今回は平成20年度 機械科目 A問題12を解説します。ヒートポンプが低温熱源から熱を吸収し高温側へ放出する原理と、成績係数(COP)の定義に関する空所補充問題です。★電気加熱18(平成23年度A問題12)と同じヒートポンプ・COPの原理を扱う対の問題で、本問は一般原理を扱います。
ヒートポンプは外部から仕事Wを与えて低温熱源から熱Q1を吸収し、高温側へQ2=Q1+Wを放出する機関です。加熱サイクルの効率η=Q2/Wは1より大きくなり、これを成績係数(COP)と呼びます。
平成20年度 機械科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題12
電験3種 機械科目 【電気加熱】 平成20年度 A問題12
近年,広く普及してきたヒートポンプは,外部から機械的な仕事W〔J〕を与え,(ア)熱源より熱量Q1〔J〕を吸収して,(イ)部へ熱量Q2〔J〕を放出する機関のことである.この場合(定常状態では),熱量Q1〔J〕と熱量Q2〔J〕の間には(ウ)の関係が成り立ち,ヒートポンプの効率ηは,加熱サイクルの場合(エ)となり1より大きくなる.この効率ηは(オ)係数(COP)と呼ばれている.
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる語句又は式として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか.
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 低温 高温 Q2=Q1+W Q2/W 成績 (2) 高温 低温 Q2=Q1+W Q1/W 評価 (3) 低温 高温 Q2=Q1+W Q1/W 成績 (4) 高温 低温 Q2=Q1-W Q2/W 成績 (5) 低温 高温 Q2=Q1-W Q2/W 評価
ヒートポンプは熱を「作る」のではなく「運ぶ」
効率が1 を超える——この一点がヒートポンプのすべてです。エネルギー保存則に反しているわけではありません。
| 電気ヒーター | ★ヒートポンプ | |
| やっていること | 電気を熱に変える | ★外の熱を汲み上げて運ぶ |
| 熱の出どころ | 投入した電気だけ | ★外気+投入した電気 |
| 効率 | 1.0(100 %が上限) | ★3〜6(COP) |
「ポンプ」という名のとおり、低いところから高いところへ汲み上げる——水を汲み上げるポンプと同じ発想です。水を作り出しているわけではないのと同様、熱も作っていません。
だから「効率」ではなく「成績係数(COP)」と呼びます——効率という言葉は100 %を超えないものに使うためです。

(ア)〜(ウ) 熱収支を式にする
エネルギー保存則をそのまま書くだけ——入ってきたものと出ていくものが等しいという当たり前の関係です。
| 向き | 量 | 説明 |
| 入る | Q1 | ★低温熱源から吸収 |
| 入る | W | 外部から与える機械的な仕事 |
| 出る | Q2 | ★高温部へ放出 |
Q2=Q1−W では、与えた仕事が消えてしまいます——エネルギー保存則に反するので、選択肢(4)(5)は除外できます。
(ア)(イ)は「低温から高温へ」——熱の自然な流れとは逆です。だから仕事W を与える必要がある——ここが本質になります。
(エ)(オ) 成績係数の定義
★得たい熱÷投入した仕事
★必ず1より大きい
「1+(外から汲んだ分)」という形——Q1 がゼロでも1、汲み上げるほど大きくなる。だから必ず1 を超えるのです。
もし η=Q1/W と定義したら、それは冷房のCOP——「どれだけ冷やせたか」を問う場合です。加熱なら Q2、冷却なら Q1 と押さえてください。
| 用途 | ほしいもの | COP | 1 を超えるか |
| ★暖房・給湯 | Q2(放出する熱) | ★Q2/W | ★必ず超える |
| 冷房・冷蔵 | Q1(吸収する熱) | Q1/W | 超えることが多い |
暖房COP=冷房COP+1——同じ装置なら必ずこの関係になります。Q2/W=(Q1+W)/W=Q1/W+1 だからです。

⚠️ よくある間違い
(エ)を Q1/W としてしまう——選択肢(2)(3)がそれです。
問題文は「加熱サイクルの場合」——ほしいのは放出する熱Q2 です。冷やすのが目的ならQ1——用途で分子が変わると押さえてください。
(ウ)を Q2=Q1−W とする選択肢(4)(5)——与えた仕事が消えることになり、エネルギー保存則に反します。物理的におかしい選択肢は、その場で落とせます。
COP はどこまで大きくできるか
いくらでも大きくできるわけではありません——熱力学的な上限があります。
| 条件 | 温度差 | 理論上限 |
| 外気20 ℃→室内25 ℃ | 5 K | ★約60 |
| 外気0 ℃→室内25 ℃ | 25 K | 約12 |
| 外気−10 ℃→給湯85 ℃ | 95 K | ★約3.8 |
温度差が小さいほどCOP は大きくなります——汲み上げる高さが低いほど楽だからです。これも水のポンプと同じ直感で理解できます。
実際のCOP は理論値の4〜5割——冬に暖房の効きが悪くなるのは、温度差が大きくなってCOP が下がるからです。
⏱️ 本番での進め方
①(ウ) Q2=Q1+W。引き算の選択肢は保存則違反で除外。
②(エ) 加熱ならQ2/W。冷却ならQ1/W。
③COP=1+Q1/W なので必ず1より大きい。
④★暖房COP=冷房COP+1。
💡 覚え方
「熱を作らず、汲み上げる」——だから1 を超えても矛盾しません。「加熱なら分子はQ2」——ほしいものが分子と覚えてください。
エアコンの具体的なサイクルは平成23年度 A問題12にあります(電気加熱:エアコン冷房時の冷媒サイクルとCOP)。

ヒートポンプが使われている機器
「近年、広く普及してきた」と問題文にあるとおり——身の回りに数多くあります。
| 機器 | 汲み上げる向き | ほしい側 |
| エアコン(冷房) | 室内→屋外 | ★低温側(Q1) |
| エアコン(暖房) | 屋外→室内 | ★高温側(Q2) |
| 冷蔵庫 | 庫内→室内 | 低温側 |
| ★エコキュート | 外気→貯湯タンク | ★高温側 |
冷蔵庫の裏側が温かいのは、庫内から汲み上げた熱を放出しているから——Q2=Q1+W がそこに現れています。
だから「冷蔵庫のドアを開けて部屋を冷やす」ことはできません——部屋全体で見れば、W の分だけ熱が増えるのです。熱収支の式が、そのまま直感的な答えを与えてくれます。
排熱をどこへ捨てるか
ヒートポンプには必ず「捨てる側」が要ります——エアコンの室外機がそれです。
都市部で多数のエアコンが稼働すると、屋外へ排出される熱が集まります——ヒートアイランド現象の一因とされるのはこのためです。熱は消えず、移動するだけ——Q2=Q1+W が示すとおりです。
空欄を2つで絞り込む
5つの空欄がありますが、2つ決まれば確定します。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (ウ) | Q2=Q1+W | ★(1)(2)(3) |
| (エ) | Q2/W | ★(1)に確定 |
(ウ)はエネルギー保存則——引き算の(4)(5)は物理的にあり得ません。ここで2つ落とせます。
次に(エ)——加熱サイクルなのでQ2/W。Q1/W とする(2)(3)が落ちて確定します。
(ア)(イ)(オ)は確認するまでもない——2つの物理的な判断だけで答えが出るのです。A問題は1問4〜5分——この絞り込みができれば1分で片づきます。
まとめ
| (ア) | 低温 |
| (イ) | 高温 |
| (ウ) | Q2=Q1+W |
| (エ) | Q2/W |
| (オ) | 成績 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
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