単相交流54【電験3種 理論】スイッチの開閉によるRL回路の電流と位相の変化を求める!平成21年度 A問題8 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(単相交流) 平成21年度 A問題8 スイッチを開くとどうなる?RL回路の電流と位相

今回は平成21年度 理論科目 A問題8を解説します。R=√3ωLの抵抗とコイルLの回路で、スイッチSを開いたとき(電流I1・位相θ1)と閉じたとき(電流I2・位相θ2)について、I1/I2と|θ1−θ2|の組合せを求める問題です。

S開のときはRとLの直列、S閉のときはSがRを短絡してLだけになります。それぞれのインピーダンスから電流の大きさと位相を求めて比較します。

目次

平成21年度 理論科目 A問題8:問題文と選択肢

電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論・問8)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の公式問題画像は回路接続・スイッチ位置・選択肢を含め、元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 単相交流 平成21年度 A問題8 問題文
平成21年度 理論科目 A問題8 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成21年度 A問題8

 図のように、R=√3ωL〔Ω〕の抵抗、インダクタンスL〔H〕のコイル、スイッチSが角周波数ω〔rad/s〕の交流電圧Ė〔V〕の電源に接続されている。スイッチSを開いているとき、コイルを流れる電流の大きさをI1〔A〕、電源電圧に対する電流の位相差をθ1〔°〕とする。また、スイッチSを閉じているとき、コイルを流れる電流の大きさをI2〔A〕、電源電圧に対する電流の位相差をθ2〔°〕とする。このとき、I1/I2及び|θ1−θ2|〔°〕の値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

I1/I21−θ2|〔°〕
(1)1/230
(2)1/260
(3)230
(4)260
(5)290
図 Ė電源・L・R・スイッチSの回路(問題図)
図 Ė電源・L・R・スイッチSの回路(問題図)

出題のポイント:スイッチが何を短絡するかを図で確認する

スイッチを閉じると、抵抗 \(R\) が短絡されます回路はコイルだけ——純誘導性になり、位相差は90°です。ここを取り違えると、すべてが崩れます

\(R=\sqrt3\omega L\) という設定は、30-60-90度の直角三角形を作るためです。\(|\dot Z|=\omega L\sqrt{3+1}=2\omega L\) ときれいな値になります。

2つの状態のインピーダンス
$$\text{S開:}\;\dot Z_1=\sqrt3\omega L+j\omega L\;\Longrightarrow\;|\dot Z_1|=2\omega L,\;\theta_1=30^\circ$$$$\text{S閉:}\;\dot Z_2=j\omega L\;\Longrightarrow\;|\dot Z_2|=\omega L,\;\theta_2=90^\circ$$

\(\tan\theta_1=\omega L/(\sqrt3\omega L)=1/\sqrt3\) なので \(\theta_1=30^\circ\) です。

平成21年度理論問8の出題ポイント。S開ではRとLを通り、S閉では抵抗Rだけが短絡されてコイルLが残る電流経路を比較する図
SはRと並列なので、閉じるとRだけを短絡します。Lは常に電源と直列です。

解説:電流比と位相差を別々に求める

$$|\dot Z_1|=\sqrt{(\sqrt3\omega L)^2+(\omega L)^2}=\omega L\sqrt{4}=2\omega L$$
❶ S開のインピーダンス
\(3+1=4\) できれいに開ける
$$\frac{I_1}{I_2}=\frac{E/|\dot Z_1|}{E/|\dot Z_2|}=\frac{|\dot Z_2|}{|\dot Z_1|}=\frac{\omega L}{2\omega L}=\frac12$$
❷ 電流比
インピーダンスの逆比
$$|\theta_1-\theta_2|=|30^\circ-90^\circ|=60^\circ$$
❸ 位相差の差

電流の比はインピーダンスの逆比になります。電圧 \(E\) は共通なので約分されるからです。「インピーダンスが大きいほうが電流は小さい」——当たり前の関係です。

S を開いたほうがインピーダンスが大きい(\(2\omega L\) 対 \(\omega L\))ので、電流は小さい——\(I_1/I_2<1\) になります。この判断だけで(3)(4)(5)が消えます

S開のRL直列インピーダンス三角形とS閉の純コイルのインピーダンスを比較し、電流と位相遅れの求め方を説明する図
|Z|が電流の大きさを、インピーダンスの偏角が電流の遅れ角を決めます。
答え\(I_1/I_2=1/2\)、\(|\theta_1-\theta_2|=60^\circ\) → 選択肢(2)
平成21年度理論問8の問題解説1枚目。S開とS閉の正しい回路接続と電流経路を示し、抵抗Rだけが短絡されることを説明する図
問題の解説1/3。S開ではRとLの直列、S閉ではRが短絡されてLだけになります。
平成21年度理論問8の問題解説2枚目。S開とS閉のインピーダンスの大きさから電流I1とI2を求め、電流比1/2を導出する図
問題の解説2/3。|Z1|=2ωL、|Z2|=ωLより、I1/I2=1/2です。
平成21年度理論問8の問題解説3枚目。S開30度とS閉90度の遅れ位相をフェーザ図で示し、位相差60度と正解2へ対応させる図
問題の解説3/3。遅れ角は30°と90°なので差は60°、電流比1/2との組合せから正解は(2)です。

誤答の正体:短絡されるものと、比の向き

誤り方何を間違えるか結果
コイルが短絡されると考える図の読み違い\(\theta_2=0^\circ\) となり差が30°
比を逆に取る\(I_2/I_1\) を答える2 → (3)(4)(5)へ
正しい計算1/2 と 60° → (2)

選択肢は \(1/2\) が2つ、\(2\) が3つという構成です。比の向きを間違えると、必ず外れます「S を開くと抵抗が入る=電流が減る」——この物理的な判断を先にしてください。

位相差については、\(30^\circ\)、\(60^\circ\)、\(90^\circ\) の3種類が用意されています。\(90^\circ\) は「\(\theta_1=0\)、\(\theta_2=90^\circ\)」と考えた場合——S開のときに抵抗だけだと誤解したケースです。

⚠️ よくある間違い
スイッチが「何と並列に入っているか」を図で確認してください。抵抗と並列ならスイッチを閉じると抵抗が短絡コイルと並列ならコイルが短絡——結果がまったく変わります

深掘り①:短絡とは「抵抗ゼロの経路ができること」

スイッチを閉じると、その両端が導線でつながります抵抗ゼロの経路ができるので、電流はすべてそちらを通ります

S開S閉
回路の構成\(R\) と \(L\) の直列\(L\) のみ
インピーダンス\(2\omega L\)\(\omega L\)
電流\(E/(2\omega L)\)\(E/(\omega L)\)(2倍)
位相差30°遅れ90°遅れ
力率\(\cos30^\circ=0.866\)\(\cos90^\circ=0\)
消費電力\(I_1^2R\)0(抵抗がない)

S を閉じると消費電力がゼロになります抵抗が短絡されて、電力を消費する素子がなくなるからです。電流は2倍に増えるのに、電力はゼロ——力率が0だからです。

これが「無効電流」の極端な例です。電流は流れているのに仕事をしていない——線路があれば、その抵抗で損失だけが生じます

深掘り②:\(R=\sqrt3\omega L\) という設定の意味

問題文が \(R=\sqrt3\omega L\) と指定しているのは、計算をきれいにするためです。もし \(R=\omega L\) なら45°、\(R=\omega L/\sqrt3\) なら60° になります。

\(R\) と \(\omega L\) の関係\(\tan\theta_1\)\(\theta_1\)\(|\dot Z_1|\)
\(R=\sqrt3\omega L\)(本問)\(1/\sqrt3\)30°\(2\omega L\)
\(R=\omega L\)145°\(\sqrt2\omega L\)
\(R=\omega L/\sqrt3\)\(\sqrt3\)60°\(2\omega L/\sqrt3\)

\(\sqrt3\) が出てきたら30°か60°——どちらかは \(\tan\) の分子分母を見て判断します。本問は \(\tan\theta=\omega L/R=1/\sqrt3\) なので30° です。

\(|\dot Z_1|=2\omega L\) ときれいになるのも、\(3+1=4\) という設計によります。問題を作る側は、\(\sqrt{}\) が開けるように数値を選んでいる——開けないときは読み違いを疑ってください

💡 覚え方
「スイッチ問題は2つの状態を表にする」——インピーダンス・電流・位相・力率を並べて書くと、何を聞かれても答えられます。

⏱️ 本番での進め方
❶ スイッチが何を短絡するかを図で確認する。ここが最大の分かれ目。
❷ 電流比はインピーダンスの逆比。電圧が共通なら約分される。
❸ 物理で向きを判断。抵抗が入れば電流は減る → 比は1未満。
❹ 純誘導性なら位相差90°。力率0、消費電力0。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

S開|Z|=2ωL,I1=E/(2ωL),θ1=30°
S閉|Z|=ωL,I2=E/(ωL),θ2=90°
I1/I21/2
答え1/2・60° …(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・RL回路・位相の関連問題:【理論】令和4年度上期A問題8

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