今回は令和7年度上期 機械科目 B問題16を解説します。可逆チョッパ(IGBT Q1・Q2)で他励直流機を駆動する問題で、電動機として動かすときのオン時間(a)と、回生制動時の電機子電圧(b)を求めます。
Q1をオンオフ制御する降圧チョッパ動作では V1=E×(TON/T)。Q2をオンオフ制御する昇圧チョッパ動作(回生)では V1=(TON+TOFF)/TOFF×V の関係式を使います。
ほぼ同じ問題が 【機械】平成26年度B問題16 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和7年度上期 機械科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題16
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 令和7年度上期 B問題16
図のように他励直流機を直流チョッパで駆動する。電源電圧はE=200〔V〕で一定とし,直流機の電機子電圧をVとする。IGBT Q1及びQ2をオンオフ動作させるときのスイッチング周波数は500Hzであるとする。なお,本問では直流機の定常状態だけを扱うものとする。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)この直流機を電動機として駆動する場合,Q2をオフとし,Q1をオンオフ制御することで,Vを調整することができる。電圧V1の平均値が150Vのとき,1周期の中でQ1がオンになっている時間の値〔ms〕として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)1.75 (2)1.50 (3)1.25 (4)1.00 (5)0.7〔ms〕
(b)Q1をオフしてQ2をオンオフ制御することで,電機子電流の向きを(a)の場合と反対にし,直流機に発電動作(回生制動)をさせることができる。この制御において,スイッチングの1周期の間でQ2がオンになっている時間が0.4msのとき,この直流機の電機子電圧Vの値〔V〕として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)1000 (2)250 (3)200 (4)160 (5)40〔V〕

出題のポイント:同じ回路が降圧にも昇圧にもなる
Q1を制御すれば降圧チョッパ、Q2を制御すれば昇圧チョッパ——1つの回路が2つの顔をもつのが可逆チョッパです。
| (a) 電動運転 | (b) 回生制動 | |
| 制御するIGBT | Q1 | Q2 |
| オフに固定するIGBT | Q2 | Q1 |
| 回路としての働き | 降圧チョッパ | 昇圧チョッパ |
| エネルギーの向き | 電源 → 直流機 | 直流機 → 電源 |
| 電機子電流の向き | 正 | 逆 |
電機子電圧Vの向きは変わりません。変わるのは電流の向きだけ——電圧×電流の符号が反転するので、電力の向きが逆になるのです。
直流機側から見れば、電動機と発電機の切り替えです。逆起電力より電機子電圧が高ければ電流が流れ込んで電動機、低ければ電流が出ていって発電機——チョッパで電機子電圧を調整することで、どちらにもできるわけです。


(a) Q1のオン時間を求める
スイッチング周波数500 Hz
—
通流率0.75
(b) 回生時の電機子電圧——ここが本問の山場
与えられているのは「Q2がオンになっている時間0.4 ms」。ところが昇圧チョッパの式に入るのはオフ時間です——この一手間が本問の難しさのすべてです。
なぜオフ時間なのか——昇圧チョッパでは、スイッチがオフの期間にエネルギーが高圧側へ送られるからです。オン中はリアクトルに蓄えているだけで、電源へは何も流れません。
★与えられた0.4 ms はオン時間
—
—

⚠️ よくある間違い
(5) 40 Vは0.4 ms をそのまま代入した値(200×0.4/2)——オンとオフを取り違えたときに出る数字です。
(1) 1000 Vは200×2/0.4——式を逆向きに使った場合。電源電圧200 V を超える答えが出た時点で誤りだと気づけます。
回生できる条件
回生制動が成立するには条件があります。直流機が発電した電力を、電源側が受け取れることです。
| 条件 | 成立するか | 理由 |
| 電源が他の負荷にもつながっている | する | 返した電力を他が消費する |
| 電源が蓄電池 | する | 充電される |
| 電源がダイオード整流器だけ | ★しない | 電流を逆向きに流せない |
ダイオード整流器で作った直流電源には、電力を返せません——ダイオードは一方向にしか流せないからです。行き場のない電力はコンデンサに溜まり、直流電圧が上がってしまう。
だから汎用インバータでは、回生時に抵抗で熱として捨てる(回生制動抵抗)か、電源へ返せる回生コンバータを追加する——どちらかの対策を取ります。電気鉄道の回生失効も、まったく同じ問題です。
⏱️ 本番での進め方
① T=1/500=2.0 ms をまず出す。
②(a) 通流率150/200=0.75 →2.0×0.75=1.50 ms。
③(b) 回生は昇圧。★式に入るのは TOFF=2.0−0.4=1.6 ms。
④ 答えは必ず200 V より低い。超えたら式の向きが逆。
💡 覚え方
「電動は降圧でオン時間、回生は昇圧でオフ時間」——使う時間が違うのが引っかけどころ。どちらも電機子側が低圧という一点を押さえれば、式の向きを間違えません。
出題履歴:平成26年度と同一問題(答えの番号が逆順)
本問は平成26年度 B問題16と回路も数値も全く同じです(パワエレ:可逆チョッパの電動動作と回生動作)。違うのは選択肢の並び順だけです。
| 平成26年度 問16 | 令和7年度上期 問16(本問) | |
| (a)の選択肢 | 0.75/1.00/1.25/1.50/1.75 | 1.75/1.50/1.25/1.00/0.7(ほぼ逆順) |
| (a)の正解 | (4) 1.50 | (2) 1.50 |
| (b)の正解 | (2) 160 V | (4) 160 V |
(a)と(b)で正解の番号がちょうど入れ替わっている——「(4)(2)」が「(2)(4)」になったわけです。番号で覚えることの危うさが、これ以上ないほどはっきり出た例だと言えます。

直流機側から見た電圧の関係
チョッパ側からは通流率で電機子電圧が決まりますが、直流機側にも電圧の関係式があります。両者を突き合わせると、何が起きているかが見えてきます。
| 電動運転 | 回生制動 | |
| V と Ea の大小 | V > Ea | V < Ea |
| 電機子電流 | 機械へ流れ込む | 機械から流れ出す |
| トルク | 回転方向と同じ(加速) | 回転方向と逆(制動) |
回転数が同じなら Ea は同じです。チョッパで V を Ea より下げた瞬間、電流の向きが反転して制動に変わる——機械的な操作をいっさいせずに、電圧の調整だけでブレーキがかかるのです。
これが電気ブレーキの利点です。摩擦部品が減らないので保守が軽く、しかもエネルギーを回収できる——電気鉄道でも電気自動車でも、制動の主役は電気ブレーキになっています。
まとめ
| T=1/f | 2ms |
| (a)TON | 1.50ms |
| 回生時TOFF | 1.6ms |
| (b)V | 160V |
| 答え | (a)-(2),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・昇圧・降圧チョッパの出力電圧比較:【機械】平成28年度A問題9
・昇圧チョッパの磁束時間積:【機械】令和元年度B問題16

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