今回は平成26年度 機械科目 A問題1を解説します。分巻電動機の定速度特性と、直巻電動機のトルク特性を問う穴埋め問題で、【機械】令和3年度A問題1とセットで押さえたい定番テーマです。
空欄は5つですが、使う式は「回転速度の式」と「トルクの式」の2本だけです。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
次の文章は,直流電動機に関する記述である。
直流分巻電動機は界磁回路と電機子回路とが並列に接続されており,端子電圧及び界磁抵抗を一定にすれば,界磁磁束は一定である。このとき,機械的な負荷が(ア)すると,電機子電流が(イ)し回転速度はわずかに(ウ)するが,ほぼ一定である。このように負荷の変化に関係なく,回転速度がほぼ一定な電動機は定速度電動機と呼ばれる。
上記のように直流分巻電動機の界磁磁束を一定にして運転した場合,電機子反作用等を無視すると,トルクは電機子電流にほぼ(エ)する。
一方,直流直巻電動機は界磁回路と電機子回路とが直列に接続されており,界磁磁束は負荷電流によって作られる。界磁磁束が磁気飽和しない領域では,界磁磁束は負荷電流にほぼ(エ)し,トルクは負荷電流の(オ)にほぼ比例する。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 減少 減少 増加 反比例 \(\frac{1}{2}\)乗 (2) 増加 増加 増加 比例 2乗 (3) 減少 増加 減少 反比例 \(\frac{1}{2}\)乗 (4) 増加 増加 減少 比例 2乗 (5) 減少 減少 減少 比例 \(\frac{1}{2}\)乗
出題のポイント:空欄5つでも、使う式は2本だけ
空欄が5つあると身構えてしまいますが、この問題で使う式は「速度の式」と「トルクの式」の2本だけです。前半3つ(ア)(イ)(ウ)が分巻の速度特性、後半2つ(エ)(オ)がトルク特性——と役割がはっきり分かれています。
なお本問は令和3年度 A問題1(直流機42)とほぼ同じ内容の5空欄版です。令和3年度版は空欄が4つで、分巻・直巻の磁束とトルクだけを問いました。本問はそこに「負荷が増えたときの速度の動き」が加わっています。同じ論点が形を変えて繰り返し出る典型で、両方を見比べておくと得点源になります。

(ア)(イ)(ウ):分巻はなぜ「わずかに」低下するのか
負荷が増加すると、電動機はそれに見合うトルクを出さなければなりません。T=kTφIa で磁束 φ は一定なので、トルクを増やす唯一の方法は電機子電流 Ia を増やすこと——(ア)=増加、(イ)=増加が決まります。
問題は(ウ)です。Ia が増えると抵抗降下 IaRa が増えるので、逆起電力 E=V−IaRa は減ります。φ が一定なら n∝E なので、回転速度は減少——(ウ)=減少です。
ここで大事なのが「わずかに」という副詞です。電機子抵抗 ra はふつう端子電圧の数 % 程度しか電圧を食わないほど小さいので、負荷が変わっても分子 V−raIa はほとんど動きません。だから「ほぼ一定」=定速度電動機と呼ばれるのです。
| 負荷の状態 | Ia | IaRa(ra=0.2 Ω の例) | E=200−IaRa | 速度(無負荷比) |
| 無負荷 | 5 A | 1 V | 199 V | 100 % |
| 半負荷 | 25 A | 5 V | 195 V | 98.0 % |
| 全負荷 | 50 A | 10 V | 190 V | 95.5 % |
無負荷から全負荷まで動かしても速度の低下は5 % 程度——これが「わずかに減少するが、ほぼ一定」の中身です。この速度変動率の小ささが分巻電動機の商品価値であり、直巻(無負荷で暴走)とは正反対の性格になります。

(エ)(オ):1乗と2乗はどこで分かれるか
(エ)は2か所で使われているのが本問の特徴です。1つ目は「分巻のトルクは電機子電流にほぼ(エ)する」、2つ目は「直巻の界磁磁束は負荷電流にほぼ(エ)し」——どちらも「比例」で、同じ語が両方に当てはまります。
磁束が定数なので、トルクは電機子電流の1乗に比例。
界磁巻線に負荷電流がそのまま流れる ⇒ 磁束は電流に比例(未飽和域)。
磁束も電流なので、掛け算して2乗になる。
「磁気飽和しない領域では」という但し書きが(オ)の直前に置かれているのは、飽和すると φ がそれ以上増えなくなり、2乗が成り立たなくなるからです。実機の直巻電動機は大電流域で飽和するので、トルク曲線は2乗から次第に1乗へ寝ていきます。

選択肢を消していく
| 選択肢 | (ア)(イ)(ウ)(エ)(オ) | どこで消えるか |
| (1) | 減少・減少・増加・反比例・1/2乗 | (ア)が「減少」——問題文は「負荷が(ア)すると電流が(イ)し」と同じ向きに動く文脈 |
| (2) | 増加・増加・増加・比例・2乗 | (ウ)だけが誤り。負荷が増えて速度が上がることはない |
| (3) | 減少・増加・減少・反比例・1/2乗 | (ア)と(イ)が逆向き。負荷が減って電流が増えるのは不自然 |
| (4) | 増加・増加・減少・比例・2乗 | 正解 |
| (5) | 減少・減少・減少・比例・1/2乗 | (オ)が「1/2乗」——φ∝I を代入すれば必ず2乗になる |
「1/2乗」という選択肢が3つもあるのが目を引きます。これはT∝I2 を逆に解いて I∝√T としたときの形で、「トルクから電流を求める」向きの式と混同させる狙いです。問われているのは「トルクは電流の何乗か」——向きを取り違えないでください。
また(2)は(ウ)だけが違う「惜しい肢」です。ここを間違える人は「負荷が増える=電流が増える=力が出る=速くなる」と考えてしまいがちですが、電流が増えると抵抗降下も増え、逆起電力は減る——だから速度は下がります。
分巻・直巻・他励・複巻を一覧で整理する
| 種類 | 界磁の接続 | 磁束 φ | トルク | 速度特性 | 代表用途 |
| 他励 | 別電源 | 独立に制御できる | T∝φIa | 広範囲に制御可能 | 圧延機・エレベータ |
| 分巻 | 電機子と並列 | ほぼ一定 | T∝Ia | ほぼ一定(定速度) | 工作機械・送風機 |
| 直巻 | 電機子と直列 | φ∝I | T∝I2 | 負荷で大きく変わる・無負荷で暴走 | 電車・クレーン |
| 複巻 | 並列+直列の両方 | 両者の中間 | 中間 | 分巻に近いが始動トルクが大きい | 圧縮機・巻上機 |
この表の「磁束 φ」の列だけが本質です。他の列はすべて φ の欄から導かれます。直流機の分類問題は「界磁がどこにつながっているか → 磁束はどう決まるか」の2段階で考えると、どの年度の問題でも同じ手順で解けます。
⏱️ 本番での進め方
① 空欄が5つでも2式だけ:n=(V−raIa)/(kEφ) と T=kTφIa。
② (ア)(イ)は同じ向き(負荷が増える=電流が増える)。逆向きの肢は即消せる。
③ (ウ)は必ず「減少」。抵抗降下が増えて逆起電力が減るから。
④ (オ)は φ∝I を T=kφI に代入するだけで2乗。1/2乗の肢は向きの取り違え。
💡 覚え方
分巻=定速度・T∝I、直巻=可変速度・T∝I2。分巻の速度がわずかに下がる理由は抵抗降下 raIa が増えるからで、ra が小さいので下がり幅も小さい。直巻の2乗は「磁束も電流だから掛けて2乗」——ただし飽和すると成り立たないので、問題文の但し書きを必ず確認する。
⚠️ よくある間違い
(ウ)を「増加」としてしまうのが最頻(→(2))。「負荷が増える=がんばる=速くなる」という直感は逆です。直流電動機の速度は逆起電力で決まり、逆起電力は電流が増えるほど小さくなります。もう一つは(オ)の1/2乗——T と I の関係を逆向きに読んだ形です。
まとめ
| 分巻の速度 | \(n=(V-r_aI_a)/(k_e\phi)\):負荷増でわずかに減少(ほぼ一定) |
| 分巻のトルク | \(T\propto I_a\)(比例) |
| 直巻の磁束・トルク | \(\phi\propto I\)、\(T\propto I^2\) |
| 答え | (4) |
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