今回は平成30年度 機械科目 A問題7を解説します。ステッピングモータ(パルスモータ)の原理と種類を問う穴埋め問題です。
パルス数に比例して回転角度が決まり、パルスの周波数に比例して回転速度が決まります。1パルスあたりの回転角度がステップ角です。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
次の文章は,ステッピングモータに関する記述である。
ステッピングモータはパルスモータとも呼ばれ,駆動回路に与えられた(ア)に比例する(イ)だけ回転するものである。したがって,このモータはパルスを周期的に与えたとき,そのパルスの(ウ)に比例する回転速度で回転し,入力パルスを停止すれば回転子も停止する。
ステッピングモータはパルスが送られるたびに定められた角度θ〔°〕を1ステップとして回転する。この1パルス当たりの回転角度を(エ)という。
ステッピングモータには,永久磁石形,可変リラクタンス形,ハイブリッド形などがあり,永久磁石形ステッピングモータでは,無通電状態でも回転子位置を(オ)が働く特徴がある。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 周波数 回転角度 幅 ステップ角 追従する力 (2) 周波数 回転速度 幅 移動角 追従する力 (3) パルス数 回転速度 周波数 移動角 保持する力 (4) パルス数 回転角度 幅 ステップ角 追従する力 (5) パルス数 回転角度 周波数 ステップ角 保持する力
出題のポイント:パルス数が角度、周波数が速度
ステッピングモータの動作は、たった2行で言い表せます。「何個パルスを送ったか」で角度が決まり、「1秒に何個送ったか」で速度が決まる——それだけです。
| 入力 | 対応する出力 | 理由 |
| パルス数(何個) | 回転角度 | 1個ごとにステップ角だけ進むから |
| パルス周波数(1秒に何個) | 回転速度 | 単位時間あたりに進む角度だから |
| パルスを止める | その場で停止 | 次の指令が来なければ動かない |

空欄を確定する
(ア)=パルス数、(イ)=回転角度。「駆動回路に与えられた(ア)に比例する(イ)だけ回転する」——パルスを10個送れば10ステップ進むという素直な関係です。
(ウ)=周波数。「パルスを周期的に与えたとき、そのパルスの(ウ)に比例する回転速度で回転し」——「幅」ではありません。パルス幅を変えても、何個送るかが変わらなければ回転量は変わらないからです。
(エ)=ステップ角。1パルスあたりの回転角度——「移動角」という用語は使いません。
(オ)=保持する力。永久磁石形は、電流を流していなくても磁石が固定子の鉄心に引き寄せられて止まろうとします——これを保持する力(ディテントトルク)といいます。


3つの型式を比べる
問題文が挙げている3種類は、回転子に何があるかで分かれます。
| 型式 | 回転子 | 無通電時の保持力 | ステップ角 | 特徴 |
| 永久磁石形(PM形) | 永久磁石 | ある | 大きめ | 構造が簡単・安価 |
| 可変リラクタンス形(VR形) | 歯のついた鉄心(磁石なし) | ない | 小さめ | 応答が速い・慣性が小さい |
| ハイブリッド形(HB形) | 磁石+歯付き鉄心 | ある | 最も小さい | 高分解能・最も普及 |
(オ)が「永久磁石形の特徴」として問われているのは、VR形には磁石がなく保持力がないからです。磁石があるかどうかで、無通電時の振る舞いが決定的に変わります。
ハイブリッド形は両方の良いところを取った型式で、ステップ角1.8°(1回転200ステップ)が標準——プリンタや工作機械の位置決めで最も広く使われています。
可変リラクタンス形は、SRM と同じ原理です。磁気抵抗が小さくなる位置へ引き寄せられる力(リラクタンストルク)だけで回る——「ステッピングモータとSRM は親戚」だと考えるとつながります。
オープンループで位置決めできることの意味
ステッピングモータの最大の値打ちは、位置センサなしで位置決めができることです。「パルスを何個送ったか」を数えていれば、いまどこにいるか分かる——だからフィードバックが要りません。
| ステッピングモータ | サーボモータ | |
| 位置検出 | 不要(パルス数で管理) | 必要(エンコーダ) |
| 制御 | オープンループ | クローズドループ |
| コスト | 安い | 高い |
| 停止時の保持 | 通電すれば強く保持 | 制御で保持 |
| 弱点 | 脱調すると位置が狂い、しかも気づけない | —(ずれれば検出して直す) |
弱点が「脱調」です。負荷が重すぎたり加速が急すぎたりすると、パルスに回転子が追従できなくなります——そして、追従できていないことをモータ側が知らせてくれません。
制御側は「10 000パルス送ったから10 000ステップ進んだはず」と思っているのに、実際にはずれている——オープンループの怖さです。だから余裕を持った負荷設定と、緩やかな加減速(台形駆動)が欠かせません。
「安くて確実だが、無理をさせると黙って狂う」——ステッピングモータの性格を一言で言えば、そうなります。
⏱️ 本番での進め方
① パルス数=角度、パルス周波数=速度。この2行がすべて。
② (ウ)は「幅」ではなく「周波数」——幅を変えても回転量は変わらない。
③ 1パルスあたりの角度が「ステップ角」。「移動角」という語は使わない。
④ 永久磁石形は無通電でも保持力あり(VR形にはない)。
💡 覚え方
「回転角度=ステップ角×パルス数、回転速度∝パルス周波数」。PM形=磁石で保持力あり/VR形=磁石なしで保持力なし・応答速い/HB形=両取りで高分解能。位置センサ不要のオープンループ制御だが、脱調すると位置が狂い、しかも検出できない。
⚠️ よくある間違い
(ア)に「周波数」を入れるのが典型です。周波数は速度を決める量で、角度を決めるのはパルス数です。もう一つは(ウ)に「幅」——パルス幅を変えても、送った個数が同じなら回転量は変わりません。
ステップ角と分解能
ステップ角が小さいほど、細かい位置決めができます。これを「分解能が高い」といいます。
| ステップ角 | 1回転あたりのステップ数 | 分解能 | 用途の例 |
| 7.5° | 48 | 粗い | 簡単な位置決め |
| 1.8° | 200 | 標準 | プリンタ・工作機械(最も普及) |
| 0.9° | 400 | 高い | 精密機器 |
1.8°のモータで360°回したければ、パルスを200個送る——それだけで位置が決まります。センサもフィードバックも要りません。
さらに細かく止めたい場合は「マイクロステップ駆動」を使います。2つの相の電流を段階的に配分することで、本来のステップの中間位置に止める——1.8°を16分割すれば0.1125°の分解能になります。
ただしマイクロステップでは、中間位置での保持トルクが弱くなります。本来の安定点から外れた位置で無理に止めているからです——「細かく止められるが、その位置は弱い」という性格を持ちます。
速度の計算も押さえておきましょう。1.8°のモータに毎秒1 000パルスを送れば、1秒で1 800°=5回転——毎分300回転です。パルス周波数を上げれば速くなりますが、上げすぎると脱調します。
まとめ
| (ア) | パルス数 |
| (イ) | 回転角度 |
| (ウ) | 周波数 |
| (エ) | ステップ角 |
| (オ) | 保持する力 |
| 答え | (5) |
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