今回は平成21年度 理論科目 A問題12を解説します。一様な磁界中に角度θで突入した電子の軌跡と、一様な電界中に角度θで突入した電子の軌跡、および電界中の電子に働く力の向きを問う穴埋め問題です。
磁界に斜めに入った電子は、磁界に平行な成分で等速直線運動、垂直な成分で円運動をするため、合わさってらせん軌跡になります。電界中では常に一定方向の力を受けるため軌跡は放物線。電子は負電荷なので力は電界と反対向きです。
平成21年度 理論科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題12
電験3種 理論科目 【電子理論(電子の運動)】 平成21年度 A問題12
次の文章は、磁界中及び電界中の電子の運動に関する記述である。
図1のように、真空中において強さが一定で一様な磁界中に、速さv[m/s]の電子が磁界の向きに対してθ[°]の角度(0[°]<θ[°]<90[°])で突入した。この場合、電子は進行方向にも磁界の向きにも(ア)方向の電磁力を常に受けて、その軌跡は、(イ)を描く。
次に、電界中に電子を置くと、電子は電界の向きと(ウ)方向の静電力を受ける。また、図2のように、強さが一定で一様な電界中に、速さv[m/s]の電子が電界の向きに対してθ[°]の角度(0[°]<θ[°]<90[°])で突入したとき、その軌跡は、(エ)を描く。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 反対 らせん 反対 放物線 (2) 直角 円 同じ 円 (3) 同じ 円 直角 放物線 (4) 反対 らせん 同じ 円 (5) 直角 らせん 反対 放物線

出題のポイント:磁界と電界では電子に働く力の向きが違う

磁界中の電磁力F=q(v×B)は速度vにも磁界Bにも直角です。0°<θ<90°では、磁界に平行な速度成分は等速直線運動、直角な成分は円運動をするため、合成軌跡はらせんになります。電界中ではF=qEであり、電子はq=−eなので静電力は電界と反対向きです。横方向の等速運動と縦方向の一定加速度運動を合成すると軌跡は放物線です。よって(ア)直角、(イ)らせん、(ウ)反対、(エ)放物線となり、正解は選択肢(5)です。
ポイント解説:磁界中の速度を2成分へ分け、らせん軌道を導く

外積は両方に直角
電子は負電荷
斜方投射と同じ
❷が本問の山場です。磁界に対して \(\theta\) の角度で入射すると、速度は \(v\cos\theta\)(平行成分)と \(v\sin\theta\)(垂直成分)に分かれます。
平行成分には力が働かないので、そのまま等速で進みます。垂直成分は円運動——合わせるとバネのような「らせん」になります。
❹は高校物理の斜方投射そのものです。重力の代わりに電気力が働くだけ——軌道は放物線になります。
問題の解説:電界中の力と放物線を導き、選択肢(5)を選ぶ



| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | どこが誤りか |
| (1) | 反対 | らせん | 反対 | 放物線 | (ア)が誤り(磁界の力は直角) |
| (2) | 直角 | 円 | 同じ | 円 | (イ)(ウ)(エ)が誤り |
| (3) | 同じ | 円 | 直角 | 放物線 | (ア)(イ)(ウ)が誤り |
| (4) | 反対 | らせん | 同じ | 円 | (ア)(ウ)(エ)が誤り |
| (5) | 直角 | らせん | 反対 | 放物線 | 正解 |
(イ)で「円」を選んでしまうのが最も多い誤りでしょう。磁界中の電子=円運動という覚え方をしていると、斜め入射でも円だと思ってしまいます。
円になるのは \(\theta=90^\circ\)(磁界に垂直に入射)のときだけです。問題文は \(0^\circ\lt \theta\lt 90^\circ\) と斜め入射を指定しているので、らせんになります。
⚠️ よくある間違い
(ウ)の「同じ」も要注意です。電子は負電荷なので、電界とは【反対】向きの力を受けます。正電荷なら「同じ」——問題文が「電子」と書いていることを確認してください。
☝️ ひっかけの作り方:(エ)で「円」を選ぶ選択肢もあります。電界は一定方向の力しか与えないので、円にはなりません。円になるのは、常に中心を向く力(向心力)があるときだけです。
深掘り①:らせん運動を成分に分解する
磁界に斜めに入射した電子の運動を、2つの成分に分けて考えます。
| 成分 | 大きさ | 受ける力 | 運動 |
| 磁界に平行 | \(v\cos\theta\) | ゼロ | 等速直線 |
| 磁界に垂直 | \(v\sin\theta\) | \(ev\sin\theta\cdot B\) | 等速円運動 |
| 合成 | \(v\) | — | らせん(ヘリカル) |
なぜ平行成分に力が働かないのか——外積 \(\vec v\times\vec B\) は、\(\vec v\) が \(\vec B\) と平行なときゼロになるからです。平行なベクトルの外積はゼロ——これが理由です。
垂直成分だけで決まる
\(\theta\) にも \(v\) にも無関係
周期は \(\theta\) にも \(v\) にも関係しません。だから入射角が変わっても、1周にかかる時間は同じ——変わるのは半径とピッチだけです。
\(\theta=90^\circ\) なら \(\cos\theta=0\) でピッチがゼロ——らせんがつぶれて円になります。\(\theta=0^\circ\) なら半径がゼロで直線——両端が特殊な場合だと分かります。
深掘り②:電界中の放物線運動
電界に斜めに入射した電子は、ボールを斜めに投げたときと同じ軌道を描きます。
| 斜方投射(重力) | 電界中の電子 | |
| 力 | \(mg\)(下向き一定) | \(eE\)(電界と逆向き一定) |
| 力に垂直な方向 | 等速直線 | 等速直線 |
| 力の方向 | 等加速度 | 等加速度 |
| 軌道 | 放物線 | 放物線 |
「一定の力+垂直方向の等速」=放物線——これは力の種類によりません。重力でも電気力でも、一定方向の力なら必ず放物線です。
ブラウン管の偏向板も、この放物線運動を使っています。偏向板の中では放物線、出た後は直線——組み合わせて画面上の点の位置が決まります。
深掘り③:磁界と電界の性質を完全対比
磁界と電界の違いを、一覧表で確実に押さえておきましょう。選択肢の正誤判定に直結します。
| 磁界 | 電界 | |
| 力の向き | \(\vec v\) と \(\vec B\) の両方に直角 | \(\vec E\) と平行(電子は逆向き) |
| 力の大きさ | \(evB\sin\theta\)(速さに比例) | \(eE\)(速さによらない) |
| 静止した電子に | 力は働かない | 力が働く |
| 仕事 | しない(速さ不変) | する(速さが変わる) |
| 軌道(垂直入射) | 円 | 放物線 |
| 軌道(斜め入射) | らせん | 放物線 |
「静止した電子に磁界は力を及ぼさない」——\(\vec F=q\vec v\times\vec B\) で \(\vec v=0\) ならゼロだからです。電界なら止まっていても力が働く——大きな違いです。
電界中の軌道は、入射角によらず放物線です。磁界は入射角で円とらせんが変わる——この非対称性が本問の主題です。
⏱️ 本番での進め方
❶ 磁界の力は必ず「直角」——外積の性質。
❷ 斜め入射なら「らせん」、垂直入射だけ「円」——問題文の角度を確認。
❸ 電子は電界と「反対」向きの力——負電荷だから。
❹ 電界中はいつでも「放物線」——斜方投射と同じ。
💡 覚え方
「磁界は曲げるだけ、電界は速さも変える」——磁界の力は速度に直角だから仕事をしないのです。だから磁界中では速さが変わらず、電界中では変わる——この一点で多くの選択肢が判定できます。
出題履歴:磁界中と電界中の対比は定番
磁界と電界を並べて性質を問う出題は、電子理論の総まとめにあたります。力の向き・軌道・仕事の有無——この3点を対比して覚えておけば、どんな聞かれ方にも対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成19年度A問題13(磁界中の円運動の半径と周期)/【理論】令和3年度A問題12(電界と磁界が釣り合う条件)
まとめ
| (ア) | 直角(力は速度・磁界に直角) |
| (イ) | らせん(磁界中) |
| (ウ) | 反対(電界と逆向きの力) |
| (エ) | 放物線(電界中) |
| 答え | (5) |
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