今回は令和3年度 機械科目 A問題13を解説します。抵抗RとキャパシタCで構成された一次遅れ要素(RC回路)の折れ点角周波数、ゲイン特性、位相特性に関する空所補充問題です。
G(jω)=1/(1+jωCR)の形に整理し、折れ点角周波数ωc=1/(CR)、低域ゲイン0dB、高域での傾き-20dB/dec、高域での位相遅れ90°という一次遅れ要素の典型的な性質を順に当てはめます。
令和3年度 機械科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題13
電験3種 機械科目 【自動制御】 令和3年度 A問題13
次の文章は,図に示す抵抗R,並びにキャパシタCで構成された一次遅れ要素に関する記述である。図の回路において,入力電圧に対する出力電圧を,一次遅れ要素の周波数伝達関数として表したとき,折れ点角周波数ωcは(ア)rad/sである。ゲイン特性は,ωcよりも十分低い角周波数ではほぼ一定の(イ)dBであり,ωcよりも十分高い角周波数では,角周波数が10倍になるごとに(ウ)dB減少する直線となる。また,位相特性は,ωcよりも十分高い角周波数でほぼ一定の(エ)°の遅れとなる。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし,R=10Ω,C=0.001Fとする。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 100 20 10 45 (2) 100 0 20 90 (3) 100 0 20 45 (4) 0.01 0 10 90 (5) 0.01 20 20 45

出題のポイント:一次遅れ要素の4つの数値
RC回路は一次遅れ要素の代表例です。ボード線図の形が決まっているので、4つの空欄はすべて定型的に埋まります。
| 空欄 | 問われている量 | 答え | 根拠 |
| (ア) | 折れ点角周波数 | 100 rad/s | ωc=1/(CR) |
| (イ) | 低域のゲイン | 0 dB | |G|→1、20log1=0 |
| (ウ) | 高域の減少率 | 20 dB/dec | |G|∝1/ω |
| (エ) | 高域の位相遅れ | 90° | 分母が純虚数になる |


それぞれの数値を確かめる
★C×R を先に計算する
分母の虚数部が無視できる
ωが10倍でゲインは1/10
★−20 dB/dec
1/j=−j なので90°遅れ

⚠️ よくある間違い
(3)(5)の「45」は折れ点での位相です。問題文は「ωcよりも十分高い角周波数で」と書いている——だから90°。
(1)(4)の「10 dB」は一次遅れの傾きを取り違えたもの。−20 dB/dec(=−6 dB/oct)が一次遅れの標準です。
(4)(5)の「0.01」はCR をそのまま答えた値——折れ点角周波数はその逆数です。
一次遅れ要素のボード線図を覚える
この4つの数値は、一次遅れ要素なら常に同じです。時定数が変われば折れ点の位置が動くだけ——形は変わりません。
| 角周波数 | ゲイン | 位相 |
| ω ≪ ωc | 0 dB(一定) | 0° |
| ω = ωc | ★−3 dB | ★−45° |
| ω ≫ ωc | −20 dB/dec で減少 | ★−90° |
折れ点での −3 dB と −45°——この2つの数字はセットで覚えておくと、選択肢の見分けに使えます。
−3 dB は「振幅が1/√2 になる点」です。電力で言えば半分——だからカットオフ周波数(遮断周波数)とも呼ばれます。フィルタの帯域幅を定義する基準としても使われる重要な点です。
二次以上ならどうなるか
一次遅れの傾きが −20 dB/dec、位相遅れが90°——次数が上がると、これが単純に倍々になります。
| 要素 | 高域の傾き | 最終的な位相遅れ | 安定性への影響 |
| 一次遅れ | −20 dB/dec | 90° | 単独では不安定にならない |
| 二次遅れ | −40 dB/dec | 180° | ★不安定の可能性が出る |
| 三次遅れ | −60 dB/dec | 270° | 不安定になりやすい |
位相が180°遅れると、負帰還が正帰還に変わります——そこでゲインが1 を超えていれば発振。これが不安定の条件です。
一次遅れは位相が90°までしか遅れないので、単独で不安定になることはありません——だから安心して使える要素だと言えます。実際の制御対象は複数の遅れをもつので、そこで安定性が問題になるのです。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)ωc=1/(CR)=1/(0.001×10)=100。逆数を忘れない。
②(イ)低域は0 dB。ゲイン1 なので当然。
③(ウ)一次遅れは −20 dB/dec。10 dB ではない。
④(エ)十分高域なら90°。45°は折れ点での値。
💡 覚え方
「一次遅れは 0 dB → 折れ点で−3 dB・−45° → −20 dB/dec・−90°」——この一連の数字を丸ごと覚える。問われるのは常にこの中のどれかです。

RC回路はローパスフィルタでもある
本問の回路は、制御工学では一次遅れ要素ですが、電子回路の目で見れば低域通過フィルタ(ローパスフィルタ)です。同じものを別の言葉で呼んでいるだけになります。
| 制御工学の言い方 | 電子回路の言い方 | |
| 要素名 | 一次遅れ要素 | 1次ローパスフィルタ |
| ωc | 折れ点角周波数 | 遮断角周波数(カットオフ) |
| CR | 時定数 | 時定数 |
| 着目点 | 応答の遅れ・安定性 | 通す周波数と通さない周波数 |
低い周波数はそのまま通り、高い周波数は減衰する——ゲイン特性がまさにそれを表しています。ノイズ除去のフィルタとして使えば、制御系の微分動作を安定させる働きもします。
時間領域で見れば、ステップ入力に対して指数関数的に立ち上がる——時定数 CR で最終値の63.2 %に達するのでした。本問なら CR=0.01 s=10 msです。
時定数と折れ点角周波数は逆数の関係
時定数が大きい=応答が遅い=高い周波数を通さない——時間領域と周波数領域は表裏一体です。
| 時定数 T=CR | ωc=1/T | 応答 | 通す周波数 |
| 10 ms(本問) | 100 rad/s | ふつう | 約16 Hz まで |
| 1 ms | 1000 rad/s | 速い | 約160 Hz まで |
| 100 ms | 10 rad/s | 遅い | 約1.6 Hz まで |
速く応答させたければ時定数を小さくする——ただし高い周波数まで通してしまうのでノイズにも敏感になります。ここにも「速さ」と「安定さ」のトレードオフがあるのです。
まとめ
| (ア) ωc | 100 rad/s |
| (イ) 低域ゲイン | 0 dB |
| (ウ) 高域傾き | 20 dB/dec減少 |
| (エ) 高域位相 | 90°遅れ |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・RLC回路の伝達関数とボード線図:【機械】令和4年度下期B問題15
・R-L回路のステップ応答からR,L,周波数伝達関数を求める:【機械】令和5年度上期A問題13

コメント