今回は平成28年度 機械科目 A問題5を解説します。同期電動機の位相特性曲線(V曲線)の縦軸・横軸・力率の領域を問う穴埋め問題です。
横軸は界磁電流、縦軸は電機子電流。曲線の最低点が力率1で、破線より左が遅れ力率、右が進み力率の領域です。
平成28年度 機械科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
電験3種 機械科目 【同期機】 平成28年度 A問題5
次の文章は,同期電動機の特性に関する記述である。記述中の空白箇所の記号は,図中の記号と対応している。
下の図は同期電動機の位相特性曲線を示している。形がVの字のようになっているのでV曲線とも呼ばれている。横軸は(ア),縦軸は(イ)で,負荷が増加するにつれ曲線は上側へ移動する。図中の破線は,各負荷における力率(ウ)の動作点を結んだ線であり,この破線の左側の領域は(エ)力率,右側の領域は(オ)力率の領域である。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。
出題のポイント:軸を取り違えない
V曲線の問題で最も多い誤りは、縦軸と横軸を逆にすることです。「界磁電流を変えたら電機子電流がどうなるか」を見る図ですから、操作する量が横軸、結果が縦軸になります。
| 何が来るか | 意味 | |
| 横軸 | 界磁電流 If | こちらが操作する量 |
| 縦軸 | 電機子電流 Ia | その結果として現れる量 |
| 曲線の最低点 | 力率1 | 無効分がゼロで電流が最小 |
| 破線の左側 | 遅れ力率 | 不足励磁 |
| 破線の右側 | 進み力率 | 過励磁 |
「不足はリアクトル(遅れ)、過剰はコンデンサ(進み)」——この語呂で左右を覚えれば、取り違えません。

空欄を確定する
(ア)=界磁電流、(イ)=電機子電流。V曲線は「界磁電流を横軸に、電機子電流を縦軸に」描いた図です。
(ウ)=1。各曲線の最低点は力率1の動作点——無効分がゼロで、電流が有効分だけになるから最小です。
(エ)=遅れ、(オ)=進み。破線より左が不足励磁で遅れ力率、右が過励磁で進み力率です。


なぜ負荷が増えると曲線は上へ移動するのか
問題文の「負荷が増加するにつれ曲線は上側へ移動する」——この理由も押さえておきましょう。
電機子電流は、有効分(トルクを作る成分)と無効分(力率を決める成分)に分けられます。負荷が増えるということは、有効分が増えるということです。
| 負荷 | 有効分 | 谷の底(力率1のときの電流) | 曲線の位置 |
| 軽い | 小さい | 低い | 下のほう |
| 中くらい | 中くらい | 中くらい | 真ん中 |
| 重い | 大きい | 高い | 上のほう |
谷の底の高さが、そのまま有効分の大きさです。負荷が増えれば有効分が増え、谷が持ち上がる——これが「曲線が上側へ移動する」ことの中身になります。
同時に、谷の位置(力率1になる界磁電流)も右へずれていきます。大きな出力を出すには大きな内部起電力が必要で、そのためには界磁電流も多く要るからです。問題文の破線が右上がりに描かれているのは、このためです。
力率1で運転するのが最も得か
電機子電流が最小になるのは力率1のときです。電流が最小なら銅損も最小——電動機単体で見れば、力率1がいちばん効率がよいことになります。
| 運転点 | 電機子電流 | 電動機自身の銅損 | 系統への影響 | 安定度の余裕 |
| 不足励磁(遅れ) | 大きい | 大きい | 系統の力率を悪くする | 少ない |
| 力率1 | 最小 | 最小 | 中立 | 標準 |
| 過励磁(進み) | 大きい | 大きい | 系統の力率を改善する | 大きい |
電動機だけを見れば力率1が最適ですが、設備全体で見ると話が変わります。工場には遅れ力率の誘導電動機がたくさんあるので、同期電動機を過励磁で運転して進み無効電力を供給すれば、全体の力率が改善します。
さらに、過励磁のほうが安定度の余裕も大きくなります。内部起電力が大きいほど、同じ出力を出すのに必要な負荷角が小さくて済む——脱調までの余裕が広がるからです。
だから実務では、やや過励磁で運転することが多いのです。電動機自身の銅損は少し増えますが、配電線の損失が減り、安定度も上がる——設備全体では得になるという判断です。
⏱️ 本番での進め方
① 横軸=界磁電流(操作する量)、縦軸=電機子電流(結果)。
② 最低点は力率1——力率0ではない。
③ 左が遅れ(不足励磁)、右が進み(過励磁)。
④ 負荷が増えると曲線は上へ、谷の位置は右へずれる。
💡 覚え方
「V曲線:横=界磁電流、縦=電機子電流。最低点=力率1。左が遅れ(不足励磁)、右が進み(過励磁)」。谷の底の高さ=有効分の大きさなので負荷が増えれば曲線は上へ移動し、谷の位置も右へずれる。電動機単体なら力率1が最効率だが、設備全体ではやや過励磁が有利。
⚠️ よくある間違い
縦軸と横軸を逆にするのが最も多い誤りです。操作するのは界磁電流——それを横軸に取ります。もう一つは最低点を「力率0」とすること——無効分がゼロになるのは力率1のときです。力率0なら有効分がゼロで、仕事をしていないことになってしまいます。
同期電動機と誘導電動機を、V曲線の観点で比べる
V曲線があるのは同期電動機だけです。誘導電動機には、界磁電流という調整つまみがそもそもありません——この違いが、2つの電動機の性格を分けています。
| 同期電動機 | 誘導電動機 | |
| 磁束を作る電流 | 界磁巻線に流す直流(独立) | 固定子電流の一部(励磁分) |
| 力率の決まり方 | 界磁電流で自由に選べる | 負荷しだいで決まる(常に遅れ) |
| V曲線 | ある | ない(調整つまみがない) |
| 無効電力 | 供給も消費もできる | 常に消費する側 |
誘導電動機の励磁電流は、固定子電流の中に混ざって流れています。負荷電流と同じ巻線を通っているので、片方だけを独立に増減させることができません——だから力率を選べないのです。
同期電動機は界磁巻線が別回路です。磁束を作る電流だけを、電機子電流とは無関係に増減できる——これがV曲線という自由度を生んでいます。
「巻線が兼用か分離か」という同期機と誘導機の構造的な違いが、V曲線の有無という形で現れている——この見方ができると、電動機の分類がより立体的に理解できます。
界磁電流を変えても回転速度は変わらない
V曲線を見ていると、界磁電流を変えれば何かが大きく変わりそうに思えますが、回転速度だけは絶対に変わりません。
| 界磁電流を変えると | 変わるもの | 変わらないもの |
| — | 電機子電流の大きさ | 回転速度(同期速度のまま) |
| — | 力率(進み・遅れ) | 有効電力(負荷しだい) |
| — | 負荷角 δ | 出力トルク(負荷しだい) |
同期電動機の回転速度は、電源周波数と極数だけで決まります。N=120f/p——界磁電流はこの式のどこにも出てきません。
誘導電動機なら、負荷が変われば滑りが変わって速度も動きます。同期電動機は速度を変えずに負荷角で応じる——「速度は絶対に変えない」というのが同期機の本質です。
だからV曲線は「速度が固定された状態で、無効電力だけをどう調整するか」を描いた図だということになります。有効電力(負荷)は曲線の高さとして表れ、無効電力は横方向の位置として表れる——2つの量が別々の軸に分かれているのが、この図の要点です。
まとめ
| (ア) | 界磁電流 |
| (イ) | 電機子電流 |
| (ウ) | 1 |
| (エ) | 遅れ |
| (オ) | 進み |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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