \(4.44\ \mathrm{V}\)、真の実効値は \(5.66\ \mathrm{V}\)。比は \(1.41/1.11=1.27\)——ちょうど 27 %低く表示されます。
深掘り②:整流形計器の構造
整流形は「整流器+可動コイル形」です。可動コイル形は直流しか測れないので、交流を整流して直流にしてから測ります。
半波整流と全波整流があります。半波なら平均値は全波の半分になるので、掛ける係数は \(2\times1.11=2.22\)——本問は全波整流形なので 1.11 です。
長所は「感度が高く安価」。可動コイル形の高い感度をそのまま使えるので、微小電圧も測れます——アナログテスタの交流レンジはこの方式です。
短所は「正弦波以外で誤差が出る」「整流器の順方向電圧で低電圧域が不正確」。目盛りの下のほうが詰まっているのはそのためです。
深掘り③:真の実効値を測るには
| 方式 | 測っているもの | ひずみ波での正確さ |
| 整流形 | 平均値×1.11 | 不正確(正弦波専用) |
| 可動鉄片形 | 電流の二乗の平均 | 正確 |
| 熱電形 | 発熱量(電流の二乗) | 正確(高周波にも強い) |
| ディジタル(True RMS) | 二乗和の平均の平方根を演算 | 正確 |
実効値の定義は「二乗平均平方根(RMS)」です。だから二乗に反応する物理現象を使えば、波形によらず正確に測れます——可動鉄片形や熱電形がそれです。
二乗して平均して平方根
これが真の実効値
💡 覚え方
整流形=「平均値を測って 1.11 倍して表示」。正弦波なら正しく、それ以外ならずれる。問われているのが「指示値」なら 1.11 を掛ける、「真の実効値」なら二乗平均平方根——読み分けが大切です。
深掘り④:実効値が「熱」で定義される理由
実効値とは「同じ抵抗に流したとき、直流と同じ熱を出す交流の値」です。熱は電流の二乗に比例するので、二乗の平均を取ることになります。
二乗の平均が効く
直流と同じ熱を出す値
だから電力を扱うときは必ず実効値です。平均値では熱の計算ができません——正負が打ち消し合ってゼロになってしまうからです。
熱電形計器は、この定義をそのまま物理的に実現した計器です。電流で発熱させ、その温度を熱電対で測る——波形が何であろうと正確になります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「整流形」と書いてあれば平均値×1.11。
❷ まず1周期の平均値を出す:本問なら \(80/20=4.00\ \mathrm{V}\)。
❸ 1.11 を掛けて 4.44 V。
❹ 真の実効値(5.66 V)は選択肢に置いてある罠——問われているのは指示値。
★半波整流形なら係数は 2.22(平均値が半分になるから)。
出題履歴:整流形計器の指示値は近年の頻出テーマ
「整流形計器で正弦波以外を測ったらどう表示されるか」は、計器の原理を理解しているかを試す良問として繰り返し出題されます。平均値・実効値・波形率の3点セットを押さえておけば確実です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
★同型問題:【理論】平成27年度 A問題14とまったく同じ問題
この問題は 【理論】平成27年度 A問題14 と、図も数値もそのまま同じです。解き方(平均値 4.00 V × 1.11 = 4.44 V)も変わりません。
★ただし選択肢の並びが完全に逆順になっており、正解の番号が違います。
| 選択肢 | 平成27年度 A問題14 | 令和7年度下期 A問題14 |
| (1) | 4.00 V | 5.66 V |
| (2) | 4.44 V ◎正解 | 5.14 V |
| (3) | 4.62 V | 4.62 V |
| (4) | 5.14 V | 4.44 V ◎正解 |
| (5) | 5.66 V | 4.00 V |
並びが逆なので、真ん中の(3) 4.62 V だけが同じ位置にあります。過去問の答えを「番号」で覚えていると、確実に外す作りです。
どちらの年度でも、選択肢には「平均値 4.00 V」と「真の実効値 5.66 V」の両方が置かれています。「整流形は平均値を測って 1.11 倍して表示する」——この手順さえ覚えておけば、番号がどう並んでも迷いません。
▼あわせて解きたい同型問題:【理論】平成27年度 A問題14
まとめ
| 整流形の指示 | 平均値×波形率1.11 |
| 平均値 | (8×10+0×10)/20=4V |
| 指示値 | 4×1.11=4.44V |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・理論科目の過去問一覧(ハブ):【理論】単元別・年度別まとめ

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