今回は令和3年度 機械科目 A問題7を解説します。直流分巻・かご形誘導・巻線形誘導・同期の各電動機で、始動電流を抑える工夫を問う穴埋め問題です。
直流分巻=直列の始動抵抗、かご形=Y-△始動、巻線形=二次抵抗、同期=始動電動機。始動電流の抑え方を電動機ごとに整理します。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電源の電圧や周波数が一定の条件下,各種電動機では,始動電流を抑制するための種々の工夫がされている。
a. 直流分巻電動機:電機子回路に(ア)抵抗を接続して電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇するに従って抵抗値を減少させる。
b. 三相かご形誘導電動機:(イ)結線の一次巻線を(ウ)結線に接続を変えて電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇すると(イ)結線に戻す。
c. 三相巻線形誘導電動機:(エ)回路に抵抗を接続して電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇するに従って抵抗値を減少させる。
d. 三相同期電動機:無負荷で始動電動機(誘導電動機や直流電動機)を用いて同期速度付近まで加速する。次に,界磁を励磁して(オ)発電機として,三相電源との並列運転状態を実現する。そののち,始動用電動機の電源を遮断して同期電動機として運転する。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 直列 △ Y 二次 同期 (2) 並列 Y △ 一次 誘導 (3) 直列 Y △ 二次 誘導 (4) 並列 Y △ 一次 同期 (5) 直列 △ Y 二次 誘導
出題のポイント:4機種の始動法を1枚に並べる
この問題は、機械科目で学ぶ4種類の電動機の始動法を横断しています。どれも「始動電流を抑える」という同じ目的ですが、手段は機械の構造によって決まります。
| 電動機 | どこに手を入れるか | 方法 | 加速後どうするか |
| 直流分巻 | 電機子回路 | 直列に始動抵抗 | 抵抗を段階的に減らす |
| 三相かご形誘導 | 一次回路 | Δ結線をYに変える | Δに戻す |
| 三相巻線形誘導 | 二次回路 | 外部抵抗を接続 | 抵抗を減らして短絡 |
| 三相同期 | 別の機械を使う | 始動電動機で同期速度付近まで | 界磁を励磁して並列投入 |
前の3つは「電圧を下げる」か「抵抗を入れる」か——どちらも電動機自身の中で完結しています。同期電動機だけが別の機械の助けを借りる——始動トルクがそもそも出ないからです。

空欄を確定する
(ア):直流分巻は電機子回路に直列抵抗
始動の瞬間は逆起電力がゼロですから、電源電圧がまるごと電機子抵抗にかかって大電流が流れます。これを抑えるには電機子回路に直列に抵抗を入れる——(ア)=直列です。
「並列」では電流を制限できません。並列に抵抗をつないでも、電機子に流れる電流は変わらない——むしろ全体の電流が増えてしまいます。
(イ)(ウ):Δ結線をYに変える
問題文は「(イ)結線の一次巻線を(ウ)結線に接続を変えて」「回転速度が上昇すると(イ)結線に戻す」と書いています。戻る先が運転時の結線ですから、(イ)=Δ、(ウ)=Yです。
Y-Δ始動は「始動時Y、運転時Δ」——Yのほうが相電圧が1/√3 に下がるので始動に使います。順序を逆に読むと(2)(3)(4)へ逸れます。
(エ):巻線形は二次回路
巻線形の特権は、スリップリングで二次回路を外へ引き出せることです。(エ)=二次。「一次回路」に抵抗を入れるのは電圧を下げるだけで、比例推移は使えません。
(オ):界磁を励磁すれば「同期発電機」になる
ここが本問で最も面白いところです。始動電動機で同期速度付近まで回した状態で界磁を励磁すると、その機械は電圧を発生します——つまり同期発電機として振る舞っているのです。(オ)=同期。


「発電機として並列してから、電動機に切り替える」
(オ)の手順を、もう少し丁寧に追ってみましょう。始動電動機法は、じつは並行運転の手順そのものです。
| 段階 | その機械の役割 | 何をしているか |
| ① 始動電動機で加速 | ただの回転体 | 同期速度付近まで回す |
| ② 界磁を励磁 | 同期発電機 | 電圧が発生する |
| ③ 電源に並列投入 | 同期発電機 | 電圧・周波数・位相を合わせて遮断器を閉じる |
| ④ 始動電動機を切る | 同期電動機 | 負荷を受けて電動機として回り始める |
③の段階では、並行運転の3条件(電圧の大きさ・周波数・位相)を満たす必要があります。同期検定器で確認してから投入する——発電機を系統につなぐときとまったく同じ手順です。
並列に入ったあと、始動電動機の電源を切ると、今度は負荷側からトルクを要求される側に回ります——発電機から電動機へ、そのまま切り替わるのです。
同期機は発電機にも電動機にもなれる——この性質を使いこなしたのが始動電動機法だと言えます。「同期発電機として並列運転状態を実現する」という問題文の表現は、この事情を正確に述べています。
なぜ加速につれて抵抗を減らすのか
直流分巻(a)と巻線形誘導(c)に共通する「回転速度が上昇するに従って抵抗値を減少させる」——この操作の意味も押さえておきましょう。
| 直流分巻電動機 | 巻線形誘導電動機 | |
| 加速すると何が変わるか | 逆起電力 E が大きくなる | 滑り s が小さくなる |
| その結果 | Ia=(V−E)/R が減る | 最適な二次抵抗が小さくなる |
| 抵抗を減らす理由 | 電流が下がりすぎてトルクが不足するから | 山の頂上で加速を続けるため |
| 最終状態 | 抵抗をすべて短絡 | 二次側を短絡 |
どちらも「電流(トルク)を一定の範囲に保ちながら加速する」のが狙いです。抵抗を入れっぱなしでは、途中で加速が止まってしまいます——だから段階的に減らしていくのです。
始動抵抗器が「段数」を持っているのは、この操作を段階的に行うためです。連続的に減らせれば理想的ですが、接点で切り替える以上は段階になる——段数が多いほど滑らかに加速できます。
⏱️ 本番での進め方
① 4機種の始動法を1枚で覚える:直列抵抗/Y-Δ/二次抵抗/始動電動機。
② Y-Δは「始動時Y、運転時Δ」。戻る先が運転時の結線。
③ 巻線形は二次回路。一次に抵抗を入れても比例推移は使えない。
④ 同期機は「発電機として並列してから電動機になる」。
💡 覚え方
「直流分巻=直列抵抗、かご形=Y-Δ、巻線形=二次抵抗、同期=始動電動機」。前の3つは自分の中で完結、同期機だけ別の機械が要る(始動トルクが出ないから)。同期機は界磁を励磁すれば発電機として並列でき、始動電動機を切れば電動機になる。抵抗を減らすのは加速中もトルクを保つため。
⚠️ よくある間違い
(イ)(ウ)を逆にするのが最頻の誤りです。問題文の「回転速度が上昇すると(イ)結線に戻す」を読めば、(イ)が運転時の結線=Δだと分かります。もう一つは(エ)に「一次」——巻線形の長所は二次回路を外へ引き出せることです。
直流分巻の始動抵抗は、なぜ電機子側だけなのか
直流分巻電動機には、電機子回路と界磁回路の2つがあります。始動抵抗を入れるのは電機子側だけ——界磁側に入れてはいけません。その理由を確かめておきましょう。
| 抵抗を入れる場所 | 磁束 φ | 始動電流 | 始動トルク | 判定 |
| 電機子回路(正解) | 変わらない | 抑えられる | 電流に比例して下がるだけ | ○ |
| 界磁回路 | 減る | 抑えられない(むしろ E が下がって増える) | 大きく下がる(φ も Ia も不利) | ✗ |
界磁抵抗を増やすと磁束が減ります。磁束が減れば逆起電力 E=kφN も小さくなる——すると Ia=(V−E)/Ra はかえって大きくなってしまいます。
しかもトルクは T=kφIa ですから、磁束が減った分だけ不利です。電流を抑えたいのに増え、トルクも出ない——まったく逆効果だということになります。
だから始動時には、界磁抵抗をむしろ最小にして磁束を最大にします。磁束が大きければ、同じ電流でも大きなトルクが出る——「界磁は強く、電機子は抵抗で絞る」というのが直流機の始動の原則です。
この対比は、弱め界磁制御の話とちょうど裏返しです。速度を上げたいときは界磁を弱めるのですが、始動時は逆に界磁を強める——目的によって操作の向きが変わることを押さえておいてください。
まとめ
| (ア) | 直列 |
| (イ) | △ |
| (ウ) | Y |
| (エ) | 二次 |
| (オ) | 同期 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
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