今回は平成18年度 機械科目 A問題4を解説します。力率1で運転中の同期電動機の界磁電流だけを増やしたときの電機子電流と力率の変化を問う問題です。
力率1から界磁電流を増やす(過励磁)と、電機子電流は増加し、進み力率になります。V曲線の谷から右側へ移動するイメージです。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
同期電動機が一定の負荷で、力率1の状態で運転されている。この状態から、負荷を一定に保って、界磁電流のみを増加させたとき、電機子電流の大きさと同期電動機の力率の変化に関する記述として、正しいのは次のうちどれか。
(1) 電機子電流は増加し、進み力率になる。
(2) 電機子電流は増加し、遅れ力率になる。
(3) 電機子電流は減少し、力率は変化しない。
(4) 電機子電流は減少し、進み力率になる。
(5) 電機子電流は変化せず、遅れ力率になる。
出題のポイント:V曲線の谷から右へ動く
「力率1で運転中」=V曲線の谷の底にいるということです。そこから界磁電流を増やせば、右(過励磁側)へ動きます——それだけの問題です。
| 操作 | V曲線上の動き | 電機子電流 | 力率 |
| 界磁電流を増やす | 右へ(過励磁) | 増加 | 進み |
| そのまま(力率1) | 谷の底 | 最小 | 1.0 |
| 界磁電流を減らす | 左へ(不足励磁) | 増加 | 遅れ |
「どちらへ動いても電流は増える」のが谷の底の特徴です。だから「電流は減少する」と書いてある(3)(4)は、その時点で消せます。

なぜ過励磁で進み力率になるのか
ベクトルで考えると、はっきりします。同期電動機では、端子電圧 V と内部起電力 E0 の差が同期リアクタンスに加わり、そこに電機子電流が流れます。
負荷が一定なら、出力も一定です。同期電動機の出力は P=VE0sinδ/xs ですから、E0 を大きくすると負荷角 δ は小さくなります——E0sinδ が一定に保たれるのです。
| 界磁電流 | E0 の大きさ | 負荷角 δ | 電機子電流の無効分 | 力率 |
| 少ない | 小さい | 大きい | 遅れ側 | 遅れ |
| ちょうど | ほどほど | 中くらい | ゼロ | 1.0 |
| 多い | 大きい | 小さい | 進み側 | 進み |
有効分(トルクを作る成分)は出力が同じなら変わりません。変わるのは無効分だけ——過励磁では進み側の無効分が加わるので、合計の電流は大きくなります。
直感的には「励磁が強すぎて、余った磁力が無効電力として外へ出ていく」と考えるとよいでしょう。系統から見れば、この電動機はコンデンサのように振る舞っています。


選択肢を2段階で絞る
| 段階 | 根拠 | 消える選択肢 |
| ① 電流は増える | 谷の底からどちらへ動いても電流は増える | (3)(4)(5)が消える |
| ② 過励磁は進み | 「過剰はコンデンサ」 | (2)が消えて(1)に確定 |
1つ目の判定だけで3つ消せます。「力率1は電流が最小の点」という一言を知っていれば、力率の向きが分からなくても2択まで絞れるということです。
(5)の「電機子電流は変化せず」も物理的にあり得ません。界磁を変えれば必ず電機子電流の無効分が変わる——変化しないのは有効分だけです。
この性質が実務で使われる場面
同期電動機を過励磁で運転すると、進み無効電力を系統に供給できます。工場の遅れ力率を打ち消す働き——実質的にコンデンサの代わりになります。
| 電力用コンデンサ | 過励磁の同期電動機 | |
| 調整 | 段階的(入/切) | 連続的(界磁電流で) |
| 進み・遅れ | 進みだけ | どちらも出せる |
| 本業 | なし(無効電力専用) | 機械を回す仕事もしている |
| 損失・保守 | 少ない | 回転機なので必要 |
「仕事をしながら力率も改善する」——これが同期電動機の隠れた長所です。大形のコンプレッサやポンプに同期電動機を使えば、その工場の力率改善も同時にできることになります。
誘導電動機ではこれができません。誘導機は常に遅れ力率で、系統から無効電力をもらう側——力率を悪化させる要因です。「同期機は力率を選べる」という違いが、ここでも効いてきます。
⏱️ 本番での進め方
① 力率1=V曲線の谷=電流最小。どちらへ動いても電流は増える。
② 過励磁=進み(過剰はコンデンサ)、不足励磁=遅れ(不足はリアクトル)。
③ 負荷一定なら有効分は変わらない。変わるのは無効分だけ。
④ ①だけで3肢消せる——力率の向きが不安でも2択に絞れる。
💡 覚え方
「力率1から界磁↑(過励磁)→ 進み力率・電機子電流↑。界磁↓(不足励磁)→ 遅れ力率・電機子電流↑」。谷の底が電流最小なのでどちらへ動いても電流は増える。負荷一定なら E0sinδ が一定で、界磁を強めると δ が小さくなり無効分が進み側へ。
⚠️ よくある間違い
過励磁で「遅れ」にしてしまうのが典型です。「過剰はコンデンサ=進み」と結びつけてください。もう一つは「電流は減少する」と考えること——力率1がすでに電流最小の点なので、そこから減ることはありません。
電流の増え方を数値で追う
「電機子電流は増加する」——どれくらい増えるのかを数値で見ておくと、V曲線の形が実感できます。
力率1で100 A 流れていたとしましょう。この100 A はすべて有効分(トルクを作る成分)です。ここから界磁を増やして、力率が0.8(進み)になったとします。
負荷が同じなら出力も同じ。
25 % 増える。
これが系統へ供給される進み無効電流。
| 力率 | 有効分 | 無効分 | 全電流 | V曲線上の位置 |
| 0.8 遅れ | 100 A | 75 A(遅れ) | 125 A | 左(不足励磁) |
| 1.0 | 100 A | 0 | 100 A | 谷の底 |
| 0.8 進み | 100 A | 75 A(進み) | 125 A | 右(過励磁) |
力率0.8 の遅れと進みで、電流の大きさは同じ125 Aです。V曲線が谷を挟んでほぼ対称な形になるのは、このためです。
無効分が75 A も流れているのに、仕事は何も増えていない——だから電機子巻線の銅損だけが増えます。1252/1002=1.56 で銅損は56 % 増加——力率1から離れるのは、電動機にとっては損だということです。
それでも過励磁で運転することがあるのは、系統全体の力率改善という別の利益があるからです。電動機1台の銅損が増えても、工場全体の力率が上がれば配電線の損失が減る——どちらが得かは設備全体で判断します。
まとめ
| 界磁電流 | 増加(過励磁) |
| 電機子電流 | 増加 |
| 力率 | 進み |
| 答え | (1) |
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・同期電動機のV曲線:【機械】平成28年度A問題5
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