電験3種の機械科目で頻出の直流機の構造に関する穴埋め問題。本記事では、平成24年度 A問題1で出題された、固定子・回転子・電機子鉄心・巻線方式を問う問題を解説します。
カギは「固定子=界磁・継鉄、回転子=電機子・整流子」の対応と、「交番磁束 → 積層鉄心」「重ね巻と波巻」の3点セットです。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和5年度上期A問題1 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成24年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
固定子と回転子に部品を振り分けるところから始めましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 平成24年度 A問題1
次の文章は、直流機の構造に関する記述である。
直流機の構造は、固定子と回転子とからなる。固定子は、(ア)、継鉄などによって、また、回転子は、(イ)、整流子などによって構成されている。
電機子鉄心は、(ウ)磁束が通るため、(エ) が用いられている。また、電機子巻線を収めるための多数のスロットが設けられている。
六角形(亀甲形)の形状の電機子巻線は、そのコイル辺を電機子鉄心のスロットに挿入する。各コイル相互のつなぎ方には、(オ) と波巻とがある。直流機では、同じスロットにコイル辺を上下に重ねて2個ずつ入れた二層巻としている。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
|---|---|---|---|---|---|
| (1) | 界磁 | 電機子 | 交番 | 積層鉄心 | 重ね巻 |
| (2) | 界磁 | 電機子 | 一定 | 積層鉄心 | 直列巻 |
| (3) | 界磁 | 電機子 | 一定 | 鋳鉄 | 直列巻 |
| (4) | 電機子 | 界磁 | 交番 | 鋳鉄 | 重ね巻 |
| (5) | 電機子 | 界磁 | 一定 | 積層鉄心 | 直列巻 |
出題のポイント:固定子と回転子に部品を振り分ける
直流機の構造問題は「どの部品が回るのか、回らないのか」を仕分けられれば半分が終わります。まずは全体像を整理しましょう。
| 固定子(回らない) | 回転子(回る) | |
| 主な部品 | 界磁(主磁極+界磁巻線)・継鉄、補極、補償巻線、ブラシ | 電機子(鉄心+巻線)・整流子、軸 |
| 役割 | 磁束をつくる/磁路になる/外部と電気をやりとりする | 起電力とトルクを発生する/電流の向きを切り替える |
| 注意点 | ブラシは固定側(回転する整流子に接触する) | 整流子は回転側 |
(ア)=界磁、(イ)=電機子。問題文が「固定子は、(ア)、継鉄などによって」「回転子は、(イ)、整流子などによって」と、それぞれの相棒まで書いてくれているので、「継鉄とセットなら界磁」「整流子とセットなら電機子」と読めば確実です。
ブラシと整流子を混同しないこと。「ブラシが回る」と思ってしまうと固定子・回転子の振り分けが崩れます。回るのは整流子、それに擦れているのがブラシ——ブラシは外部回路につながっているので回れません。

(ウ)(エ):なぜ電機子鉄心は積層するのか
回転子(電機子)の立場になって考えるのがコツです。電機子は回転しながらN極の下 → 極の間 → S極の下 → 極の間 … と通過していきます。つまり電機子鉄心の中の磁束は、向きが周期的に反転する交番磁束です。
(ウ)=交番。「一定」と答えたくなるのは、固定子から見ているからです。磁極そのものは動かないので、外から見れば磁束は一定に見えます。しかし問われているのは電機子鉄心を通る磁束——回転する側から見ると交番しているのです。
☝️ ひっかけの作り方:「一定」は、視点を固定子側に置いてしまった人が選ぶように用意されたダミーです。「電機子鉄心は」という主語を確認するだけで防げます。
交番磁束が通る鉄心では渦電流が流れ、渦電流損として熱になります。これを減らすため、薄いけい素鋼板の表面を絶縁して積み重ねた「積層鉄心」を使います——(エ)=積層鉄心。
| 鉄損の種類 | 原因 | 対策 | 効き方 |
| 渦電流損 | 鉄心内に誘導される渦状の電流 | 積層する(板を薄く・絶縁) | 板厚の2乗に比例して減る |
| ヒステリシス損 | 磁区の向きを反転させる仕事 | けい素鋼板を使う | 材料の保磁力を小さくする |
「けい素鋼板を薄く積層する」という対策が両方に効くのがポイントです。積層は渦電流損に、けい素の添加はヒステリシス損に効きます。選択肢の「鋳鉄」は継鉄(磁路)には使われますが、交番磁束の通る電機子鉄心には不適です。

(オ):巻線のつなぎ方は2種類しかない
電機子巻線のコイル相互のつなぎ方は重ね巻と波巻の2種類だけです。「直列巻」という用語は存在しません——選択肢に出てきたら誤りだと即断できます(波巻を「直列巻」と呼ぶ流儀もありますが、試験では使われません)。
| 重ね巻(並列巻) | 波巻(直列巻とも) | |
| 結び方 | 隣の整流子片へ折り返す | 1極対ぶん離れた整流子片へ渡る |
| 並列回路数 a | a=p(極数と同じ) | a=2(極数によらない) |
| 得意な仕様 | 低電圧・大電流 | 高電圧・小電流 |
| ブラシ | 極数だけ必要 | 2個で足りる |
| 均圧結線 | 必要 | 原則不要 |
(オ)=重ね巻。問題文が「(オ) と波巻とがある」と書いているので、波巻でないほう=重ね巻で確定です。
なお「二層巻」という語も出てきますが、これは巻線の配置の話で、重ね巻・波巻とは別の観点です。1つのスロットにコイル辺を上下2段に入れることを指し、直流機ではこれが標準です。

整流子とブラシは何をしているのか
直流機の構造でいちばん理解しづらいのが整流子とブラシです。ここを押さえておくと、構造問題だけでなく電機子反作用や整流の問題にもつながります。
電機子巻線の中を流れている電流は、実は交流です。電機子は回転しながらN極の下とS極の下を交互に通るので、各コイルに誘導される起電力は周期的に向きが変わる交流になります。
ところが直流機の端子に出てくるのは直流です。この交流→直流の変換を機械的に行っているのが整流子とブラシ——コイルの向きが反転するのと同じタイミングで、外部回路につながる接点を切り替えることで、外から見た電流の向きを一定に保っています。
| 場所 | 電流の向き | 備考 |
| 電機子巻線の中 | 交流(回転に応じて反転) | だから電機子鉄心には交番磁束が通り、積層が必要 |
| 整流子とブラシの境目 | ここで切り替わる | 切り替えの瞬間に火花が出やすい(整流の問題) |
| ブラシから外部へ | 直流 | 端子に出るのは向きの変わらない電流 |
「電機子鉄心に交番磁束が通る」という本問の(ウ)と、「電機子巻線の電流は交流」という事実は、同じ現象を別の側から見たものです。どちらも「回転子から見ると磁界が反転して見える」ことから出ています。
この機械的な整流こそが直流機の弱点でもあります。ブラシは摩耗しますし、火花も出ます。ブラシレスDCモータが「ブラシレス」を名乗って登場したのは、この機械的な整流を半導体スイッチによる電子的な整流に置き換えたからです。直流機の構造を理解しておくと、なぜブラシレス化が進んだのかも自然に分かります。
★同一問題:令和5年度上期 A問題1とまったく同じ
この問題は令和5年度上期 A問題1と問題文が一字一句同じです。空欄の位置も、答えとなる5つの語句も完全に同じ。違うのは誤答選択肢の中身だけで、正解はどちらも(1)です。
今回はたまたま正解の番号まで一致していますが、これは偶然です。実際、直流機の別の頻出問題(補極と補償巻線)では、同じ問題文・同じ答えなのに正解番号が(3)と(5)で違うという例があります。番号ではなく中身で覚える——この習慣がないと、いつか必ず外します。
10年ちょっとの間にそのまま再出題されているということは、直流機の構造は「落としてはいけない基本」だと出題側が考えている証拠です。「界磁・電機子・交番・積層鉄心・重ね巻」の5語をセットで暗唱できるようにしておけば、次に出たときも確実に取れます。
⏱️ 本番での進め方
① 「継鉄とセット=界磁」「整流子とセット=電機子」と相棒で覚える。
② (ウ)は主語を確認:「電機子鉄心は」なら回転側の視点 ⇒ 交番。
③ 交番磁束 → 渦電流 → 積層鉄心の3段論法。鋳鉄は継鉄用。
④ 「直列巻」は存在しない用語。見かけたらその選択肢は誤り。
💡 覚え方
「界磁・電機子・交番・積層鉄心・重ね巻」の5語セットで丸ごと覚える。固定子=界磁+継鉄+ブラシ/回転子=電機子+整流子(ブラシは固定、整流子は回転)。電機子鉄心は交番磁束が通るので積層鉄心(渦電流損は板厚の2乗で減る)。つなぎ方は重ね巻(a=p)と波巻(a=2)の2種類だけ。
⚠️ よくある間違い
(ウ)を「一定」とするのが最頻です。視点が固定子側にずれているためで、「電機子鉄心を通る磁束」=回転する側から見た磁束だと確認すれば交番だと分かります。もう一つは(エ)を「鋳鉄」とする誤り——鋳鉄は継鉄(磁路)用で、交番磁束が通る電機子鉄心には渦電流損が大きすぎて使えません。

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