今回は令和5年度下期 理論科目 A問題13を解説します。二つの増幅器を縦続接続した回路で、全体の入出力電圧と増幅器1の増幅度から、増幅器2の電圧利得(デシベル)を求める問題です。
縦続接続では全体の電圧増幅度=各段の増幅度の積。全体増幅度を入出力電圧比から求め、増幅器1の分で割って増幅器2の増幅度を出し、20log10で[dB]に変換します。
令和5年度下期 理論科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 令和5年度下期 A問題13
図に示すように二つの増幅器を縦続接続した回路があり、増幅器1の電圧増幅度は10である。今、入力電圧viの値として0.4mVの信号を加えたとき、出力電圧voの値は0.4Vであった。
増幅器2の電圧利得の値[dB]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)10 (2)20 (3)40 (4)50 (5)60 dB

ポイント解説:0.4Vを400mVへ換算し全体の増幅度1000倍を求める

入力0.4mV、出力0.4V=400mVなので、2段全体の電圧増幅度は400/0.4=1000倍です。縦続接続では増幅度を掛けるため、増幅器1が10倍なら増幅器2は1000/10=100倍です。電圧利得は20log10を使い、20log10(100)=20×2=40dBとなります。したがって正解は選択肢(3)です。別解として、全体1000倍=60dBから増幅器1の10倍=20dBを引いても40dBです。
解説:増幅器2は100倍、電圧利得は20log10(100)=40dB

\(\mathrm{V}\) と \(\mathrm{mV}\) で1000倍
デシベルで解くほうが速いです。全体は \(20\log_{10}1000=60\ \mathrm{dB}\)、増幅器1は \(20\log_{10}10=20\ \mathrm{dB}\)——引き算して \(60-20=40\ \mathrm{dB}\) です。
\(\log_{10}100=2\)、\(\log_{10}1000=3\) と、10のべき乗なら指数がそのまま対数になります。電卓は要りません。
問題の解説:求めるのは全体ではなく増幅器2、正解は(3)40dB

| 選択肢 | 値 | 何の値か | 判定 |
| (1) | 10 dB | ダミー | × |
| (2) | 20 dB | 増幅器1の利得 | × |
| (3) | 40 dB | 増幅器2の利得 | ◎ |
| (4) | 50 dB | ダミー | × |
| (5) | 60 dB | 全体の利得 | × |
(2)と(5)は計算の途中で出てくる値です。20 dBは増幅器1、60 dBは全体——問われているのは増幅器2なので、その差を答えます。
「求めるものは何か」を最後に確認してください。途中の値をそのまま答えてしまうのは、電験でよくあるミスです。
⚠️ よくある間違い
増幅度をそのまま足してはいけません。\(1000-10=990\) は意味のない値です。足し算・引き算ができるのはデシベルに直してから——ここを混同しないでください。
☝️ ひっかけの作り方:単位の \(\mathrm{V}\) と \(\mathrm{mV}\) に注意してください。\(0.4\ \mathrm{V}\div0.4\ \mathrm{mV}=1000\)——数字だけ見て「1」としないよう、単位をそろえてから割ります。
深掘り①:覚えておくべきデシベルの値
よく出るデシベルの値を覚えておけば、電卓なしで即答できます。とくに20 dBと6 dBは必須です。
| 電圧増幅度 | 電圧利得 | 覚え方 |
| 1倍 | 0 dB | 変化なし |
| \(\sqrt2\fallingdotseq1.41\) 倍 | 3 dB | 電力が2倍 |
| 2倍 | 6 dB | 2倍で6 dB |
| 10倍 | 20 dB | 10倍で20 dB |
| 100倍 | 40 dB | 桁が1つで20 dB |
| 1000倍 | 60 dB | — |
「10倍で20 dB、2倍で6 dB」——この2つを覚えれば組合せで作れます。20倍なら \(20+6=26\ \mathrm{dB}\)、5倍なら \(20-6=14\ \mathrm{dB}\) です。
3 dBは電力が2倍(電圧は \(\sqrt2\) 倍)です。「3 dB落ち」がフィルタの帯域幅の基準——電力が半分になる周波数のことです。
深掘り②:なぜ電圧は20倍、電力は10倍なのか
デシベルはもともと電力比の単位です。電圧比のときに20倍になるのは、電力が電圧の二乗に比例するからです。
同じ抵抗なら
二乗が \(\times2\) に
\(\log a^{2}=2\log a\) という対数の性質から、二乗が係数の2になります。だから \(10\times2=20\)——電圧・電流は20倍です。
電力が2倍のとき3 dB、電圧が2倍のとき6 dB——同じ「2倍」でも値が違うのはこのためです。何の2倍かを確認してください。
深掘り③:縦続接続の利得は足し算
増幅器を何段つないでも、デシベルなら足すだけです。これがデシベルの最大の実用的価値です。
非常に扱いやすい
| 増幅度で考える | 利得(dB)で考える | |
| 縦続接続 | 掛け算 | 足し算 |
| 損失がある場合 | 割り算 | 引き算(負の利得) |
| 本問 | \(1000\div10=100\) | \(60-20=40\) |
減衰は「負の利得」として扱えます。ケーブルで \(-3\ \mathrm{dB}\)、増幅器で \(+40\ \mathrm{dB}\) なら、合計 \(+37\ \mathrm{dB}\)——足し算だけで済みます。
通信システムの設計では、この足し算が日常的に使われます。送信出力・伝送損失・アンテナ利得——すべてデシベルで足し引きします。
深掘り④:dBmという絶対値の単位
デシベルは「比」の単位ですが、基準を決めれば絶対値も表せます。実務でよく使う単位を知っておきましょう。
| 単位 | 基準 | 意味 |
| dB | なし(比のみ) | 増幅度・減衰量 |
| dBm | 1 mW | \(0\ \mathrm{dBm}=1\ \mathrm{mW}\) |
| dBW | 1 W | \(0\ \mathrm{dBW}=1\ \mathrm{W}\) |
| dBV | 1 V | \(0\ \mathrm{dBV}=1\ \mathrm{V}\) |
\(30\ \mathrm{dBm}=1\ \mathrm{W}\) です。\(1\ \mathrm{mW}\) の1000倍=30 dB——無線機の出力表示でよく見かけます。
電験3種では dB だけ扱えれば十分ですが、「基準を決めれば絶対値になる」という発想は知っておくと理解が深まります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 増幅度は掛け算、利得(dB)は足し算——縦続接続の鉄則。
❷ 10倍=20 dB、2倍=6 dB——この2つで大半が作れる。
❸ 電圧・電流は20倍、電力は10倍——二乗の関係から。
❹ 問われているのは「増幅器2」——全体(60)や増幅器1(20)を答えない。
💡 覚え方
「桁が1つ上がるごとに20 dB」——10倍=20、100倍=40、1000倍=60です。本問は全体60、1段目20、だから2段目は40——暗算で終わります。
出題履歴:デシベル計算は頻出
増幅回路の利得をデシベルで扱う問題は、電子回路分野の定番です。「10倍=20 dB」を覚えていれば、ほとんどの問題は暗算できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成28年度A問題13(利得40dBからベース電流を求める)
まとめ
| 全体増幅度A | 0.4V/0.4mV=1000 |
| A2 | 1000/10=100 |
| 利得 | 20log10(100)=40dB |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・トランジスタの静特性(電子回路3):【理論】令和7年度上期 A問題13

コメント