今回は平成25年度 機械科目 B問題16を解説します。パルス幅変調制御(PWM制御)によって50〔Hz〕の交流電圧を出力するインバータで、基本波成分の実効値(a)と高調波を含めた実効値(b)を求める問題です。
基本波振幅は VA=VB=(VS/VC)×(Vd/2)。VA-B=VA+VB が最大値になるので、実効値は√2で割ります。高調波を含む実効値は、電圧を出力している時間の合計 Ts から Vrms=√(Ts/5)×Vd で求めます。
平成25年度 機械科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題16
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成25年度 B問題16
図は,パルス幅変調制御(PWM制御)によって50〔Hz〕の交流電圧を出力するインバータの回路及びその各部電圧波形である。直流の中点Mからみて端子A及びBに発生する瞬時電圧をそれぞれ vA〔V〕及び vB〔V〕とする。端子AとBとの間の電圧 vA-B=vA−vB〔V〕に関する次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)vA〔V〕及び vB〔V〕の50〔Hz〕の基本波成分の振幅 VA〔V〕及び VB〔V〕は,それぞれ (VS/VC)×(Vd/2)〔V〕で求められる。ここで,VC〔V〕は搬送波(三角波)vC〔V〕の振幅で10〔V〕,VS〔V〕は信号波(正弦波)vsA〔V〕及び vsB〔V〕の振幅で9〔V〕,Vd〔V〕は直流電圧200〔V〕である。vA-B〔V〕の50〔Hz〕基本波成分の振幅は VA-B=VA+VB〔V〕となる。vA-B〔V〕の基本波成分の実効値〔V〕の値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)64 (2)90 (3)127 (4)141 (5)156〔V〕
(b)vA-B〔V〕は,高調波を含んでいるため,高調波も含めた実効値 Vrms〔V〕は,小問(a)で求めた基本波成分の実効値よりも大きい。波形が5〔ms〕ごとに対称なので,実効値は最初の5〔ms〕の区間で求めればよい。5〔ms〕の区間で電圧を出力している時間の合計値を Ts〔ms〕とすると実効値 Vrms〔V〕は次の式で求められる。
Vrms = √((Ts/5)×Vd2) = √(Ts/5)×Vd〔V〕
実効値 Vrms〔V〕の値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)88 (2)127 (3)141 (4)151 (5)163〔V〕

出題のポイント:基本波の実効値と全体の実効値は違う
PWM波形には、狙って作った50 Hz の基本波と、スイッチングで生じた高調波が混ざっています。(a)は基本波だけの実効値、(b)は高調波も含めた全体の実効値——まったく別の量を問うていることをまず押さえましょう。
| (a) 基本波の実効値 | (b) 高調波込みの実効値 | |
| 何を測るか | 50 Hz 成分だけ | 波形そのもの |
| 求め方 | 振幅を √2 で割る | 通電時間の割合から計算 |
| 大小関係 | 小さい | ★必ず大きい |
高調波を含むぶん、全体の実効値は必ず基本波より大きくなります——問題文も「基本波成分の実効値よりも大きい」と明記しています。(b)の答えが(a)より小さければ、その時点で誤りだと分かります。


(a) 基本波の実効値
変調率0.9、直流200 V
AとBが逆位相なので足し算になる
180は最大値。√2 で割る
⚠️ よくある間違い
(5) 156 Vや(4) 141 Vを選ぶ誤りが起こりがちです。180 をそのまま答えれば選択肢にありませんが、90×√2=127 と90/√2=64 を取り違えると(1)に落ちます。「振幅を √2 で割ると実効値」——向きを固定して覚えてください。
(b) 高調波を含めた実効値
PWM波形は、電圧が出ている期間と0の期間の繰り返しです。出ている間は ±Vd、出ていない間は0——だから実効値の2乗は「Vd2×通電時間の割合」になります。
図から4つのパルス幅を読む
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選択肢の151に一致

2つの実効値から、ひずみ率も計算できます。ひずみ率=\( \sqrt{V_{rms}^{2}-V_1^{2}}/V_1=\sqrt{151^{2}-127^{2}}/127\fallingdotseq 0.63 \)——基本波の63 %もの高調波が含まれていることになります。
これがPWM波形の代償です。だから出力にはフィルタが必要——スイッチング周波数を上げれば高調波の次数も上がり、フィルタで除去しやすくなります。
⏱️ 本番での進め方
①(a) 変調率0.9×(Vd/2)=90 V が各端子の振幅。線間は2倍の180 V。
② 180は最大値。√2 で割って127 V。
③(b) 通電時間の合計Ts を図から読み、√(Ts/5)×Vd。
④ (b)は必ず(a)より大きい。小さければ計算違い。
💡 覚え方
「基本波は振幅÷√2、全体は通電割合の平方根×Vd」——2つの実効値は別物。そして「全体のほうが必ず大きい」——この大小関係が最良の検算になります。

なぜ搬送波の周波数を高くするのか
本問で計算した151 V と127 V の差、つまり高調波成分をどう減らすか——それがPWM制御の設計課題です。鍵を握るのが搬送波(キャリア)の周波数になります。
| 搬送波周波数 | 高調波の次数 | フィルタ | スイッチング損失 |
| 低い | 低次に出る | 大型が必要 | 小さい |
| 高い | 高次へ追いやられる | 小型で済む | ★大きくなる |
PWM波形に含まれる高調波は、搬送波の周波数の付近に集中して現れます。搬送波を高くすれば、高調波も高い周波数へ移動する——周波数が高いほどリアクトルやコンデンサは小さくて済むので、フィルタを小型化できるのです。
ところが、スイッチング回数が増えればそのたびに損失が発生します。1回の切り替えごとに電圧と電流が重なる瞬間があり、そこで熱になる——回数に比例して損失が増えるわけです。
だから搬送波周波数は「フィルタの大きさ」と「損失・発熱」の妥協点で決まります。大容量の装置ほど損失を嫌って低め、小容量の装置ほど小型化を優先して高め——用途によって数百Hzから数十kHzまで幅があるのはこのためです。
SiCやGaNといった次世代デバイスが期待されているのも、スイッチング損失が小さく、高い周波数でも発熱が抑えられるから。フィルタを小さくしながら効率も落とさない——従来のトレードオフを緩める技術として注目されています。
まとめ
| VA=VB | 90V |
| VA-B最大値 | 180V |
| (a)基本波実効値 | ≒127V |
| Ts | 2.84ms |
| (b)Vrms | ≒151V |
| 答え | (a)-(3),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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