単相交流53【電験3種 理論】不平衡な単相3線式回路の線電流の大小を比較する!平成21年度 A問題7 完全解説

電験3種 理論科目 電気回路(単相交流) 平成21年度 A問題7 単相3線式がアンバランス!どの線に一番流れる?

今回は平成21年度 理論科目 A問題7を解説します。抵抗・コイル・コンデンサからなる負荷を単相3線式電源(Vab=Vbc=100V、Vac=200V)に接続したときの、線電流Ia・Ib・Icの大小関係を求める問題です。

各負荷を流れる電流をフェーザ(複素数)で求め、端子a・b・cごとにキルヒホッフの法則で合成します。その大きさを比べて大小を判定します。

目次

平成21年度 理論科目 A問題7:問題文と選択肢

電気技術者試験センター公表の公式問題PDF(理論・問7)と公式解答PDFを確認しながら進めます。下の公式問題画像は回路図・電流方向・選択肢を含め、元のまま保持しています。

電験3種 理論科目 単相交流 平成21年度 A問題7 問題文
平成21年度 理論科目 A問題7 問題文

電験3種 理論科目 【電気回路(単相交流)】 平成21年度 A問題7

 図のように抵抗、コイル、コンデンサからなる負荷がある。この負荷に線間電圧V̇ab=100∠0°〔V〕、V̇bc=100∠0°〔V〕、V̇ac=200∠0°〔V〕の単相3線式交流電源を接続したところ、端子a、端子b、端子cを流れる線電流はそれぞれİa〔A〕、İb〔A〕及びİc〔A〕であった。İa、İb、İcの大きさをそれぞれIa〔A〕、Ib〔A〕、Ic〔A〕としたとき、これらの大小関係を表す式として、正しいのは次のうちどれか。

(1)Ia=Ic>Ib (2)Ia>Ic>Ib (3)Ib>Ic>Ia (4)Ib>Ia>Ic (5)Ic>Ia>Ib

図 単相3線式電源とab・bc・ac間の負荷(問題図)
図 単相3線式電源とab・bc・ac間の負荷(問題図)

出題のポイント:枝電流を複素数のまま合成する

3本の枝の電流は、それぞれ位相が違います大きさだけを足し引きしてはいけません——複素数(フェーザ)のまま合成してから、最後に絶対値を取ります

3つの負荷はすべて \(3:4:5\) の直角三角形になっています。\(|Z_{ab}|=|Z_{bc}|=5\;\Omega\)、\(|Z_{ac}|=10\;\Omega\)——計算しやすいように選ばれた値です。

この問題の手順
$$\dot I=\frac{\dot V}{\dot Z}\;(\text{各枝})\quad\to\quad\dot I_a=\dot I_{ab}+\dot I_{ac},\;\dot I_c=\dot I_{bc}+\dot I_{ac},\;\dot I_b=\dot I_{bc}-\dot I_{ab}$$

端子ごとにキルヒホッフの電流則を立てます。電流の基準方向を先に決めておくのが大切です。

平成21年度理論問7の出題ポイント。単相3線式回路で枝電流をフェーザとして求め、端子のKCLで線電流を合成して大小を比較する流れ
位相差を保った複素数のまま枝電流を合成し、最後に絶対値を比較します。

各枝の電流を求める

\(b\) を基準(0 V)とすると、\(V_a=100\)、\(V_c=-100\) です。各枝の電流は \(\dot V/\dot Z\) で求まります。

インピーダンス電圧電流大きさ
a-b\(3+j4\)100 V\(12-j16\)20 A
b-c\(4-j3\)100 V\(16+j12\)20 A
a-c\(8+j6\)200 V\(16-j12\)20 A

3つとも大きさは20 Aですが、位相がまったく違いますa-b は遅れ(誘導性)、b-c は進み(容量性)、a-c は遅れ——この違いが端子電流の差を生みます

複素数の割り算は、分母の共役を分子分母に掛けるのが定石です。\(100/(3+j4)=100(3-j4)/25=12-j16\)——\(|Z|^2=25\) で割ります

端子ごとに合成する

$$\dot I_a=\dot I_{ab}+\dot I_{ac}=(12-j16)+(16-j12)=28-j28$$
❶ 端子a
\(|I_a|=28\sqrt2=39.6\)
$$\dot I_c=\dot I_{bc}+\dot I_{ac}=(16+j12)+(16-j12)=32$$
❷ 端子c
虚部が打ち消し合う。\(|I_c|=32\)
$$\dot I_b=\dot I_{bc}-\dot I_{ab}=(16+j12)-(12-j16)=4+j28$$
❸ 端子b(中性線)
\(|I_b|=\sqrt{16+784}=28.3\)

端子c では虚部がちょうど打ち消し合って、電流が実数(32 A)になります。b-c 負荷が容量性、a-c 負荷が誘導性で、無効分が相殺されたためです。

中性線 \(I_b\) にも28.3 A の電流が流れています負荷が不平衡だからです。平衡していれば中性線の電流はゼロになります。

線電流Ia・Ib・Icと枝電流Iab・Ibc・Iacの基準方向を示し、a・b・c各端子のKCLとIcの符号の意味を説明する図
電流の基準方向を先に決めると、Ia=Iab+Iac、Ib=Ibc-Iab、Ic=-(Ibc+Iac)と整理できます。
答え\(I_a=39.6>I_c=32>I_b=28.3\) → 選択肢(2)
平成21年度理論問7の問題解説1枚目。ab・bc・acの正しい回路接続、電圧、電流方向と複素インピーダンスを示す図
問題の解説1/3。抵抗・コイル・コンデンサを複素インピーダンスへ置き換え、各枝でI=V/Zを使える形にします。
平成21年度理論問7の問題解説2枚目。共役複素数を使って3本の枝電流を実部と虚部へ丁寧に導出する図
問題の解説2/3。Iab=12-j16 A、Ibc=16+j12 A、Iac=16-j12 Aを、共役複素数を使って求めます。
平成21年度理論問7の問題解説3枚目。枝電流をKCLで合成し、Ia・Ib・Icの大きさを計算して正解2へ対応させる図
問題の解説3/3。KCLで合成してから絶対値を求めると、Ia約39.6 A、Ic=32 A、Ib約28.3 Aとなり、正解は(2)です。

誤答の正体:大きさだけを足す

3つの枝電流はすべて20 Aです。もし大きさだけを足すと、\(I_a=20+20=40\;\mathrm{A}\)——実際は39.6 A で近いのですが、偶然です。

端子大きさを単純に足す正しい合成
\(I_a\)40 A39.6 Aほぼ同じ(偶然)
\(I_c\)40 A32 A大きく違う
\(I_b\)0 A(引き算)28.3 Aまったく違う

\(I_b\) では致命的な差が出ます大きさが同じ20 A どうしを引くとゼロですが、実際は28.3 A——位相が違うから打ち消し合わないのです。

\(I_a\) がたまたま近い値になったので、「大きさを足しても大丈夫」と誤解しやすいのが厄介です。必ず複素数のまま計算してください。

⚠️ よくある間違い
a-c 間の負荷を \(8+j6\) と読み取れるかも分かれ目です。6 Ω はコイル(リアクタンス)であって抵抗ではありません\(8+6=14\;\Omega\) としてしまうと、すべてが狂います

深掘り①:不平衡だと何が問題になるか

単相3線式では、中性線に電流が流れないことが前提で設計されています。不平衡になると中性線にも電流が流れ、さまざまな不具合が生じます

平衡負荷不平衡負荷(本問)
中性線の電流028.3 A
中性線の電圧降下なしあり
上下の電圧等しいずれる
中性線の太さ細くてよい太くする必要がある

中性線に電流が流れると電圧降下が生じ、上下の負荷にかかる電圧がずれます片方が100 V を超え、もう片方が下回る——機器の故障につながります

だから実際の配電では、負荷をなるべく均等に分けることが求められます。分電盤で回路を振り分けるとき、バランスを取るのはこのためです。

深掘り②:複素数計算を速くするコツ

複素数の割り算は、共役を掛けるのが基本ですが、極形式を使うほうが速い場合もあります。

$$\frac{100}{3+j4}=\frac{100(3-j4)}{(3+j4)(3-j4)}=\frac{100(3-j4)}{25}=12-j16$$
共役を掛ける方法
分母が \(|Z|^2\) になる
$$\frac{100\angle0^\circ}{5\angle53.1^\circ}=20\angle-53.1^\circ$$
極形式の方法
大きさは割り算、角度は引き算

大きさだけ知りたいなら極形式が速いです。\(100/5=20\;\mathrm{A}\)——1行で済みますただし合成するときは直交形式(\(a+jb\))に直す必要があります。

本問のように「合成してから大きさを比べる」問題では、直交形式のまま進めるのが効率的です。3:4:5 の三角形なら、共役を掛ける計算もきれいに収まります

💡 覚え方
「大きさが同じでも位相が違えば合成結果は違う」——本問の3つの枝はすべて20 Aですが、端子電流は39.6・32・28.3 とばらばらです。位相の重要性がよく分かる問題です。

⏱️ 本番での進め方
❶ 基準を決める。\(b\) を0 V とすると \(V_a=100\)、\(V_c=-100\)。
❷ 各枝を複素数で計算する。共役を掛けて分母を実数化。
❸ 端子ごとにKCL。向きをそろえてから足し引き。
❹ 最後に絶対値。大きさを先に足さない。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

負荷電流Iab=12−j16,Ibc=16+j12,Iac=16−j12
Ia|28−j28|≒39.6A
Ic/Ib32/28.3A
答えIa>Ic>Ib …(2)

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