電験3種の機械科目で頻出の直流電動機の特性に関する論説問題。本記事では、平成25年度 A問題1を解説します。この問題は【機械】令和7年度上期A問題1と同じ内容が選択肢の並び替えで出題された再出題問題です。
それだけ狙われやすい定番論点ということ。カギは \( N=(V-I_aR_a)/K\phi \) と \( T=K\phi I_a \) の2式です。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和7年度上期A問題1 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成25年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
誤りがどう作られているかを分解しながら読みます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 平成25年度 A問題1
直流電動機に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 分巻電動機は、端子電圧を一定として機械的な負荷を増加したとき、電機子電流が増加し、回転速度は、わずかに減少するがほぼ一定である。このため、定速度電動機と呼ばれる。
(2) 分巻電動機の速度制御の方法の一つとして界磁制御法がある。これは、界磁巻線に直列に接続した界磁抵抗器によって界磁電流を調整して界磁磁束の大きさを変え、速度を制御する方法である。
(3) 直巻電動機は、界磁電流が負荷電流(電動機に流れる電流)と同じである。このため、未飽和領域では界磁磁束が負荷電流に比例し、トルクも負荷電流に比例する。
(4) 直巻電動機は、負荷電流の増減によって回転速度が大きく変わる。トルクは、回転速度が小さいときに大きくなるので、始動時のトルクが大きいという特徴があり、クレーン、巻上機などの電動機として適している。
(5) 複巻電動機には、直巻界磁巻線及び分巻界磁巻線が施され、合成界磁磁束が直巻界磁磁束と分巻界磁磁束との和になっている構造の和動複巻電動機と、差になっている構造の差動複巻電動機とがある。
出題のポイント:4つの正しい記述が「直流機の要約」になっている
この問題は「誤りを1つ選ぶ」形式ですが、見方を変えると4つの正しい記述が直流電動機の要点をきれいに要約しているとも言えます。誤りを見つけたあと、残りの4つを覚えて帰るのが賢い使い方です。
| 記述 | 内容 | 直流機のどの論点か |
| (1) | 分巻は負荷が増えても速度がほぼ一定 | 定速度電動機 |
| (2) | 界磁抵抗器で磁束を変えて速度制御 | 界磁制御法(弱め界磁) |
| (3) | 直巻はトルクも負荷電流に比例 | ★ここが誤り(正しくは2乗) |
| (4) | 直巻は始動トルクが大きくクレーン向き | 直巻の用途 |
| (5) | 複巻には和動と差動がある | 複巻の分類 |

(3)はどう作られた誤りか
誤りの選択肢は、正しい記述の一部だけを書き換えて作られます。(3)を分解すると、その作られ方がはっきり見えます。
| (3)の各部分 | 正誤 | 内容 |
| 「直巻電動機は、界磁電流が負荷電流と同じである」 | 正しい | 界磁巻線と電機子が直列だから |
| 「未飽和領域では界磁磁束が負荷電流に比例し」 | 正しい | φ=kI |
| 「トルクも負荷電流に比例する」 | 誤り | 正しくは2乗に比例(T∝I2) |
3つの節のうち2つまでが正しい——読み進めるほど「正しそうだ」と感じてしまう作りになっています。最後の一言だけが違うので、文末まで気を抜かずに読むことが必要です。
これは分巻でも直巻でも同じ。
記述の前半が言っているとおり。
φ の中にも I がいるので、掛け算して2乗。
「比例」と「2乗に比例」は、グラフにするとまったく違います。比例なら直線、2乗なら下に凸の曲線——電流が2倍になったとき、トルクは2倍ではなく4倍です。直巻が始動に強い理由がまさにここなので、この違いは決定的です。

なぜ「未飽和領域では」と断ってあるのか
記述(3)には「未飽和領域では」という条件が付いています。これは実機では飽和するとこの関係が崩れるためです。
| 電流の範囲 | 磁束 φ | トルク T | グラフの形 |
| 小電流(未飽和) | φ ∝ I | T ∝ I2 | 下に凸の放物線 |
| 大電流(飽和) | φ ≒ 一定 | T ∝ I | 直線に近づく |
電流を増やしていくと、鉄心が飽和して磁束がそれ以上増えなくなります。すると φ は定数のようにふるまい、トルクは電流の1乗に近づいていきます。実際の直巻電動機のトルク曲線は、低電流域で放物線、高電流域で直線という形になります。
つまり「トルクは電流に比例する」という記述も、大電流域では正しくなるのです。問題文が「未飽和領域では」と限定しているからこそ、2乗でなければならない——条件文が答えを決めている好例です。

直巻電動機の速度特性も式で確かめる
記述(4)は「直巻は負荷電流の増減によって回転速度が大きく変わる」と述べています。トルクが2乗に比例することは確かめましたが、速度のほうも式で追っておくと直巻の性格が完全に見えます。
この式の分母に I がいるのが決定的です。電流が小さくなると分母が小さくなって速度が跳ね上がる——無負荷(I→0)では N→∞ という、直巻の危険な性質がここから出ます。
| 負荷の状態 | 電流 I | 磁束 φ=kI | 回転速度 N ≒ V/(KkI) | トルク T=KkI2 |
| 軽負荷 | 小さい | 小さい | 非常に速い(危険) | 小さい |
| 定格 | 定格値 | 定格値 | 定格速度 | 定格トルク |
| 重負荷・始動時 | 大きい | 大きい | 遅い | 非常に大きい |
「速度が下がるほどトルクが出る」——これが記述(4)の「トルクは、回転速度が小さいときに大きくなる」という表現の中身です。電車が発進するとき(低速・大トルク)と高速走行時(高速・小トルク)の両方に自然に合うため、直巻電動機は長く電車に使われてきました。
出力 P=Tω で見ると、さらに面白いことが分かります。T が 1/N に近い形で変わるので、P=Tω はほぼ一定——直巻電動機は「定出力に近い特性」を自然に持っているのです。他励電動機で弱め界磁制御をしてようやく実現する定出力特性を、直巻は何もしなくても持っている——これが直巻が重宝された最大の理由です。
★同一問題:令和7年度上期 A問題1(番号が違う)
この問題は令和7年度上期 A問題1としてそのまま再出題されています。5つの記述の文面も、誤りの内容も完全に一致していますが、選択肢の順番が入れ替えてあります。
| 平成25年度 A問題1(本問) | 令和7年度上期 A問題1 | |
| 誤りの記述 | 「直巻…トルクも負荷電流に比例する」 | 同じ文面 |
| その記述の位置 | (3) | (5) |
| 正解の番号 | (3) | (5) |
| (1)の内容 | 分巻の定速度特性 | 直巻の用途(本問の(4)) |
12年ぶりの再出題で、正解の番号が (3) から (5) へ移動しています。過去問を「答えは(3)」と番号で覚えていた人は、令和7年度で(3)を選んで外す——番号暗記の危険を示す実例です。
逆に言えば、この論点は12年経っても変わらず問われているということでもあります。「直巻のトルクは2乗」は、直流機で最も繰り返される論点の一つだと考えて間違いありません。
⏱️ 本番での進め方
① 誤りを見つけたら、残り4つは「覚えて帰る要約」として読む。
② 記述を節に分けて判定する。本問の(3)は3節のうち最後だけが誤り。
③ 「未飽和領域では」という条件に注目。この条件があるから2乗でなければならない。
④ 正解の番号は年度で変わる。中身(どの記述が誤りか)で覚える。
💡 覚え方
直巻は φ∝I なので T=KφI=Kk I2——電流2倍でトルク4倍。これが始動に強い理由。ただし飽和すると φ が頭打ちになり T∝I に近づくので、「未飽和領域では」という条件が必須。分巻は φ 一定なので T∝I(1乗)で定速度。
⚠️ よくある間違い
文末まで読まずに「正しい」と判断してしまうのが(3)の罠です。「界磁電流=負荷電流」も「磁束が電流に比例」も正しい——誤りは最後の一言だけ。「〜し、〜する」という並列の文は、後半も独立に判定する習慣をつけてください。

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