今回は平成29年度 機械科目 B問題16を解説します。サイリスタ2個を逆並列接続した単相交流電力調整回路で、負荷による波形の違い(a)と制御遅れ角を変えたときの消費電力の倍率(b)を求める問題です。
純抵抗負荷は電圧と電流が同相(波形1)、誘導性負荷は電流がインダクタンスの影響で0からゆっくり増える(波形2)。消費電力は VL2 に比例するので、実効値の2乗比で倍率を求めます。
平成29年度 機械科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題16
電験3種 機械科目 【パワーエレクトロニクス】 平成29年度 B問題16
図1に示す単相交流電力調整回路が制御遅れ角 α〔rad〕で運転しているときの動作を考える。
正弦波の交流電源電圧は vS,負荷は純抵抗負荷又は誘導性負荷であり,負荷電圧を vL,負荷電流を iL とする。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)図2の波形1〜3のうち,純抵抗負荷の場合と誘導性負荷の場合とで発生する波形の組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
純抵抗負荷 誘導性負荷 (1) 波形1 波形2 (2) 波形1 波形3 (3) 波形2 波形1 (4) 波形2 波形3 (5) 波形3 波形2 (b)交流電源電圧 vS の実効値を VS として,純抵抗負荷の場合の負荷電圧 vL の実効値 VL は,VL=VS√(1−α/π+sin2α/2π) で表される。制御遅れ角を α1=π/2〔rad〕から α2=π/4〔rad〕に変えたときに,負荷の抵抗で消費される交流電力は何倍となるか,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.550 (2)0.742 (3)1.35 (4)1.82 (5)2.00


出題のポイント:負荷の種類で電流波形が変わる
同じ交流電力調整回路でも、負荷が抵抗か誘導性かで波形がまったく違います。電圧は同じでも、電流の立ち上がり方が変わる——これが(a)の判定点です。
| 純抵抗負荷 | 誘導性負荷 | |
| 電圧と電流の位相 | 同相 | 電流が遅れる |
| 点弧直後の電流 | いきなり立ち上がる | 0から徐々に増える |
| 電流が0になるタイミング | 電圧が0になるとき(π) | 電圧が0を過ぎてから |
| 導通期間 | α から π まで | α から π を超えて延びる |
抵抗負荷では、電圧をかけた瞬間にオームの法則どおりの電流が流れます——だから電流波形は電圧波形と相似。切り取られた正弦波が、そのまま電流の形になります。
誘導性負荷ではリアクトルが電流の急変を妨げます——点弧しても電流は0から徐々にしか増えません。そして電圧が0になっても電流はまだ流れ続けるので、導通期間が半サイクルを超えて延びます。



(a) 波形を対応させる
純抵抗負荷は電圧と電流が同じ形(波形1)、誘導性負荷は電流がなだらかに立ち上がる形(波形2)——「電流の立ち上がりが急か緩やかか」で見分けられます。
☝️ ひっかけの作り方:誘導性負荷では、サイリスタがオフするタイミングも遅れます。電流が0になるまでオフできないからです——だから導通期間が α から π を超えて続く。この「はみ出し」が波形の特徴になります。
(b) 電力の倍率を求める
抵抗で消費される電力は、電圧の実効値の2乗に比例します。だから電力の比は、実効値の2乗の比——与えられた式の根号の中身をそのまま比べればよいことになります。
sin π=0
sin(π/2)=1
分母の1/2 で割る
選択肢の1.82に一致

⚠️ よくある間違い
(3) 1.35は電圧の実効値の比(√1.82=1.35)です。問われているのは電力の倍率——電圧の比を答えてしまうのが典型的な誤りです。
(1) 0.550は1.82 の逆数——α1 と α2 を逆にしたときの値になります。制御角を小さくすれば電力は増えるのですから、1より大きい答えになるはずです。
根号の中身が「導通の割合」を表している
式の中身 1−α/π+sin2α/(2π) は、何を表しているのでしょうか。これは「切り取られずに残った部分の割合」にあたります。
| α | 1−α/π+sin2α/(2π) | VL/VS | 電力の割合 |
| 0 | 1.000 | 1.000 | 100 % |
| π/4(45°) | 0.909 | 0.953 | 91 % |
| π/2(90°) | 0.500 | 0.707 | 50 % |
| 3π/4(135°) | 0.091 | 0.302 | 9 % |
| π(180°) | 0 | 0 | 0 % |
α=90°でちょうど電力が半分になります。45°ではまだ91 %も残っている——点弧を少し遅らせただけでは、あまり電力が減らないのです。
本問の1.82倍という答えも、この表から読めます——91 %÷50 %=1.82。割合の比を取っているだけだと分かれば、計算の意味がはっきりします。
⏱️ 本番での進め方
①(a) 電流の立ち上がりが急なら抵抗、緩やかなら誘導性。
②(b) 電力は VL2 に比例。根号の中身をそのまま比べる。
③ α=π/2 で1/2、α=π/4 で3/4+1/(2π)。比は3/2+1/π≒1.82。
④ 制御角を小さくすれば電力は増える。1より大きい答えになるはず。
💡 覚え方
「電力は実効値の2乗に比例、だから根号の中身がそのまま比」——平方根を計算する必要すらありません。そして「α=90°で電力半分」——この基準点を覚えておくと検算に使えます。

誘導性負荷では制御できる範囲が狭まる
(a)で見たとおり、誘導性負荷では電流の導通期間が延びます。このことは、制御できる範囲にも影響します。
負荷の力率角をθとすると、制御角αをθより小さくしても意味がありません——電流がまだ流れている間に点弧しようとしても、すでに導通しているからです。
| 制御角 α | 純抵抗負荷 | 誘導性負荷(力率角θ) |
| α < θ | 制御できる | ★制御できない(全波通電と同じ) |
| α = θ | 制御できる | ちょうど全波通電 |
| α > θ | 制御できる | 制御できる |
つまり誘導性負荷では、制御できるのは α>θ の範囲だけです。力率が悪いほどθが大きく、制御範囲が狭くなる——純誘導負荷(θ=90°)なら、90°より大きい範囲しか使えません。
電動機のような誘導性負荷を交流電力調整装置で制御する場合、この制約を考えて制御角の範囲を設計します——本問の(a)で見た波形の違いが、そのまま設計条件になるのです。
まとめ
| 純抵抗負荷 | 波形1 |
| 誘導性負荷 | 波形2 |
| (a) | (1) |
| VL1 | VS/√2 |
| VL2 | VS√(3/4+1/2π) |
| 倍率n | 3/2+1/π≒1.82 |
| 答え | (a)-(1),(b)-(4) |
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