今回は平成22年度 機械科目 A問題5を解説します。三相同期電動機の駆動・始動と、可変電圧可変周波数(VVVF)電源を問う穴埋め問題です。
励磁電流で力率を調整でき、空げきを大きくできるのが特徴。商用電源では始動トルクの確保が課題で、インバータで周波数を変えて同期速度を変えます。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
三相同期電動機は,50〔Hz〕又は60〔Hz〕の商用交流電源で駆動されることが一般的であった。電動機としては,極数と商用交流電源の周波数によって決まる一定速度の運転となること,(ア)電流を調整することで力率を調整することができ,三相誘導電動機に比べて高い力率の運転ができることなどに特徴がある。さらに,誘導電動機に比べて(イ)を大きくできるという構造的な特徴などがあることから,回転子に強い衝撃が加わる鉄鋼圧延機などに用いられている。
しかし,商用交流電源で三相同期電動機を駆動する場合,(ウ)トルクを確保する必要がある。近年,インバータなどパワーエレクトロニクス装置の利用拡大によって可変電圧可変周波数の電源が容易に得られるようになった。出力の電圧と周波数がほぼ比例するパワーエレクトロニクス装置を使用すれば,(エ)を変えると(オ)が変わり,このときのトルクを確保することができる。
さらに,回転子の位置を検出して電機子電流と界磁電流をあわせて制御することによって幅広い速度範囲でトルク応答性の優れた運転も可能となり,応用範囲を拡大させている。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる語句として正しいものを組み合わせたのはどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 励磁 固定子 過負荷 周波数 定格速度 (2) 励磁 固定子 始動 電圧 定格速度 (3) 電機子 空げき 過負荷 電圧 定格速度 (4) 電機子 固定子 始動 周波数 同期速度 (5) 励磁 空げき 始動 周波数 同期速度
出題のポイント:同期電動機の長所と短所、そしてインバータ
この問題文は、同期電動機の「良いところ」「困るところ」「解決策」を順に述べています。物語の流れをつかめば、5つの空欄は自然に埋まります。
| 段落 | 述べていること | 空欄 |
| 前半 | 長所——速度が一定、力率を調整できる、空隙を大きくできる | (ア)(イ) |
| 中盤 | 短所——商用電源では始動トルクの確保が課題 | (ウ) |
| 後半 | 解決策——インバータで周波数を変える | (エ)(オ) |

空欄を確定する
(ア)=励磁。力率を調整できるのは、界磁(励磁)電流を独立に変えられるからです。「電機子電流」は負荷しだいで決まる量で、こちらを操作して力率を変えることはできません。
(イ)=空げき。誘導電動機より空隙を大きくできる——これが「回転子に強い衝撃が加わる鉄鋼圧延機などに用いられる」理由につながります。
(ウ)=始動。商用電源に直接つなぐ場合の課題は始動トルクの確保です。「過負荷トルク」ではありません——問題文が「駆動する場合」と言っているので、運転に入る前の話です。
(エ)=周波数、(オ)=同期速度。インバータで周波数を変えれば同期速度そのものが変わります——Ns=120f/p。「定格速度」は固定された値で、変わる対象ではありません。


なぜ同期電動機は空隙を大きくできるのか
(イ)の「空げきを大きくできる」は、構造上の違いから来る重要な長所です。誘導電動機との対比で理解しましょう。
| 誘導電動機 | 同期電動機 | |
| 磁束を作る電流 | 固定子から送り込む(励磁電流) | 界磁巻線に流す直流 |
| 空隙を広げると | 励磁電流が増えて力率が悪化する | 界磁電流を増やせばよい(力率は別に調整できる) |
| 実際の空隙 | できるだけ狭く(小形機で0.3 mm 程度) | 広めに取れる |
| 機械的な余裕 | 小さい | 大きい |
誘導電動機は空隙を広げると、磁束を作るための励磁電流が増えます。その電流は固定子巻線を流れるので、力率が悪化し銅損も増える——だから空隙は可能な限り狭くします。
同期電動機では、磁束は界磁巻線が別回路で作ります。空隙が広くて磁気抵抗が大きくても、界磁電流を増やせば済む——しかも力率は別に調整できるので、広い空隙の代償が小さいのです。
空隙が広いことは、機械的には大きな余裕を意味します。軸受がわずかに摩耗しても、回転子が固定子に接触しにくい——問題文の「回転子に強い衝撃が加わる鉄鋼圧延機」のような、振動や衝撃の大きい用途に向く理由がここにあります。
インバータが同期電動機の弱点を消した
後半の「近年、インバータなどパワーエレクトロニクス装置の利用拡大によって」——これは同期電動機にとって決定的な変化でした。
| 商用電源で駆動 | インバータで駆動 | |
| 同期速度 | 固定(50/60 Hz で決まる) | 自由に変えられる |
| 始動 | 制動巻線か始動電動機が必要 | 低い周波数から立ち上げればよい |
| 速度制御 | できない | できる |
| 始動トルク | 確保が課題 | V/f を保てば定格トルクを出せる |
低い周波数から始めれば、同期速度も低いところから始まります。止まっている回転子でも追従できる速さから起こして、徐々に周波数を上げていけばよい——制動巻線も始動電動機も要りません。
「始動できない」という同期電動機の最大の弱点が、インバータによって消えたのです。しかも速度制御まで手に入る——誘導電動機に対する優位が一気に広がりました。
問題文の最後「回転子の位置を検出して電機子電流と界磁電流をあわせて制御する」——これがブラシレスDCモータや永久磁石同期電動機(PMSM)の駆動そのものです。エアコンや電気自動車で使われている技術が、この延長線上にあります。
⏱️ 本番での進め方
① 力率を調整するのは励磁電流——電機子電流ではない。
② (オ)は「同期速度」。定格速度は固定された値で、変わる対象ではない。
③ 空隙を大きくできるのは、磁束を界磁が別に作るから。
④ インバータなら低周波から立ち上げて始動できる。
💡 覚え方
「同期電動機は励磁で力率を調整でき、空隙を大きくできる(衝撃に強い)。商用直入れは始動トルクが課題 → VVVFで周波数を変え同期速度を可変」。空隙を広げられるのは磁束を界磁が別回路で作るからで、誘導機は励磁電流が増えて力率が悪化するので狭くするしかない。
⚠️ よくある間違い
(ア)に「電機子」を選ぶのが典型です。力率を変えられるのは界磁(励磁)電流を独立に操作できるから——電機子電流は結果として決まる量です。もう一つは(オ)に「定格速度」——周波数を変えて変わるのは同期速度 Ns=120f/p です。
鉄鋼圧延機のような衝撃負荷になぜ向くのか
問題文が挙げている鉄鋼圧延機は、電動機にとって非常に過酷な負荷です。なぜ同期電動機が選ばれるのかを、負荷の性質から見ていきましょう。
| 場面 | 負荷トルク | 電動機に起きること |
| 材料を噛み込む瞬間 | 急激に立ち上がる(衝撃) | 大きなトルクを瞬時に要求される |
| 圧延中 | 大きいまま持続 | 定常的な大トルク |
| 材料が抜けた瞬間 | 急激にゼロへ | 加速しようとする |
この繰り返しが、1日に何千回も起きます。誘導電動機なら、負荷が変わるたびに滑りが変わって速度が上下します——圧延の精度に影響します。
同期電動機は速度が変わりません。負荷角が開いたり戻ったりするだけで、回転速度は同期速度のまま——これが圧延機に向く第一の理由です。
第二の理由が、問題文の(イ)「空げきを大きくできる」です。衝撃で回転子がわずかに振れても、固定子に接触しにくい——機械的な余裕が大きいのです。誘導電動機は空隙を0.3 mm 程度まで詰めるので、こうした用途では不安があります。
さらに、はずみ車(フライホイール)を軸に付けて衝撃を吸収するという手も使われます。速度が一定に保たれる同期電動機なら、はずみ車の効果も計算しやすい——複数の長所が組み合わさって、この用途に落ち着いていると言えます。
そして力率改善の効果もあります。製鉄所には大形の誘導電動機がたくさんあるので、同期電動機を過励磁で運転すれば工場全体の力率が上がる——大容量であるほど、その効果も大きくなります。
まとめ
| (ア) | 励磁 |
| (イ) | 空げき |
| (ウ) | 始動 |
| (エ) | 周波数 |
| (オ) | 同期速度 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同期電動機の始動方法:【機械】平成25年度A問題5
・回転界磁形の始動:【機械】令和6年度上期A問題5

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