電子回路14【電験3種 理論】トランジスタのバイアス回路(固定・自己・電流帰還)と安定度を判別する!令和4年度上期 B問題18 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 令和4年度上期 B問題18 3つのバイアス回路!温度変化に強いのはどれ?

今回は令和4年度上期 理論科目 B問題18を解説します。3種類のトランジスタバイアス回路(固定・電圧帰還・電流帰還)について、(a)ベース-エミッタ間電圧の式と回路の対応、(b)温度変化に対するバイアス安定度を問う問題です。

各回路のV_BEの式は回路の抵抗のつながり方で決まります。安定度は、固定バイアスが最も悪く、電流帰還バイアスが良い(ただし電力損失大)、電圧帰還(自己)バイアスがその中間という特徴を押さえます。

目次

令和4年度上期 理論科目 B問題18:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 令和4年度上期 B問題18 問題文
令和4年度上期 理論科目 B問題18 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題18

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 令和4年度上期 B問題18

 図1、図2及び図3は、トランジスタ増幅器のバイアス回路を示す。VBEをベース-エミッタ間電圧、IBをベース電流、ICをコレクタ電流、IEをエミッタ電流、R・RC・RB・REは抵抗を示す。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)次の①式、②式及び③式は、図1、図2及び図3のいずれかの回路のベース-エミッタ間の電圧VBEを示す。
① VBE=VB-IERE ② VBE=VCC-IBR ③ VBE=VCC-IBR-IERC
上記の式と図の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)から一つ選べ。

①式②式③式
(1)図1図2図3
(2)図2図3図1
(3)図3図1図2
(4)図1図3図2
(5)図3図2図1

(b)次の文章a、b及びcは、各バイアス回路における周囲温度の変化とhFE(直流電流増幅率)の変化についての記述である。
a. 温度上昇によりhFEが増加するとICが増加し、バイアス安定度が悪い回路の図は(ア)である。
b. ICが増加しようとするとき、VBがほぼ一定なのでVBEが減少し増加を妨げる。安定度は良いが電力損失が大きい回路の図は(イ)である。
c. ICが増加しようとするとき、RCの電圧降下増加でVCEが低下し、Rを通してIBが減少して増加を抑える回路の図は(ウ)である。
(ア)〜(ウ)の組合せとして正しいものを次の(1)〜(5)から一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)
(1)図1図2図3
(2)図2図3図1
(3)図3図1図2
(4)図1図3図2
(5)図2図1図3
図1 固定バイアス/図2 電圧帰還(自己)バイアス/図3 電流帰還バイアス(問題図)
図1 固定バイアス/図2 電圧帰還(自己)バイアス/図3 電流帰還バイアス(問題図)

ポイント解説:固定・電圧帰還・電流帰還を式から見分ける

GPT Image 2で作成した3種類のトランジスタバイアス回路の比較解説
R_Eがあれば図3、R_Cがあれば図2、どちらもなければ図1です。

図1は固定バイアス、図2はコレクタ電圧を戻す電圧帰還、図3はエミッタ抵抗を使う電流帰還です。(a)は式の記号から①図3、②図1、③図2となり選択肢(3)です。(b)では固定バイアス図1が最も不安定、V_B一定でV_BEを下げる図3が安定だが損失大、V_CE低下でI_Bを抑える図2が電圧帰還なので選択肢(4)です。

解説(a):①図3・②図1・③図2を選択肢と照合

GPT Image 2で作成した式と図番号および選択肢の対応解説
①図3、②図1、③図2なので(a)の正解は選択肢(3)です。

① \(V_{BE}=V_B-I_ER_E\) → 図3(電流帰還バイアス)

\(V_B\) は分圧で作った一定のベース電位、\(I_ER_E\) はエミッタ抵抗での電圧降下です。\(R_E\) が出てくるのは電流帰還バイアスだけ——即断できます。

② \(V_{BE}=V_{CC}-I_BR\) → 図1(固定バイアス)

電源から抵抗 \(R\) を1本通ってベースへ——もっとも単純な形です。\(R_C\) も \(R_E\) も式に出てきません

③ \(V_{BE}=V_{CC}-I_BR-I_ER_C\) → 図2(電圧帰還バイアス)

\(I_ER_C\) の項があるのが決め手です。ベースへの抵抗 \(R\) を、電源からではなくコレクタから取っているので、\(R_C\) での電圧降下が余分に差し引かれます

答え(a) ①→図3、②→図1、③→図2 → 選択肢(3)

解説(b):温度が上がったとき何が起きるか

共通の出発点は「温度が上がると \(h_{FE}\) が増え、\(I_C\) が増えようとする」です。それを抑える仕組みがあるかどうかが安定度を決めます。

a. 安定度が悪い回路 → 図1(固定バイアス)

\(I_B\) が \(R\) だけで決まってしまい、\(I_C\) が増えても何も起きません\(I_C=h_{FE}I_B\) がそのまま増え続ける——抑える仕組みがゼロです。

b. \(V_B\) 一定で \(V_{BE}\) が減る/損失が大きい → 図3(電流帰還バイアス)

\(I_C\) が増えるとエミッタ電位 \(I_ER_E\) が上がります\(V_B\) は分圧で固定されているので、\(V_{BE}=V_B-I_ER_E\) が減り、\(I_B\) が絞られます——これが負帰還です。

「電力損失が大きい」のは、分圧抵抗に常時電流を流し、さらに \(R_E\) でも電圧を捨てているからです。安定度と引き換えに効率を落としています

c. \(V_{CE}\) 低下で \(I_B\) が減る → 図2(電圧帰還バイアス)

\(I_C\) が増えると \(R_C\) での電圧降下が増え、コレクタ電位 \(V_{CE}\) が下がりますベースへの抵抗 \(R\) はそのコレクタにつながっているので、\(I_B\) も減ります——これも負帰還です。

答え(b) (ア)図1、(イ)図3、(ウ)図2 → 選択肢(4)

問題の解説:(b)温度上昇時の負帰還と安定度を判定

GPT Image 2で作成した温度安定度と負帰還および選択肢照合の解説
(b)は図1、図3、図2の順で選択肢(4)です。
選択肢(a) ①②③(b) (ア)(イ)(ウ)判定
(1)図1・図2・図3図1・図2・図3①に \(R_E\) があるのに図1は誤り
(2)図2・図3・図1図2・図3・図1すべてずれている
(3)図3・図1・図2図3・図1・図2◎ (a)の正解
(4)図1・図3・図2図1・図3・図2◎ (b)の正解
(5)図3・図2・図1図2・図1・図3

(a)と(b)で正解の番号が違うことに注意してください。(a)は「式と回路」、(b)は「性質と回路」で、対応の順序がずれます——同じ番号を続けて選ばないよう気をつけるだけでも事故が減ります。

⚠️ よくある間違い
「電圧帰還」と「電流帰還」の名前で混乱する人が多い部分です。帰還させる信号が電圧か電流かで名付けられています——コレクタ電圧を戻すのが電圧帰還(図2)、エミッタ電流を電圧に変えて戻すのが電流帰還(図3)

深掘り①:なぜ温度で \(h_{FE}\) が増えるのか

温度が上がると、半導体の中で熱エネルギーによって生じるキャリヤ(電子と正孔)が増えますその結果ベース領域での再結合が変わり、\(h_{FE}\) は温度とともに増加します。

同時に \(V_{BE}\) も温度で下がります(およそ \(-2\ \mathrm{mV/^\circ C}\))\(V_{BE}\) が下がれば同じ電圧でも \(I_B\) が増える——こちらも \(I_C\) を増やす方向です。

\(I_C\) が増えれば損失 \(V_{CE}I_C\) が増えて、さらに温度が上がりますこの悪循環が「熱暴走」——放置すると素子が壊れます

だからバイアス回路には必ず安定化の仕組みを入れます実用回路のほとんどが電流帰還バイアスなのは、この理由です。

深掘り②:負帰還がどう効くかを式で追う

$$V_{BE}=V_B-I_ER_E$$
❶ 電流帰還バイアス
\(V_B\) は分圧で固定
$$I_C\uparrow\ \Rightarrow\ I_E\uparrow\ \Rightarrow\ I_ER_E\uparrow$$
❷ 温度上昇の影響
$$V_{BE}\downarrow\ \Rightarrow\ I_B\downarrow\ \Rightarrow\ I_C\downarrow$$
❸ 打ち消し
増えようとした分が戻る

「増えようとする → それを打ち消す方向に働く」——これが負帰還の本質です。増幅回路の交流負帰還も、バイアスの直流負帰還も、まったく同じ考え方です。

\(R_E\) が大きいほど安定度は上がりますが、その分エミッタで電圧を捨てるので出力振幅が取れなくなります——設計はこのトレードオフです。

深掘り③:バイパスコンデンサの役割

\(R_E\) は直流的には安定化に必要ですが、交流的には増幅度を下げてしまいます交流でも負帰還が働くからです。

そこで \(R_E\) に大きなコンデンサを並列に入れます直流には効かず、交流だけを短絡する——これがバイパスコンデンサです。

結果として「直流の安定度は保ったまま、交流の増幅度は落とさない」という都合のよいことができます。平成18年度B問題18の等価回路で \(R_E\) が消えていたのは、このためです。

💡 覚え方
直流と交流で回路の見え方が違う——コンデンサが「直流を切り、交流を通す」からバイアス(直流)と増幅(交流)を別々に考えるのが、増幅回路を解く基本姿勢です。

⏱️ 本番での進め方
❶ (a)は式の記号を見るだけ:\(R_E\)→電流帰還、\(R_C\)→電圧帰還、どちらも無し→固定。
❷ (b)は「抑える仕組みがあるか」:無ければ固定バイアスで安定度が悪い。
❸ 「\(V_B\) 一定」と書いてあれば分圧=電流帰還、「\(V_{CE}\) 低下」とあれば電圧帰還。
★(a)と(b)で正解番号が違う——同じ番号を続けて選ばない。

出題履歴:バイアス回路の比較はB問題の定番

3種類のバイアス回路の式と安定度は、繰り返し問われるテーマです。令和6年度下期A問題13や平成29年度A問題13のように、固定バイアス単独での計算問題としても出題されます。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

(a)①→図3V_BE=V_B-I_E・R_E(電流帰還)
(a)②→図1V_BE=V_CC-I_B・R(固定)
(a)③→図2V_BE=V_CC-I_B・R-I_E・R_C(電圧帰還)
(b)安定度悪い=図1・良いが損失大=図3・電圧帰還=図2→(4)
答え(a)(3)・(b)(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・固定バイアス回路(電子回路5):【理論】令和6年度下期 A問題13

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