同期機16【電験3種 機械】遅れ力率の負荷角δをベクトル図で求める!平成30年 A問題6 完全解説

電験3種 機械科目 同期機 平成30年度 A問題6 遅れ力率のベクトル図!負荷角δは何度?

今回は平成30年度 機械科目 A問題6を解説します。遅れ力率で運転する同期発電機の負荷角δを、単位法のベクトル図から求める問題です。

ベクトル図を描いて \(E_0\) を三平方で求め、\(\sin\delta\) を作るのが定石です。

目次

問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6

 定格容量 P [kV・A],定格電圧 V [V]の星形結線の三相同期発電機がある。電機子電流が定格電流の40 %,負荷力率が遅れ86.6 %(cos30°=0.866),定格電圧でこの発電機を運転している。このときのベクトル図を描いて,負荷角δの値[°]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,この発電機の電機子巻線の1相当たりの同期リアクタンスは単位法で0.915 p.u.,1相当たりの抵抗は無視できるものとし,同期リアクタンスは磁気飽和等に影響されず一定であるとする。

(1) 0 (2) 15 (3) 30 (4) 45 (5) 60

出題のポイント:単位法だからこそ数値がそのまま使える

本問は定格容量 P も定格電圧 V も文字のままです。それでも答えが出るのは、すべてを単位法で扱えるから——具体的な数値がなくても比だけで決まる問題になっています。

単位法の値根拠
端子電圧 V1.0定格電圧で運転している
電機子電流 I0.4定格電流の40 %
同期リアクタンス xs0.915問題文で与えられている
力率角 θ30°(遅れ)cos θ=0.866

この4つが決まれば、あとはベクトル図を描くだけです。単位法にしておけば √3 も出てこず、電圧の大小も1を基準に判断できます——本問が文字式のまま出題できているのは、この性質のおかげです。

遅れ電流Iを90度進めたjxsIと内部起電力E0のベクトル合成図
遅れ力率では、jxsIの水平成分がxsI sinθ、垂直成分がxsI cosθです。

ベクトルを成分に分解する

発電機なので \( \dot{E}=\dot{V}+jx_s\dot{I} \)\( \dot{V} \) を実軸に取ると、遅れ力率なので \( \dot{I} \) は θ だけ下向き——\( \dot{I}=I(\cos\theta-j\sin\theta) \) です。

\( jx_s\dot{I}=jx_s I(\cos\theta-j\sin\theta) \)
代入
j を掛けて90°回す
\( \phantom{jx_s\dot{I}}=x_s I\sin\theta+j\,x_s I\cos\theta \)
整理
j2=−1 で実部が正になる
\( \dot{E}=(V+x_s I\sin\theta)+j\,x_s I\cos\theta \)
合成
V に足す

遅れ力率だと、リアクタンス降下の一部が端子電圧と同じ向きに乗る(実部の xsI sin θ の項)——これが「遅れ力率では誘導起電力が大きくなる」ことの正体です。進み力率ならこの項が負になり、E は小さくなります

負荷角の一般式(発電機・抵抗無視)

\( \tan\delta=\dfrac{x_s I\cos\theta}{V+x_s I\sin\theta} \)

分子は電圧に直角な成分、分母は電圧と同じ向きの成分——遅れ力率なら分母に足し、進み力率なら引きます

数値を入れて負荷角を出す

\( x_s I=0.915\times0.4=0.366 \)
降下
単位法のリアクタンス降下
\( \text{実部}=1.0+0.366\times0.5=1.183 \)
分母
sin30°=0.5
\( \text{虚部}=0.366\times0.866=0.317 \)
分子
cos30°=0.866
\( \tan\delta=\dfrac{0.317}{1.183}=0.268 \)
正接
虚部÷実部
\( \delta\fallingdotseq 15^{\circ} \)
負荷角
tan15°≒0.268
平成30年機械A問題6の内部起電力と負荷角15度の計算過程
sinδ=0.317/1.225=0.259より、負荷角は約15°、正解は(2)です。
答え正解は (2) 15°です。力率角30°に対して負荷角は15°——この2つはまったく別の角であることを、図の上で確認しておきましょう。

選択肢の作られ方を読む

⚠️ よくある間違い
(3) 30°力率角θをそのまま答えたものです。問題文に「cos30°=0.866」と書かれているので、30という数字が目に焼きつきます——そこを狙った肢です。
負荷角δは誘導起電力 E と端子電圧 V のなす角力率角θは端子電圧 V と電流 I のなす角——基準は同じ V ですが、相手が違います

☝️ ひっかけの作り方:(1) 0°無負荷なら負荷角は0という知識を逆手に取った肢です。本問は定格の40 %とはいえ負荷がかかっているので、δ が0になることはありません「電流が流れている=負荷角がある」という対応を押さえておきましょう。

電流が定格の40 %と小さめなので、負荷角も15°と小さな値に収まっていますもし定格電流(1.0 p.u.)で同じ力率なら、tanδ=0.792/1.458=0.543 → δ≒28°——負荷が重くなるほど δ が大きくなるという関係も確かめられます。

誘導起電力の大きさも出しておく

\( E=\sqrt{1.183^{2}+0.317^{2}} \)
大きさ
実部と虚部から
\( \phantom{E}=\sqrt{1.399+0.100}=\sqrt{1.499} \)
計算
それぞれ2乗して足す
\( \phantom{E}\fallingdotseq 1.22\ [\mathrm{p.u.}] \)
誘導起電力
定格電圧の1.22倍

この状態で負荷を切ると、端子電圧は定格の1.22倍まで上がります——電圧変動率にすると22 %です。負荷が定格の40 %しかないのに、これだけの変動がある——同期発電機の電圧変動の大きさが、ここでも確認できます

⏱️ 本番での進め方
① すべて単位法にそろえる。V=1.0、I=0.4、xs=0.915。
② xsI=0.366 を先に出す。
③ tanδ=(xsI cosθ)/(V+xsI sinθ)=0.317/1.183≒0.268。
④ tan15°≒0.27、tan30°≒0.58。値で見分けられる。

💡 覚え方
「遅れ力率は分母に足す、進み力率は分母から引く」——遅れなら E が大きくなり δ は小さめ、進みなら E が小さくなり δ は大きめ符号の向きさえ間違えなければ、あとは三角比の計算だけです。

遅れ力率0.866の成分計算から内部起電力と負荷角を求める図
E0の実部1.183、虚部0.317から、E0=1.225 p.u.、δ=15°を得ます。

力率が変われば、負荷角はどう動くか

本問は遅れ86.6 %でしたが、力率が変わると負荷角はどちらに動くのでしょうか同じ電流0.4 p.u. のまま、力率だけを変えて比べてみます

力率分母(実部)分子(虚部)負荷角 δ誘導起電力 E
遅れ86.6 %(本問)1+0.183=1.1830.31715.0°1.22 p.u.
1.01+0=1.0000.36620.1°1.06 p.u.
進み86.6 %1−0.183=0.8170.31721.2°0.88 p.u.

遅れ力率のほうが負荷角は小さく、誘導起電力は大きい——進み力率ではその逆になります。同じ有効電力を送っていても、力率で運転点がこれだけ変わるのです。

理由は電機子反作用です。遅れ電流は減磁作用を持つので、同じ端子電圧を保つには強い界磁——つまり大きな E が要ります進み電流は増磁作用なので、弱い界磁で足りる——表の E の列が、そのまま励磁の強さを表しています

負荷角が小さいほど安定度の余裕は大きいので、遅れ力率のほうが同期を保つ力は強いことになります。ただし E が大きいということは界磁銅損も大きいということ——ここにも損得の両面があります。

系統の負荷はほとんどが遅れ力率(誘導電動機が多いため)ですから、発電機は日常的にこの表の1行目の状態で運転しています本問の設定が「遅れ86.6 %」なのは、現実的な運転条件を選んでいるからなのです。

まとめ

条件\(V=1,\ I=0.4,\ x_s=0.915\,\mathrm{p.u.},\ \cos\theta=0.866\)
誘導起電力\(E_0=\sqrt{1.183^2+0.317^2}\fallingdotseq1.225\,\mathrm{p.u.}\)
負荷角\(\sin\delta=0.317/1.225\fallingdotseq0.259\Rightarrow\delta\fallingdotseq15^\circ\)
答え(2)

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【機械】平成20年度A問題5(同期機14)
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