今回は平成25年度 機械科目 A問題5を解説します。三相同期電動機の始動方法(自己始動法・始動電動機法)を問う穴埋め問題です。
制動巻線をかご形導体に見立てて誘導トルクで始動するのが自己始動法。誘導・直流電動機で回すのが始動電動機法です。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
次の文章は,一般的な三相同期電動機の始動方法に関する記述である。
同期電動機は始動のときに回転子を同期速度付近まで回転させる必要がある。一つの方法として,回転子の磁極面に施した(ア)を利用して,始動トルクを発生させる方法があり,(ア)は誘導電動機のかご形(イ)と同じ働きをする。この方法を(ウ)法という。
この場合,(エ)に全電圧を直接加えると大きな始動電流が流れるので,始動補償器,直列リアクトル,始動用変圧器などを用い,低い電圧にして始動する。
他の方法には,誘導電動機や直流電動機を用い,これに直結した三相同期電動機を回転させ,回転子が同期速度付近になったとき同期電動機の界磁巻線を励磁し電源に接続する方法があり,これを(オ)法という。この方法は主に大容量機に採用されている。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 制動巻線 回転子導体 自己始動 固定子巻線 始動電動機 (2) 界磁巻線 回転子導体 Y-△始動 固定子巻線 始動電動機 (3) 制動巻線 固定子巻線 Y-△始動 回転子導体 自己始動 (4) 界磁巻線 固定子巻線 自己始動 回転子導体 始動電動機 (5) 制動巻線 回転子導体 Y-△始動 固定子巻線 自己始動
出題のポイント:始動法は2つ、どちらも「同期速度付近まで回してから励磁」
同期電動機は始動トルクを持ちません。だから「何か別の手段で同期速度付近まで回してから、界磁を入れて引き込む」——どの始動法も、この形をしています。
| 方法 | 何で回すか | 適用 | 特徴 |
| 自己始動法 | 制動巻線(かご形として働く) | 中小容量 | 別の機械が要らない。始動電流が大きい |
| 始動電動機法 | 誘導電動機や直流電動機を直結 | 大容量 | 始動電流を抑えられるが、別の機械が要る |
問題文はこの2つを順に説明しています。(ア)〜(エ)が自己始動法、(オ)が始動電動機法——段落の切れ目で分けて読むと整理できます。

空欄を確定する
(ア)(イ)(ウ):制動巻線が「かご形の回転子導体」として働く
回転子の磁極面に施すのは制動巻線です。(ア)=制動巻線。これがかご形誘導電動機の「回転子導体」と同じ働きをします——(イ)=回転子導体。
別の機械を使わず自分だけで始動するので、(ウ)=自己始動法です。「Y-Δ始動」はかご形誘導電動機の始動法で、同期電動機の始動法の名前ではありません。
(エ):全電圧を加えるのは固定子巻線
電源につながっているのは固定子巻線です。(エ)=固定子巻線。そこに全電圧をいきなり加えれば、誘導電動機と同じく大きな始動電流が流れます——だから始動補償器などで電圧を下げるのです。
「回転子導体」を選んではいけません。回転子側には電源をつなぎません——(イ)ですでに使った語をここでも使わせようとする配置です。
(オ):別の電動機で回すのが始動電動機法
誘導電動機や直流電動機を直結して回す——(オ)=始動電動機法です。主に大容量機で使われます。


なぜ低い電圧で始動するのか
問題文の「始動補償器、直列リアクトル、始動用変圧器などを用い、低い電圧にして始動する」——3つとも「電圧を下げる」ための手段です。
| 方法 | どうやって電圧を下げるか | 特徴 |
| 始動補償器 | 三相単巻変圧器のタップ | 電源側の電流は k2 倍まで下がる |
| 直列リアクトル | リアクトルの電圧降下で下げる | 装置は簡単だが、電流は k 倍にしか下がらない |
| 始動用変圧器 | 専用の変圧器で低電圧を作る | 始動補償器と同じ考え方 |
いずれも、かご形誘導電動機の始動法とまったく同じ発想です。自己始動法では同期電動機が誘導電動機として振る舞っているのですから、始動法も誘導機のものがそのまま使えます。
ただし、電圧を下げれば始動トルクも下がります(T∝V2)。制動巻線が出せる誘導トルクは、もともとそれほど大きくない——だから自己始動法は、軽負荷で始動できる用途に限られます。
同期速度に「引き込む」とはどういうことか
どちらの始動法でも、最後は「界磁を励磁して同期速度に引き込む」という段階を通ります。この「引込み」が、同期電動機だけの独特な現象です。
同期速度の少し手前まで加速した状態で界磁に直流を流すと、回転子が磁極を持ちます。すると回転磁界との間に同期トルクが働き、回転子が引きずり込まれるようにして同期速度に乗ります。
| 条件 | 引込みが成功するか | 理由 |
| 同期速度に十分近い(滑り数 % 以内) | 成功する | 同期トルクが差を吸収できる |
| まだ速度が低い | 失敗する | 磁極が回転磁界に追いつけず、脱調したまま |
| 負荷が重すぎる | 失敗する | 同期トルクが負荷に負ける |
だから「同期速度付近まで回す」ことが不可欠なのです。いきなり界磁を入れても、同期速度から遠ければ引き込めません——問題文の冒頭「回転子を同期速度付近まで回転させる必要がある」は、この事情を述べています。
引込みに使えるトルクを「引入れトルク」と呼びます。負荷が重いと引込みに失敗するので、できるだけ軽負荷で始動するのが原則です——大容量機で始動電動機法が使われるのも、確実に同期速度まで持っていくためだと言えます。
⏱️ 本番での進め方
① 自己始動法=制動巻線、始動電動機法=別の機械。どちらも同期速度付近まで回す。
② 制動巻線は「かご形の回転子導体」と同じ働き。
③ 全電圧を加えるのは固定子巻線。回転子側には電源をつながない。
④ Y-Δ始動は誘導機の始動法——同期電動機の始動法の名前ではない。
💡 覚え方
「自己始動法=制動巻線(かご形導体の働き)で誘導始動。大容量は始動電動機法。全電圧は避けて低電圧始動」。どちらの方法も最後は同期速度付近で界磁を励磁して引き込む。引込みには同期速度に十分近いことと軽負荷であることが必要。
⚠️ よくある間違い
(ウ)に「Y-Δ始動」を選ぶのが典型です。Y-Δ始動はかご形誘導電動機の始動法——同期電動機で自分の制動巻線を使って始動する方法は「自己始動法」です。もう一つは(ア)に「界磁巻線」——界磁巻線は始動中は抵抗で短絡しておくもので、始動トルクを生むのは制動巻線です。
始動できない電動機を、なぜわざわざ使うのか
同期電動機は始動トルクがなく、始動のために特別な仕掛けが要ります。それでも使われるのは、誘導電動機にはない長所があるからです。
| 同期電動機 | 誘導電動機 | |
| 速度 | 負荷によらず同期速度で一定 | 負荷で数 % 変わる |
| 力率 | 界磁で自由に選べる(進みも可) | 常に遅れ |
| 効率 | 大容量では有利 | 標準 |
| 空隙 | 大きくできる(保守が楽) | できるだけ小さく |
| 始動 | 特別な仕掛けが必要 | そのまま始動できる |
| 構造 | 界磁の励磁装置が要る | かご形なら極めて単純 |
いちばんの利点は「力率を選べる」ことです。過励磁で運転すれば進み無効電力を供給でき、工場全体の力率を改善できます——誘導電動機が遅れ力率で系統に負担をかけるのと正反対です。
「速度が正確」というのも、用途によっては決定的です。誘導電動機は負荷が変われば数 % 速度が変わりますが、同期電動機は絶対に変わりません——複数の機械を同じ速度で回したい場合などに向きます。
| 用途 | なぜ同期電動機か |
| 大形コンプレッサ・送風機 | 容量が大きく、力率改善の効果も大きい |
| 圧延機・セメントミル | 大容量・連続運転で効率が効く |
| 同期調相機 | 無負荷で回して無効電力の調整だけを行う |
共通するのは「大容量で、連続して運転する」という点です。始動の手間は最初の一度だけ——その後は何か月も回り続けるのですから、始動しにくいという欠点は相対的に小さくなります。
逆に、頻繁に起動停止する用途にはまったく向きません。そのたびに始動の手順を踏む必要があるからです——「始動できない」という欠点が、用途を大きく絞っていると言えます。
まとめ
| (ア) | 制動巻線 |
| (イ) | 回転子導体 |
| (ウ) | 自己始動 |
| (エ) | 固定子巻線 |
| (オ) | 始動電動機 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・各種電動機の始動法:【機械】令和3年度A問題7
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