電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「固定子と回転子の分類」は誘導機の全体像を一枚で確認できる基礎テーマです。本記事では、令和3年度 A問題4を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
固定子側は「三相→回転磁界、単相→交番磁界」、回転子側は「巻線形=スリップリングで二次電流を制御、かご形=端絡環」。磁界2種×回転子2種の分類表が頭にあれば完答できます。
令和3年度 機械科目 A問題4:問題文と選択肢
磁界2種と回転子2種の分類表を先に作ってから読み進めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
電験3種 機械科目 【誘導機】 令和3年度 A問題4(要約)
a. 固定子の分類:三相交流を三相巻線に流すと(ア)磁界が発生。単相交流では(イ)磁界が発生し、これは正逆両方向の(ア)磁界が合成されたもの。コンデンサ始動形単相誘導電動機では位相を進めた電流を始動巻線に流して始動トルクの発生と回転方向の決定を行う。b. 回転子の分類:巻線形は巻線を(ウ)とブラシを介して外部抵抗回路に接続し(エ)電流を変化させて特性制御。かご形は導体棒を(オ)に接続する。
(1) 回転・交番・スリップリング・二次・端絡環 (2) 交番・回転・整流子・二次・継鉄 (3) 交番・回転・スリップリング・一次・継鉄 (4) 回転・交番・整流子・一次・端絡環 (5) 交番・固定・スリップリング・二次・継鉄
出題のポイント:磁界2種 × 回転子2種の分類表
この問題は誘導機の全体像を一枚で確認するタイプです。固定子側で「三相か単相か」、回転子側で「かご形か巻線形か」——2×2の分類が頭に入っていれば、読みながら埋まります。
| 何を流すか | できる磁界 | 自力で始動できるか | |
| 三相固定子 | 三相交流 | 回転磁界 | できる |
| 単相固定子 | 単相交流 | 交番磁界 | できない(始動巻線が要る) |
| 二次回路の端は | 使う部品 | 二次抵抗を変えられるか | |
| かご形 | 短絡(閉じている) | 端絡環 | 変えられない |
| 巻線形 | 外部へ引き出す | スリップリング+ブラシ | 変えられる(比例推移) |

空欄を確定する
(ア)(イ):三相は回転、単相は交番
三相交流を空間的に120°ずらして置いた3組の巻線に流すと、合成磁界が一定の速さで回ります——回転磁界です。単相では巻線が1組しかないので磁界は同じ場所で強弱と向きを繰り返すだけ——交番磁界になります。(ア)=回転、(イ)=交番。
問題文が「これは正逆両方向の(ア)磁界が合成されたもの」と書いているのが決定的なヒントです。合成されて交番になるのだから、(ア)は回転——問題文自身が答えを保証してくれています。
(ウ)(エ)(オ):部品の名前で機種が決まる
「巻線を(ウ)とブラシを介して外部抵抗回路に接続」——外部へ引き出す部品はスリップリングです。「導体棒を(オ)に接続する」——両端を短絡する部品は端絡環。変化させるのは回転子側の電流ですから(エ)=二次。
| 部品 | どの機種のものか | 何をしているか |
| 端絡環(エンドリング) | かご形誘導機 | 導体棒の両端を短絡して二次回路を閉じる |
| スリップリング | 巻線形誘導機・同期機の励磁 | 連続した輪。回転する巻線と外部回路をつなぐ |
| 整流子 | 直流機 | 切れ目のある円筒。電流の向きを切り替える |
| 継鉄(ヨーク) | すべての回転機 | 磁気回路の枠。導体の接続部品ではない |
「継鉄」と「整流子」は機種違いのダミーです。継鉄は磁気回路の枠であって導体をつなぐ部品ではなく、整流子は直流機のもの——どちらも誘導機の二次回路の話には出てきません。



なぜ単相では回転磁界ができないのか
問題文の「正逆両方向の回転磁界が合成されたもの」は、式で書くとはっきりします。
正転磁界と逆転磁界が同じ大きさで存在している——だから停止しているときは正転トルクと逆転トルクがぴったり打ち消し合って、合計トルクがゼロになります。単相誘導電動機が自力で始動できない理由がこれです。
| 回転子の状態 | 正転磁界に対する滑り | 逆転磁界に対する滑り | 合計トルク |
| 停止 | 1 | 1 | 0(打ち消し合う) |
| 正方向に回転中 | 小さい(強い正トルク) | 1に近い(弱い逆トルク) | 正(回り続ける) |
| 逆方向に回転中 | 1に近い | 小さい | 負(そのまま逆回転を続ける) |
いったんどちらかに回してやれば、その向きのトルクが勝って回り続けます。単相誘導電動機は「始動さえできれば動く」機械——だから始動のためだけの仕掛けが必要になるのです。
単相誘導電動機の始動方式
問題文に出てくる「コンデンサ始動形」は、その仕掛けのひとつです。主巻線とは位相のずれた電流を流す第2の巻線を置いて、擬似的な回転磁界を作る——これが共通の発想です。
| 方式 | 位相をずらす方法 | 始動トルク | 主な用途 |
| 分相始動形 | 始動巻線を細く(抵抗大)してずらす | 小さい | 小形送風機 |
| コンデンサ始動形 | 始動巻線にコンデンサを直列に入れる | 大きい | ポンプ・コンプレッサ |
| コンデンサ運転形 | 運転中もコンデンサを残す | 小さいが運転が静か | 扇風機・換気扇 |
| くま取りコイル形 | 磁極の一部を短絡環で囲う | 非常に小さい | 極小形(構造が最も簡単) |
コンデンサが最も大きな始動トルクを出せるのは、コンデンサなら位相を90°近くまで進められるからです。抵抗でずらす分相始動では30°程度が限界——90°に近いほど、三相の回転磁界に近い状態が作れます。
始動巻線は始動が終われば遠心力スイッチで切り離されるのが普通です(コンデンサ運転形を除く)。連続通電を想定していない細い巻線なので、切り離さないと焼けてしまうからです。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は問題文の「正逆両方向の(ア)磁界が合成」で確定——合成されて交番になるのだから回転。
② 部品名で機種を判定:スリップリング=巻線形、端絡環=かご形、整流子=直流機、継鉄=磁気回路の枠。
③ (ア)だけで(2)(3)(5)が消え、(ウ)で(4)も消える。2か所で確定する。
④ 外部抵抗がつながるのは二次側。一次は電源につながっている固定子。
回転磁界の速さは何で決まるのか
(ア)で確認した回転磁界には、決まった速さがあります。これが同期速度で、誘導機のあらゆる計算の出発点になります。
| 極数 p | 50 Hz での同期速度 | 60 Hz での同期速度 |
| 2極 | 3 000 min−1 | 3 600 min−1 |
| 4極 | 1 500 min−1 | 1 800 min−1 |
| 6極 | 1 000 min−1 | 1 200 min−1 |
| 8極 | 750 min−1 | 900 min−1 |
この表が頭に入っていると、問題文の回転速度を見ただけで極数と滑りの見当がつきます。たとえば「50 Hz で1 455 min−1」とあれば、いちばん近い同期速度は4極の1 500——滑りは (1500−1455)/1500=0.03 と即座に読めます。
誘導電動機の定格回転速度が「1 420」「1 750」といった半端な数字になるのは、同期速度から滑りの分だけ引かれているからです。銘板の回転速度を見れば、その機械の滑りが分かる——実務でもよく使う読み方です。
単相誘導電動機でも同期速度の考え方は同じです。交番磁界を分解した正転成分の速さが同期速度で、回転子はそれより少し遅く回ります。
💡 覚え方
三相=回転磁界、単相=交番磁界(=正逆の回転磁界の合成)。かご形=端絡環で閉じる/巻線形=スリップリングで開く。整流子は直流機、継鉄は磁気回路の枠。単相が自力始動できないのは、停止時に正転トルクと逆転トルクが打ち消し合うから。
⚠️ よくある間違い
(ウ)に整流子を入れるのが典型です。整流子は直流機の部品で、誘導機には存在しません。もう一つは(エ)を「一次」とすること——外部抵抗がつながるのは回転子側=二次です。一次は電源につながる固定子で、そこに抵抗を入れても比例推移は起きません。

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