今回は令和5年度上期 機械科目 A問題11を解説します。電動機応用1(令和6年度下期A問題11)と全く同じ構成・同じ選択肢パターンの減速機問題ですが、数値が異なります。減速比8、効率0.95の条件で、負荷側の回転速度nL・軸トルクTL・軸入力PLを求めます。
減速比a=nm/nLよりnLを求め、負荷の軸トルクは減速比に比例してTL=a×Tm×ηで求め、最後にPL=TLωLで軸入力を求めます。
ほぼ同じ問題が 【機械】平成20年度A問題11 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和5年度上期 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【電動機応用】 令和5年度上期 A問題11
図に示すように,電動機が減速機と組み合わされて負荷を駆動している。このときの電動機の回転速度 nm が1150〔min-1〕,トルク Tm が100〔N・m〕であった。減速機の減速比が8,効率が0.95のとき,負荷の回転速度 nL〔min-1〕,軸トルク TL〔N・m〕及び軸入力 PL〔kW〕の値として,最も近いものを組み合わせたのは次のうちどれか。
nL〔min-1〕 TL〔N・m〕 PL〔kW〕 (1) 136.6 11.9 11.4 (2) 143.8 760 11.4 (3) 9200 760 6992 (4) 143.8 11.9 11.4 (5) 9200 11.9 6992
出題のポイント:選択肢は3つの値の組合せ
nL・TL・PL の3つを組み合わせた選択肢——1つ確実に出せれば、そこから絞り込めます。最も簡単なのは nL です。
★割るだけ
これで(1)(3)(5)が落ちます——残るのは(2)と(4)。次にトルクを見れば決着します。
| 量 | 減速機を通ると | 効率の影響 | 理由 |
| 回転速度 n | 1/a になる | ★受けない | 歯数比で機械的に決まる |
| 動力 P | そのまま | ★η倍に減る | 損失のぶんだけ失われる |
| トルク T | a 倍になる | ★η倍に減る | P=ωT のつじつま合わせ |

トルクと軸入力を求める
8倍してから効率0.95
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⚠️ よくある間違い
(4)は TL=11.9 としている——トルクを減速比で割ってしまった値(100×0.95/8)です。速度が下がるならトルクは上がる——逆方向に動くことを押さえておけば防げます。
(1)の nL=136.6は効率まで速度に掛けてしまった値(143.75×0.95)——★効率は速度には効きません。これは本問でとくに用意された引っかけです。
(3)(5)の9200は減速比を掛けた値(1150×8)です。
なぜ効率は速度に効かないのか
減速機の減速比は、歯車の歯数の比です。歯数は整数で決まっている——損失があろうとなかろうと、歯が1つ進めば必ず1つ分だけ回るのです。
| 回転速度 | トルク・動力 | |
| 決まり方 | 歯数比(幾何学的) | エネルギーの収支 |
| 損失の影響 | ★受けない | 受ける |
| たとえ | 変圧器の巻数比 | 変圧器の効率 |
変圧器で考えると分かりやすいでしょう。巻数比が10:1 なら、効率が何%だろうと二次電圧は一次の1/10——損失で減るのは電力(=電流側)です。
減速機もまったく同じ。速度は幾何学的に決まり、損失はトルクと動力に現れる——選択肢(1)の136.6 は、この理解を試しているのです。
減速機の種類と効率
効率0.95 という値は、どの程度の減速機を想定しているか——種類による違いを見ておきましょう。
| 形式 | 1段あたりの効率 | 特徴 |
| 平歯車・はすば歯車 | 97〜99 % | 高効率だが1段の減速比は小さい |
| 遊星歯車 | 95〜98 % | 小型で大きな減速比 |
| ウォームギヤ | ★50〜80 % | 1段で大減速。セルフロックする |
ウォームギヤの効率が低いのは、歯がすべりながら接触するからです。その代わり逆方向には回らない(セルフロック)——電源が切れても荷が落ちないという安全上の利点があります。
効率0.95 なら遊星歯車か、平歯車の2段程度——一般的な産業用減速機の水準だと言えます。ウォームなら0.6 程度になり、問題の数値とは合いません。
⏱️ 本番での進め方
① まず nL=1150/8=143.8。これで3肢が落ちる。
② TL=0.95×8×100=760。★割らずに掛ける。
③ ωL=2π×143.75/60=15.05 rad/s。
④ PL=760×15.05=11.4 kW。Pm×0.95 で検算。
💡 覚え方
「効率は速度に効かない」——速度は歯数比で決まる幾何学的な量。変圧器の巻数比と同じだと思えば、選択肢(1)の罠にかかりません。
出題履歴:平成20年度と数値も選択肢も完全に同一
本問は平成20年度 A問題11とまったく同じ問題です(電動機応用:減速機の回転速度・トルク・軸入力)。数値も選択肢の並びも同じで、正解も同じ (2)——15年ぶりの完全再出題でした。
減速比6・効率0.96 の版が令和6年度下期と令和7年度下期にあります(令和6年度下期A問題11/令和7年度下期A問題11)。4問とも解き方は完全に同じ——確実な得点源です。

減速比と電動機の選定
減速比をいくつにするかは、設計上の重要な選択です。同じ負荷を駆動するのでも、減速比を変えれば電動機が変わります。
負荷側が143.8 min-1・760 N·m を必要としている——この条件を満たす組合せはいくつもあるのです。
| 減速比 a | 電動機の回転速度 | 電動機のトルク | 電動機の大きさ |
| 4 | 575 min-1 | 200 N·m | 大きい |
| 8(本問) | 1150 min-1 | 100 N·m | 標準的 |
| 16 | 2300 min-1 | 50 N·m | 小さい |
減速比を大きくすれば電動機は小さくて済みます——ただし高速回転になる。軸受の寿命や騒音、振動が問題になってきます。
1150 min-1 という数値は、4極誘導電動機の定格回転速度です(同期速度1500 min-1、すべり約4 %の場合は1440 ですが、6極なら同期1000——実際には4極でやや大きなすべりを想定した値と読めます)。汎用電動機の標準的な回転速度に合わせて減速比が選ばれているわけです。
「減速比を先に決める」のではなく「使いたい電動機から逆算する」——これが実際の設計の順序です。市販の標準品を使えるように条件を合わせるほうが、安く早く仕上がるからです。
まとめ
| nL=nm/a | 1150/8≒143.8min⁻¹ |
| TL=a・Tm・η | 8×100×0.95=760N・m |
| PL=TLωL | ≒11.4kW |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・電動機応用1(令和6年度下期A問題11):【機械】令和6年度下期A問題11
・電動機応用3(平成20年度A問題11):【機械】平成20年度A問題11

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