電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「三相誘導電動機の構造」は毎年のように問われる基礎の基礎です。本記事では、令和4年度下期 A問題3「かご形と巻線形の構造穴埋め」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
鍵は部品名と機種の対応——「端絡環=かご形」「スリップリング=巻線形」「整流子=直流機」。この3対応だけで、選択肢は一気に絞れます。
令和4年度下期 機械科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和4年度下期 A問題3
三相誘導電動機は、(ア)磁界を作る固定子及び回転する回転子からなる。回転子は、(イ)回転子と(ウ)回転子との2種類に分類される。(イ)回転子では、回転子溝に導体を納めてその両端が(エ)で接続される。(ウ)回転子では、二次電流を(オ)、ブラシを通じて外部回路に流すことができる。
(1) 回転・かご形・巻線形・スリップリング・整流子 (2) 交番・かご形・巻線形・端絡環・スリップリング (3) 回転・巻線形・かご形・スリップリング・整流子 (4) 回転・かご形・巻線形・端絡環・スリップリング (5) 交番・巻線形・かご形・スリップリング・整流子
本問は平成21年度 A問題3(誘導機49)とほぼ同一の再出題です。部品名の対応表は何度でも得点になります。
出題のポイント:2か所埋めれば選択肢が1つに決まる
構造の穴埋めは全部を埋める必要がありません。確実に分かる空欄から選択肢を切っていくほうが速くて安全です。
| 段階 | 根拠 | 残る選択肢 |
| (ア)=回転 | 三相巻線が作るのは回転磁界(交番磁界は単相) | (2)(5)が消えて(1)(3)(4) |
| (エ)=端絡環 | 「両端が接続される」=短絡する部品 | (1)(3)が消えて(4)に確定 |
(イ)(ウ)(オ)は見なくても答えが出ます。時間が足りないときは、この切り方で先に進むのが得策です。
本問は平成21年度 A問題3(誘導機49)とほぼ同一の再出題です。部品名の対応表は何度でも得点になります。

部品の名前が機種を教えてくれる
| 部品 | どの機種のものか | 形と役割 |
| 端絡環(エンドリング) | かご形誘導機 | 導体棒の両端を短絡する輪。二次回路が閉じる |
| スリップリング | 巻線形誘導機・同期機の励磁 | 切れ目のない輪。回転する巻線と外部回路をつなぐ |
| 整流子 | 直流機 | 切れ目のある円筒。電流の向きを切り替える |
スリップリングと整流子はどちらもブラシと接触する回転部品ですが、スリップリングは電流をそのまま渡すだけ、整流子は向きを切り替える——役割がまったく違います。誘導機に整流子は存在しません。
空欄の答え
(ア)=回転(三相巻線が作る磁界)/(イ)=かご形・(エ)=端絡環(導体の両端を接続する側)/(ウ)=巻線形・(オ)=スリップリング(二次電流を外部へ流せる側)。


固定子はどう作られているのか
問題文は回転子の分類が中心ですが、「(ア)磁界を作る固定子」も立派な構造の話です。固定子側の作りも押さえておきましょう。
| 部分 | 何でできているか | なぜそうするのか |
| 固定子鉄心 | 0.35〜0.5 mm のけい素鋼板を絶縁して積層 | 渦電流損を減らす(板厚の2乗に比例するので薄いほど良い) |
| 固定子巻線 | スロットに納めた三相巻線 | 空間120°ずつずらして配置し、回転磁界を作る |
| 空隙(エアギャップ) | 0.3〜数 mm の空気層 | 狭いほど励磁電流が減って力率が上がるが、機械的な限界がある |
鉄心を薄い鋼板の重ね合わせにするのは、渦電流の通り道を細切れにするためです。塊のままだと鉄心の中を大きな渦電流が回って発熱します——変圧器の鉄心が成層されているのと同じ理由です。
空隙は誘導機の性能を左右する最重要寸法です。空気は鉄に比べて磁気抵抗が桁違いに大きいので、わずか0.3 mm の隙間が磁気回路のほとんどの抵抗を占めます。誘導電動機の励磁電流が定格の30〜50 % にもなるのはこのためで、変圧器(数 %)と大きく違う点です。
巻線形の二次回路には何をつなぐのか
(オ)のスリップリングで外部に引き出した二次回路には、何をつなぐのでしょうか。時代とともに答えが変わってきたところが面白い部分です。
| つなぐもの | 何ができるか | 評価 |
| 始動抵抗器 | 比例推移で始動トルクを最大にする | 古典的だが確実。クレーン・巻上機 |
| 速度制御用の可変抵抗 | 滑りを変えて減速する | 滑りの分が熱=効率が悪い |
| 二次励磁装置(セルビウス方式) | 捨てるはずの電力を電源へ返す | 効率がよい。大形ポンプで使われた |
| 短絡(何もつながない) | かご形と同じ状態で運転 | 始動が終われば短絡するのが普通 |
始動が終われば二次側は短絡してしまうのが標準的な使い方です。つまり巻線形は「始動のときだけ巻線形、運転中は実質かご形」として使われることが多いのです。わざわざスリップリングを付けているのは、始動の数秒間のためだと言ってもよいでしょう。
その始動の数秒のために、ブラシの保守という永続的な負担を背負う——だからインバータが安くなると巻線形の出番が急速に減りました。いまも使われているのは、インバータでは対応しきれない超大容量や、既設設備の更新まで待つケースが中心です。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)と(エ)の2か所だけで(4)に確定する。全部埋めなくてよい。
② 部品名で機種を判定:端絡環=かご形、スリップリング=巻線形、整流子=直流機。
③ 三相なら必ず回転磁界。交番磁界は単相の話。
④ 「両端が接続される」は短絡の言い換え——端絡環しかない。
なぜ回転子は磁界に追いつけないのか
問題文の「(ア)磁界を作る固定子及び回転する回転子」——この2つの回転速度は決して一致しません。その理由が、誘導機という名前そのものを説明しています。
仮に回転子が磁界とぴったり同じ速さで回っていたとしましょう。
| 回転子の状態 | 磁界との相対速度 | 誘導起電力 | 二次電流 | トルク |
| 同期速度で回転(s=0) | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 少し遅れて回転(s>0) | sns | sE2 | 流れる | 発生する |
磁界と同じ速さで回っていたら、回転子は磁界を切りません。切らなければ起電力も電流もトルクも生じない——トルクがなければ、摩擦だけで必ず減速します。
つまり誘導機は「遅れていないとトルクが出ない」機械です。必ず滑りが存在するので、同期機に対して「非同期機(asynchronous machine)」とも呼ばれます。滑りは欠陥ではなく、動作の必要条件なのです。
定格運転時の滑りは、小容量機で3〜5 %、大容量機で1〜2 % 程度です。大形機ほど二次抵抗の割合が小さくなるので、少ない滑りで必要な電流を作れる——滑りが小さいほど効率が良い(二次銅損=sP2)ことも合わせて押さえておきましょう。
★同一問題:平成21年度 A問題3の再出題
この問題は平成21年度 A問題3とほぼ同一の再出題です。5つの空欄の答えも、正解の番号まで同じでした。
| 平成21年度 A問題3 | 令和4年度下期 A問題3(本問) | |
| (ア) | 回転 | 回転(同じ) |
| (イ)(ウ) | かご形・巻線形 | かご形・巻線形(同じ) |
| (エ)(オ) | 端絡環・スリップリング | 端絡環・スリップリング(同じ) |
| 正解の番号 | (4) | (4) |
13年ぶりの再出題です。これだけ長い間隔を置いても同じ問題が出るということは、「部品名から機種が言えるか」が誘導機の基礎として一貫して重視されているということにほかなりません。
端絡環・スリップリング・整流子の3対応は、構造問題の万能キーです。この3つさえ即答できれば、誘導機・直流機・同期機のどの構造問題でも選択肢を大きく削れます。
💡 覚え方
「かごは環で閉じ、巻線はリングで外へ」。端絡環=かご形/スリップリング=巻線形/整流子=直流機。三相=回転磁界。固定子鉄心が成層されているのは渦電流損を減らすため、空隙が狭いのは励磁電流を減らすため。巻線形の存在理由は二次回路に外部抵抗を入れられること。
⚠️ よくある間違い
(オ)に整流子を選ぶのが典型です(3つの選択肢に仕込まれています)。整流子は直流機の部品で、誘導機には存在しません。もう一つは(イ)(ウ)の順序を逆にすること——「導体の両端を接続」がかご形、「外部回路に流せる」が巻線形です。

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