電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「回転磁界」は誘導機のすべての出発点となる基礎テーマです。本記事では、平成25年度 A問題3「回転磁界に関する誤り探し」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
核心は選択肢(3)の「1線断線」。交番磁界は正転・逆転の回転磁界の合成で、静止時は両者のトルクが打ち消し合って始動トルクが零——「正回転を始める」は誤りです。
平成25年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成25年度 A問題3(要約)
三相誘導電動機の回転磁界に関する記述として誤っているものを選ぶ。(1) 誘導機の一次励磁と同期機の電機子反作用は回転磁界として同じ現象。(2) 電気角120°ずらした3組のコイルに三相交流で回転磁界、2線入換で逆転。(3) 交番磁界は正転と逆転の回転磁界の合成。1線断線時は交番磁界だが正転の回転磁界が残っているので、静止時に負荷が軽ければ正回転を始める。(4) 隣接磁極間の幾何学角は極数で変わるが電気角は全て180°。(5) 1周期で電気角360°回転、極数を増やすと回転速度は下がる。
出題のポイント:静止時と回転中では答えが逆になる
(3)は前半が完全に正しく、最後の一文だけが誤りという作りです。「交番磁界は正転と逆転の回転磁界の合成」——ここまでは教科書どおり。問題は「静止時に負荷が軽ければ正回転を始める」という結びです。
| 回転子の状態 | 正転磁界に対する滑り | 逆転磁界に対する滑り | 合成トルク |
| 静止(s=1) | 1 | 1 | 0(完全に打ち消し合う) |
| 正方向に回転中 | 小さい(強い正トルク) | 2に近い(弱い逆トルク) | 正(回り続ける) |
静止時は正転磁界も逆転磁界も同じ滑り1ですから、両者のトルクは大きさが等しく向きが逆——完全に打ち消し合ってゼロです。「負荷が軽ければ」も何も、そもそもトルクが存在しません。

5つの記述を判定する
| 記述 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | 誘導機の一次励磁と同期機の電機子反作用は同じ現象 | 正しい | どちらも三相巻線が作る回転磁界 |
| (2) | 電気角120°ずらした3組のコイル+三相交流で回転磁界、2線入換で逆転 | 正しい | 相順が逆になれば磁界の回る向きも逆 |
| (3) | 1線断線・静止時に負荷が軽ければ正回転を始める | 誤り ✗ | 静止時の始動トルクはゼロ |
| (4) | 隣接磁極間の幾何学角は極数で変わるが電気角は全て180° | 正しい | 電気角=幾何学角×(p/2) |
| (5) | 1周期で電気角360°回転、極数を増やすと回転速度は下がる | 正しい | Ns=120f/p の言い換え |


いちばん確かな反証は「単相モータには始動巻線がある」こと
もし(3)が正しければ、単相誘導電動機に始動装置は要らないはずです。ところが実際には、コンデンサや始動巻線、くま取りコイルといった仕掛けが必ず付いています。
身の回りの製品が、そのまま反証になっている——扇風機にも換気扇にもコンプレッサにも、始動のための部品が入っているのは、交番磁界だけでは回り出せないからにほかなりません。
「知識で判定できないときは、実物を思い浮かべる」——論説問題では有効な検算になります。
電気角と幾何学角
(4)(5)で使われている「電気角」は、誘導機・同期機で頻出の概念です。実際の角度(幾何学角)とは別物なので、換算を押さえておきましょう。
| 極数 | 極対数 p/2 | 隣接磁極間の幾何学角 | 隣接磁極間の電気角 | 同期速度(50 Hz) |
| 2極 | 1 | 180° | 180° | 3 000 min−1 |
| 4極 | 2 | 90° | 180° | 1 500 min−1 |
| 6極 | 3 | 60° | 180° | 1 000 min−1 |
| 8極 | 4 | 45° | 180° | 750 min−1 |
「隣り合うN極とS極の間は、極数によらず必ず電気角180°」——これが電気角という考え方の要点です。電気的に見れば、磁極が1組通り過ぎることが1周期に相当するので、磁極の数だけ「電気的な1周」が詰まっていることになります。
だから極数を増やすと速度が下がるのです。電源の1周期で進めるのは電気角360°=磁極2つ分ですから、磁極が多いほど1周するのに時間がかかります——Ns=120f/p という式の意味そのものです。
運転中の1線断線(欠相運転)はなぜ危険か
(3)は「静止時」の話でしたが、「運転中に1線が切れた場合」は結論が変わります。回っている最中なら、正転トルクが優勢なので回り続けます。
ところが、これが危険なのです。回り続けてしまうので気づきにくく、その間に電動機が焼けていきます。
| 三相正常運転 | 1線断線(欠相運転) | |
| 電流の流れ方 | 3本に分散 | 残る2本に集中 |
| 電流の大きさ | 定格 | 同じ出力なら1.5〜2倍 |
| 銅損 | 定格 | 2〜4倍(電流の2乗) |
| トルク | 一定 | 脈動する(振動・騒音) |
| 結果 | — | 過熱して焼損する |
「回っているから大丈夫」ではありません。むしろ止まってくれたほうが安全なくらいで、回り続けながら焼けていくのが欠相運転の怖さです。
だから欠相を検出して止める保護(欠相保護つきサーマルリレー、3Eリレー)が設けられます。「静止時は回らない/運転中は回り続けて焼ける」——この2つをセットで覚えると、(3)の判定にも実務の理解にもつながります。
⏱️ 本番での進め方
① 「静止時」と「運転中」を分けて読む。断線問題は「いつ断線したか」で結論が変わる。
② 静止時は正転・逆転のトルクが完全に打ち消す——負荷の軽重は関係ない。
③ 実物で検算:単相モータに始動巻線があるのが何よりの反証。
④ 電気角=幾何学角×(p/2)。隣接磁極間は極数によらず電気角180°。
なぜ2線を入れ替えると逆転するのか
(2)の「2線入換で逆転」は、知識としては有名ですが、理由まで言えると理解が固まります。
回転磁界の向きは、3つの巻線に電流のピークが訪れる順番で決まります。U→V→W の順にピークが来れば、磁界はその向きに回る——ただそれだけのことです。
| 接続 | 電流のピークが来る順 | 磁界の回る向き |
| U-V-W(正常) | U → V → W | 正転 |
| V と W を入れ替える | U → W → V | 逆転 |
| U と V を入れ替える | V → U → W(=U → W → V と同じ巡り) | 逆転 |
| 3線すべてを入れ替える | 巡る順は変わらない | 正転のまま |
どの2本を入れ替えても逆転しますし、3本すべてをずらしても順番の巡りは変わらないので正転のままです。「入れ替えるのは必ず2本」——現場で相順を直すときの基本でもあります。
この性質は誘導機だけのものではありません。同期電動機でも、三相の回転磁界を使う機器はすべて同じ——(1)が「誘導機の一次励磁と同期機の電機子反作用は同じ現象」と述べているのと同じ根っこです。三相巻線が回転磁界を作るという一点で、両者はつながっています。
💡 覚え方
「交番磁界=正転+逆転、静止なら引き分け(始動トルク零)、回転中なら勝ち越し」。電気角=幾何学角×極対数で、隣接磁極間は常に電気角180°。運転中の欠相は回り続けながら焼けるので、止まる静止時より危険。
⚠️ よくある間違い
「正転成分が残っているのだから回り出すだろう」と直感で流すのが本問の罠です。逆転成分もまったく同じだけ残っています。もう一つは電気角と幾何学角の換算で、極数 p と極対数 p/2 を取り違えること——掛けるのは極対数(p/2)です。

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