自動制御11【電験3種 機械】調節計のブロック線図とCR回路(比例プラス積分要素)!令和5年度下期 B問題18 完全解説

電験3種 機械科目 自動制御 令和5年度下期 B問題18 CR回路が作るPI動作!調節計の中身を解剖

今回は令和5年度下期 機械科目 B問題18を解説します。調節計の演算回路に用いられるフィードバックブロック線図で、内部のCR回路の周波数伝達関数G1(jω)を求める(a)と、ゲインKが非常に大きいときの閉ループ伝達関数の近似式(比例プラス積分要素)を求める(b)の問題です。★自動制御12(平成20年度B問題17)と図・問題文・選択肢・正解のすべてが同一で、実質的に同じ問題の再出題です。

(a)はCR回路の分圧計算でG1(jω)=jωCR/(1+jωCR)を導きます。(b)はG(jω)=K/(1+K・G1(jω))にG1(jω)を代入し、Kが非常に大きいとして1/K≈0で近似すると比例プラス積分要素の形になります。

🔁 この問題は繰り返し出題されています
ほぼ同じ問題が 【機械】平成20年度B問題17 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
目次

令和5年度下期 機械科目 B問題18:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 自動制御 令和5年度下期 B問題18 問題文
令和5年度下期 機械科目 B問題18 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題18

電験3種 機械科目 【自動制御】 令和5年度下期 B問題18

 図1は,調節計の演算回路などによく用いられるブロック線図を示す。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a)図2は,図1のブロックG1(jω)の詳細を示し,静電容量C[F]と抵抗R[Ω]からなる回路を示す。この回路の入力量V1(jω)に対する出力量V2(jω)の周波数伝達関数G1(jω)=V2(jω)/V1(jω)を表す式として,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)1/(CR+jω) (2)1/(1+jωCR) (3)CR/(CR+jω) (4)CR/(1+jωCR) (5)jωCR/(1+jωCR)

(b)図1のブロック線図において,閉ループ周波数伝達関数G(jω)=X(jω)/Y(jω)で,ゲインKが非常に大きな場合の近似式として,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。なお,この近似式が成立する場合,この演算回路は比例プラス積分要素と呼ばれる。

(1)1+jωCR (2)1+CR/jω (3)1+1/(jωCR) (4)1/(1+jωCR) (5)(1+CR)/(jωCR)

図1 調節計のブロック線図と図2 CR回路(問題図)
図1 調節計のブロック線図と図2 CR回路(問題図)

出題のポイント:帰還側にCR回路がある構成

本問のブロック線図は、前向きが大きなゲインK、帰還側にCR回路 G1——調節計の演算回路としてよく使われる形です。

位置要素役割
前向き経路K(非常に大きい)増幅するだけ
帰還経路★G1(CR回路)全体の特性を決める

なぜ帰還側に特性を持たせるのか——K が大きければ、全体の特性が帰還要素の逆数だけで決まるからです。K のばらつきや温度変化の影響を受けない——安定で正確な演算回路になるのです。

図1 調節計のブロック線図と図2 CR回路(問題図)
図1 調節計のブロック線図と図2 CR回路(問題図)
直列コンデンサCと接地抵抗Rからなり、出力をR両端から取るCR回路と伝達関数の導出
出力がRの両端なので高域通過形の伝達関数になります。

(a) CR回路の伝達関数

\( G_1(j\omega)=\dfrac{R}{R+\dfrac{1}{j\omega C}}=\dfrac{j\omega CR}{1+j\omega CR} \)
分圧して整理
★出力は抵抗の両端

分子に jωCR がある——これは微分要素(ハイパスフィルタ)です。直流(ω→0)では0、高周波では1 に近づきます

ωキャパシタの状態G1
0(直流)開放★0(抵抗に電圧が現れない)
∞(高周波)短絡1(そのまま出る)

直流で0 になる——この一点で選択肢(1)(2)(3)(4)が落ちますいずれもω→0 で有限の値をもつからです。

答え(a)の正解は (5) jωCR/(1+jωCR)です。

(b) K が大きいときの近似

高ゲインフィードバックの近似

\( G=\dfrac{K}{1+KG_1}=\dfrac{1}{\dfrac{1}{K}+G_1}\ \xrightarrow{K\to\infty}\ \dfrac{1}{G_1} \)

1/K を0 とみなすだけ——残るのは帰還要素の逆数です。

\( G\fallingdotseq\dfrac{1}{G_1}=\dfrac{1+j\omega CR}{j\omega CR} \)
逆数を取る
★ここを忘れると誤答
\( \phantom{G}=1+\dfrac{1}{j\omega CR} \)
項ごとに分ける
比例項+積分項
令和5年度下期機械B問題18、CR回路は選択肢5、比例プラス積分要素は選択肢3
答えは(a)-(5)、(b)-(3)です。
答え(b)の正解は (3) 1+1/(jωCR)です。「1」が比例動作、「1/(jωCR)」が積分動作——これがPI制御器の伝達関数になります。

⚠️ よくある間違い
(1) 1+jωCR は比例プラス微分——jω が分子にあるので微分です。問題文が「比例プラス積分要素」と明言しているので、jω は分母になければなりません
(4) は G1 の逆数を取り忘れた形——K→∞ で「帰還要素そのもの」ではなく「逆数」になります。
迷ったら ω→∞ で確かめる——正解の(3)は1 に近づき、比例動作だけが残るのが妥当です。

積分時間という考え方

PI制御器は、実務では別の書き方もされます。「比例ゲイン」と「積分時間」で表すのが一般的です。

PI制御器の一般形

\( G=K_p\left(1+\dfrac{1}{j\omega T_i}\right) \)

Ti が積分時間——本問なら Kp=1、Ti=CR にあたります。

積分時間 Ti積分動作の強さ効果
短い★強い偏差が早く消えるが行き過ぎやすい
長い弱い安定だが偏差の解消が遅い

「積分時間を短くする=積分を強める」——比例ゲインとは向きが逆なので注意してください。分母にあるのだから、小さいほど項が大きくなるのです。

積分時間の意味は「比例動作と同じだけの操作量を、積分動作が出すのに要する時間」——ステップ状の偏差を与えたときに、両者が等しくなるまでの時間です。本問なら CR そのもの——回路定数がそのまま制御パラメータになっているわけです。

抵抗やキャパシタを可変にすれば、現場で調整できる——ディジタル化される前の調節計は、実際にこうして作られていましたいまはソフトウェアで実現されますが、パラメータの意味は変わりません

⏱️ 本番での進め方
①(a) 出力が抵抗ならハイパス。直流で0 になるかで4肢が落ちる。
②(b) K→∞ なら G≒1/G1。★逆数を取る。
③ (1+jωCR)/(jωCR)=1+1/(jωCR)。
④ jω が分母=積分。分子なら微分で問題文と矛盾。

💡 覚え方
「高ゲインなら帰還要素の逆数」——だから精度が要る部分は帰還側に置くそして「1+1/(jωT) がPI制御器」——T が積分時間です。

本問は平成20年度 B問題17と図・問題文・選択肢・正解がすべて同一です(自動制御:調節計の比例プラス積分要素)。15年ぶりの完全再出題でした。

前向きゲインK、帰還要素G1の負帰還ブロック線図と比例プラス積分要素の導出
Kが非常に大きいとき1/Kを0と近似します。

調節計とは何をする装置か

問題文の「調節計」——プロセス制御の現場で使われるPID制御器の総称です。どんな装置なのかを押さえておきましょう。

機能内容
測定値の入力センサからの信号(4〜20 mA など)を受ける
偏差の計算設定値と測定値の差を求める
PID演算★本問の回路が担う部分
操作量の出力バルブやヒータへ信号を送る

本問の回路は、このうちPID演算の部分——とくに比例プラス積分(PI)を実現していますアナログ時代は、こうした演算回路を組み合わせて調節計が作られていました

信号に4〜20 mA が使われるのは、0 mA を「断線」と区別できるから。0 から始めると、信号が0 なのか線が切れたのか分からない——これもフェイルセーフの一種です。

いまはディジタル調節計が主流ですが、「比例帯」「積分時間」「微分時間」というパラメータの呼び方は、アナログ時代のまま——本問のような回路が原型になっているのです。

まとめ

G1(jω)jωCR/(1+jωCR)
G(jω)=K/(1+K・G1)Kが大のとき近似
G(jω)(近似後)1+1/(jωCR)
答え(a)-(5),(b)-(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・調節計のブロック線図とCR回路(平成20年度の同一問題):【機械】平成20年度B問題17
・一巡伝達関数とベクトル軌跡(令和7年度上期):【機械】令和7年度上期B問題18

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成19年度B問題17(自動制御13)
【機械】平成22年度A問題13(自動制御15)
【機械】令和4年度上期B問題15(自動制御10)
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