誘導機16【電験3種 機械】Y−Δ始動トルクの計算とは?令和5年下期 A問題4 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 令和5年度下期 A問題4 Y-Δ始動でトルクも3分の1!その理由は?

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「Y−Δ始動とトルク」は1/3の法則を使いこなせるかを試す頻出テーマです。本記事では、令和5年度下期 A問題4「Y始動トルクから定格トルクを逆算する」問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

計算は掛け算と割り算の2回だけ。「Y始動トルクはΔの1/3」→ ×3、「Δ始動トルクは定格の240 %」→ ÷2.4。条件文を数直線のように並べられれば10秒で解けます。

目次

令和5年度下期 機械科目 A問題4:問題文と選択肢

3つのトルクを大小順に並べてから計算に入ります。

電験3種 機械科目 令和5年度下期 A問題4 問題文(Y−Δ始動トルクの計算とは)
令和5年度下期 機械科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4

電験3種 機械科目 【誘導機】 令和5年度下期 A問題4

あるかご形三相誘導電動機を定格電圧で Y-Δ始動したところ、始動トルクは 60 N・m であった。また、Δ結線での全電圧始動時(定格電圧)の始動トルクは定格運転時の 240 %である。この電動機の定格運転時のトルクの値 [N・m] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 20  (2) 25  (3) 35  (4) 43  (5) 75

出題のポイント:3つのトルクを数直線に並べる

この問題にはトルクが3つ登場します。どれとどれの比なのかを取り違えると、掛けるべきところで割ってしまいます先に大小関係を並べてしまうのが確実です。

何のトルクか本問での値隣との関係
① Y始動トルクY-Δ始動でYにしたときの始動トルク60 N·m(与えられた値)
② Δ全電圧始動トルクΔのまま直入れしたときの始動トルク180 N·m①の3倍
③ 定格運転トルク定格で回っているときのトルク75 N·m(求める値)②の1/2.4

大きい順に ② 180 > ③ 75 > ① 60——始動トルクがいちばん大きいのはΔ直入れ、いちばん小さいのがY始動です。この並びを先に書いてしまえば、計算の向きを間違えようがありません

Y-Δ始動の3つの比

相電圧 \( \dfrac{1}{\sqrt3} \)  線電流 \( \dfrac{1}{3} \)  トルク \( \dfrac{1}{3} \)

\( T\propto V^2 \;\Rightarrow\; \left(\dfrac{1}{\sqrt3}\right)^2=\dfrac{1}{3} \)

1/√3 なのは電圧だけ電流もトルクも1/3——この非対称が引っかけどころです。

Y結線とデルタ結線の相電圧および始動トルクの三分の一関係を示す図
Y始動トルク60 N・mはΔ全電圧始動トルク180 N・mの1/3です。

2回の換算で答えが出る

\( T_\Delta=3\,T_Y=3\times60=180\ \mathrm{N\cdot m} \)
❶ Y始動 → Δ全電圧始動
Yで始動するとΔの1/3なので、遡るには3倍する。
\( T_n=\dfrac{T_\Delta}{2.40}=\dfrac{180}{2.40}=75\ \mathrm{N\cdot m} \)
❷ Δ全電圧始動 → 定格運転
「Δ全電圧始動時の始動トルクは定格運転時の240 %」=定格の2.40倍。
答え定格運転時のトルク 75 N·m(5) / 検算:75×2.40=180、その1/3が60 ✓
Y始動60デルタ始動180定格運転75ニュートンメートルの三つのトルクを比較した図
Y始動→×3→Δ始動→÷2.4→定格運転の順に換算します。
Y-Δ始動の1/3法則(Y結線は相電圧1/√3、線電流1/3、始動トルク1/3)
Y−Δ始動:線電流1/3・始動トルク1/3
Yデルタ始動から定格トルク75ニュートンメートルを求める二段階の計算
定格トルクは75 N・mで、正解は選択肢5です。

選択肢はすべて「係数の取り違え」

選択肢そう出る計算どこを間違えたか
(1) 2060 ÷ 33倍すべきところを3で割った(向きが逆)
(2) 2560 ÷ 2.40Y-Δの1/3を忘れた(240 % だけで割った)
(3) 3560 ÷ √3トルク比を1/√3とした(電圧比と混同)
(4) 4360 × √3 ÷ 2.403倍ではなく√3倍にした
(5) 7560 × 3 ÷ 2.40正解

「3で割る/2.40で割る/√3で割る/√3倍する/3倍する」が全部並んでいます。方向で絞ることもできます——Y始動トルク60 N·m は3つの中でいちばん小さいのですから、定格トルクは60より大きいはず。(1)(2)(3)(4)はすべて60未満なので、この1点だけで(5)に決まります

なぜトルクは電圧の2乗に比例するのか

「T∝V²」は覚えるものではなく、2つの比例をつないだ結果です。

2つの比例が掛け算になる

\( T\propto \phi\,I_2 \)  \( \phi\propto V \)  \( I_2\propto E_2\propto\phi\propto V \)

\( \Rightarrow\; T\propto V\times V=V^2 \)

磁束が電圧に比例し、二次電流もその磁束が作る起電力に比例する——両方が電圧に比例するので、積は2乗になります

だから電圧が80 % に下がるとトルクは64 % に落ちます。電圧低下の影響がトルクでは倍加して現れる——この感覚は電圧低下の問題でもそのまま使えます

電圧の比トルクの比具体例
1/√3=0.5771/3=0.333Y-Δ始動
0.800.64電源電圧が20 % 低下
0.900.81電源電圧が10 % 低下
0.500.25始動補償器の50 % タップ

Y-Δ始動が使える負荷か、数字で判定する

本問の答えが出たところで、実務的な確認をしておきましょう。この電動機はY始動で本当に始動できるのか——Y始動トルク60 N·m と定格トルク75 N·m を比べます

\( \dfrac{T_Y}{T_n}=\dfrac{60}{75}=0.80 \)
Y始動トルクは定格の80 %
負荷トルクが定格の80 % を超えていたら始動できない

これは決して余裕のある数字ではありません。負荷が軽い状態で始動できる機械にしか、Y-Δ始動は使えないということです。

負荷の種類始動時に必要なトルクY-Δ始動
ファン・ポンプ(二乗低減トルク)低速では非常に小さい(速度の2乗で増える)向いている
コンベヤ・工作機械(定トルク)低速でも定格に近いトルクが要る厳しい
圧縮機(負荷をかけたまま始動)始動の瞬間から大きい使えない

ファンやポンプの負荷トルクは回転速度の2乗に比例します。始動直後の低速域ではほとんどゼロなので、Y始動の弱いトルクでも十分に加速できますY-Δ始動が送風機やポンプで広く使われているのは、この負荷特性のおかげです。

逆に圧縮機のように「最初から重い」負荷では、Y結線のまま加速できずに止まってしまいます。その場合は始動補償器やインバータ、あるいは無負荷で始動してから負荷をかける(アンローダ)といった対策が要ります。

⏱️ 本番での進め方
3つのトルクを大小順に並べてから計算:Δ始動 > 定格 > Y始動。
電圧1/√3、電流とトルクは1/3——1/√3 なのは電圧だけ。
答えは60より大きいはず。それだけで(1)〜(4)が消える。
240 % は「定格の2.40倍」。定格に戻すには2.40で割る。

★同型問題:令和7年度下期にも同じ形で出ている

この問題は令和7年度下期 A問題4とまったく同じ形で再出題されています。数値だけを差し替えた双子です。

令和5年度下期 A問題4令和7年度下期 A問題4
Y始動トルク(与えられる値)60 N·m49.0 N·m
Δ全電圧始動トルク定格の240 %定格の210 %
計算60×3÷2.4049.0×3÷2.10
定格運転トルク75 N·m70.0 N·m
正解の番号(5)(5)

解き方は完全に同じ「×3 して ÷(何 %)」の2手です。変わっているのは与えられたトルクと、Δ全電圧始動時の倍率だけ——240 % か210 % かという違いにすぎません。

2年しか離れていない再出題ですから、次に出るときも同じ形と考えてよいでしょう。数値が変わっても手順が変わらない問題は、練習の費用対効果が最も高い——この2本を続けて解いて、手が勝手に動くようにしておく価値があります。

偶然ですが、どちらも正解が(5)です。ただしこれは信用してはいけない一致で、直流機では同じ問題で番号が(4)と(2)に分かれた例がありますあくまで値を出してから選択肢を見てください

💡 覚え方
Y-Δ始動は「電圧1/√3・電流1/3・トルク1/3」T∝V² なのは、磁束も二次電流も電圧に比例するから本問は「×3 して ÷2.40」の2手Y始動トルクが定格の80 % しかないので、Y-Δ始動は軽負荷始動できる機械(ファン・ポンプ)に限られる

⚠️ よくある間違い
240 % を「Y始動トルクの240 %」と読んで 60÷2.40=25 とするのが本問最大の罠です(選択肢(2))。問題文は「Δ結線での全電圧始動時の始動トルクは定格運転時の240 %」——比べているのはΔ始動と定格です。もう一つはトルク比を1/√3とすること(選択肢(3))。

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