電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器の短絡試験」は繰り返し出題される定番テーマです。本記事では、令和4年度上期 A問題8で出題された「短絡試験の測定値から漏れリアクタンスを求める」問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
解法はいつも同じ3ステップ。Z=V/I → r=P/I² → x=√(Z²−r²) で機械的に解けます。カギは「電力計が示すのは銅損(r で消費される有効電力)」という一点です。
電力計の値だけ違うほぼ同一の問題が 【機械】平成19年度A問題7 と 【機械】令和6年度上期A問題9 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
令和4年度上期 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和4年度上期 A問題8
単相変圧器の一次側に電流計、電圧計及び電力計を接続して、短絡試験を行う。二次側を短絡し、一次側に定格周波数の電圧を供給し、電流計が 40 A を示すように一次側の電圧を調整したところ、電圧計は 80 V、電力計は 1 000 W を示した。この変圧器の一次側からみた漏れリアクタンスの値 [Ω] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、変圧器の励磁回路のインピーダンスは無視し、電流計、電圧計及び電力計は理想的な計器であるものとする。
(1) 0.63 (2) 1.38 (3) 1.90 (4) 2.00 (5) 2.10
出題のポイント:電圧計・電流計・電力計で三角形を作る
3つの計器がそろえば、インピーダンスを抵抗分とリアクタンス分に分解できます。電圧と電流からインピーダンスの大きさ、電力から抵抗分——残る1辺は三平方の定理で求まります。
短絡試験では、二次側を短絡しているので負荷インピーダンスが0です。測っているのは、巻線抵抗と漏れリアクタンスの直列回路だけ——問題文の「励磁回路のインピーダンスは無視」は、並列側を考えなくてよいという意味になります。

順に計算する
電圧計÷電流計
電力計÷電流の2乗
三平方の残りの辺
選択肢の1.90に一致

R が小さいと X は Z にとても近くなる
本問では Z=2.00 に対して X=1.90——わずか5 %しか違いません。これは偶然ではなく、抵抗分が小さいときの一般的な性質です。
| R/Z の比 | X/Z の比 | 差 |
| 0.1 | 0.995 | 0.5 % |
| 0.2 | 0.980 | 2 % |
| 0.3(本問は0.31) | 0.954 | 4.6 % |
| 0.5 | 0.866 | 13 % |
三平方で「引く」のは R の2乗ですから、R が Z の3割程度なら、その2乗は1割弱——X は Z の95 %ほどにしかならないのです。
この性質は検算に使えます。本問なら「答えは2.00 より少し小さい値」と当たりがつく——選択肢(1) 0.63 や(2) 1.38 は小さすぎ、(4) 2.00 や(5) 2.10 は大きすぎと判断でき、計算前に(3)まで絞れます。
⚠️ よくある間違い
(1) 0.63 Ωは抵抗分 R そのもの、(4) 2.00 Ωはインピーダンス Z そのものです。途中で出てくる値が、そのまま誤答として並んでいます——「何を聞かれているか」を答える直前に確認してください。
(5) 2.10 Ωは \( \sqrt{Z^{2}+R^{2}} \) ——引くべきところを足した値です。X は必ず Z より小さいので、この肢はあり得ません。
漏れリアクタンスは、どこから生まれるのか
本問で求めた1.90 Ω という漏れリアクタンスは、実在するコイルではありません。一次巻線と二次巻線を鎖交しない磁束——漏れ磁束——の効果を、リアクタンスとして表したものです。
理想的な変圧器なら、一次巻線が作った磁束は100 %が鉄心を通って二次巻線に届きます。ところが実際には、一部が巻線の間の空間や巻線の周りを通って戻ってしまう——その分は二次側に電力を運びません。
| 磁束の種類 | 通り道 | 役割 | 等価回路での表現 |
| 主磁束 | 鉄心の中を通り、両方の巻線を鎖交 | 一次から二次へ電力を運ぶ | 理想変圧器 |
| 一次漏れ磁束 | 一次巻線の周りだけを通り、二次を鎖交しない | 電力を運ばず、電圧降下だけ生む | x1 |
| 二次漏れ磁束 | 二次巻線の周りだけを通る | 同上 | x2 |
漏れ磁束の通り道は、鉄心ではなく空気や油です。だから磁気飽和の影響を受けず、漏れリアクタンスはほぼ一定——これが同期機の同期リアクタンス(電機子反作用が主成分で飽和の影響を受ける)との大きな違いになります。
漏れリアクタンスは設計で調整できる
漏れ磁束の量は、一次巻線と二次巻線の位置関係で決まります。2つの巻線を近づければ漏れが減り、離せば増える——設計者はここを操作して %Z を決めています。
| 巻線の配置 | 漏れリアクタンス | 特徴 |
| 同心円筒巻(標準) | 中くらい | 一次と二次を同心円状に重ねる。最も一般的 |
| 交互配置(サンドイッチ巻) | 小さい | 一次と二次を交互に積む。漏れが減る |
| 磁気分路を設ける | 大きい | 意図的に漏らす。磁気漏れ変圧器(定電流特性) |
%Z を小さくすれば電圧変動率が下がりますが、短絡電流は増えます。逆に大きくすれば短絡電流は抑えられるが、電圧変動率が悪化する——この兼ね合いで %Z が決められます。
大容量の変圧器ほど %Z を大きめに設計するのは、短絡電流を系統の遮断器が扱える範囲に抑えるためです。本問で測った漏れリアクタンスは、そうした設計判断の結果——単なる測定値ではなく、意図をもって作られた値だと言えます。
⏱️ 本番での進め方
① Z=80/40=2.00 Ω、R=1 000/1 600=0.625 Ω。
② X=√(4−0.391)=√3.609≒1.90 Ω。
③ X は Z より必ず小さい。2.00 以上の肢は最初に消す。
④ R が小さければ X ≒ Z。答えの当たりをつけてから計算する。
💡 覚え方
「電力は抵抗だけが消費する」——だから電力計から R が出る。そして「Z が斜辺、R と X が直角二辺」——この2文で3計器法は完結します。
出題履歴:同じ設定が3回出ている
電流計40 A・電圧計80 V という設定は、平成19年度 A問題7とまったく同じです(変圧器2:変圧器の短絡試験と漏れリアクタンス)。違うのは電力計の指示だけ(1 200 W と1 000 W)——答えも1.85 Ω と1.90 Ω でわずかに違います。
令和7年度下期 A問題9も同じ型です(変圧器49:短絡試験は3つの計器で三角形を作る)。15年以上にわたって同じ形で出題され続けている——3計器法は、必ず身につけておくべき定番だと言えます。


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