今回は平成29年度 機械科目 A問題9を解説します。電力用コンデンサの誘電体に求められる特性と点検を問う穴埋め問題です。
誘電体は誘電率が高く温度変化が小さいこと、誘電正接(tanδ)が小さく絶縁抵抗・絶縁耐力が高いことが求められます。目視の日常点検と、精密な特別点検があります。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
次の文章は,電力用コンデンサに関する記述である。
電力用コンデンサには,進相コンデンサ,調相コンデンサ及び直列コンデンサがあり,さらにフィルタ用コンデンサやサージ吸収用コンデンサなどを含めることがある。電力用コンデンサは,一般的に複数枚の薄葉誘電体を金属はく電極とともに巻き込み,リード線を引き出した単位コンデンサの集合で構成し,容器などに収納したものである。誘電体には,広い面積にわたり厚さが均一であること,適当な機械的強度を有すること,誘電率が(ア)その温度変化が少ないこと,誘電正接が(イ)絶縁抵抗及び絶縁耐力が(ウ)こと,耐熱性に優れ長期安定性に優れていることなどが求められる。
電力用コンデンサの(エ)点検としては,油漏れ,発錆,がいしの汚損,容器の変形,端子部の過熱及び機器の異常過熱などの有無について確認を行う。また,数年ごとあるいは異常発生時に行う(オ)点検として,(エ)点検項目のほかにコンデンサの静電容量・損失の測定,端子−外箱間の絶縁抵抗測定,耐電圧試験などを実施する。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 高く 小さく 高い 日常 特別 (2) 高く 大きく 高い 日常 特別 (3) 低く 大きく 高い 特別 日常 (4) 高く 小さく 低い 特別 日常 (5) 低く 大きく 低い 特別 日常
(ア)〜(ウ) 誘電体に求められる性質
3つの要求は、すべて理由から導けます——暗記する必要はありません。
| 性質 | 求められる向き | 理由 |
| 誘電率 ε | ★高い | ★同じ静電容量を小さく作れる |
| 誘電率の温度変化 | 小さい | 容量が温度で変わると困る |
| 誘電正接 tanδ | ★小さい | ★損失=発熱が小さい |
| 絶縁抵抗・絶縁耐力 | ★高い | ★薄くできる=小型化 |
誘電率が高いほど小型になる——だから「高く」。絶縁耐力が高ければ厚さd を薄くできて、これも容量を増やす方向です。
誘電正接 tanδ とは何か
理想的なコンデンサでは、電流は電圧より90°進みます——電力を消費しません。ところが実際には、わずかに90°より小さいのです。
その「ずれの角」がδ(誘電損失角)——tanδ は損失電流と充電電流の比を表します。
損失はすべて熱になります——コンデンサの内部で発熱すれば、劣化が進む。だからtanδ は小さいほどよいのです。
誘電加熱では逆にtanδ が大きいほうがよかった——同じ量が、用途によって長所にも短所にもなるのがおもしろいところです。

(エ)(オ) 日常点検と特別点検
問題文が点検内容を具体的に挙げているので、そこから判断できます。
| ★日常点検 | ★特別点検 | |
| 頻度 | ★日常的 | ★数年ごと・異常発生時 |
| 方法 | ★目視中心 | ★測定器を使う |
| 内容 | 油漏れ、発錆、汚損、変形、過熱 | 静電容量・損失測定、絶縁抵抗、耐電圧試験 |
| 停電 | 不要 | ★必要 |
「数年ごとあるいは異常発生時に行う」——これが特別点検です。日常点検は毎日〜毎月の頻度で、運転したまま行えるもの。
特別点検では静電容量や絶縁抵抗を測ります——停電させないとできないので、頻度は低くなります。「日常点検項目のほかに」と書かれているので、特別点検は日常点検を含むことも分かります。

⚠️ よくある間違い
(イ)を「大きく」としてしまう——選択肢(2)(3)(5)がそれです。
誘電正接は損失を表す量——損失は小さいほうがよいに決まっています。「正接」という言葉から意味が分かりにくいのが原因でしょう。
「損失に関する量は小さいほどよい」——この原則で判断できます。
(エ)(オ)を逆にする選択肢(3)(4)(5)——「数年ごとあるいは異常発生時」が特別です。(イ)と(エ)の2つで確定します。
電力用コンデンサの種類
問題文の冒頭に4種類が挙げられています——用途で区別しておきましょう。
| 種類 | 接続 | 目的 |
| ★進相コンデンサ | ★並列 | ★力率改善 |
| 調相コンデンサ | 並列 | 系統の電圧調整 |
| ★直列コンデンサ | ★直列 | ★線路リアクタンスの補償 |
| フィルタ用 | 並列 | 高調波の吸収 |
最もよく出るのは進相コンデンサ——負荷と並列に入れて、遅れ無効電力を打ち消します。直列コンデンサは線路に直列——まったく違う目的です。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)(ウ) 誘電率・絶縁性能は高いほどよい(小型化)。
②(イ)★誘電正接は損失なので小さいほどよい。
③(エ)(オ)「数年ごと・異常時」=特別点検。
④(イ)と(エ)の2欄で確定する。
💡 覚え方
「損失を表す量は小さいほどよい」——tanδ がそれです。そして「毎日は目視、数年ごとは測定」——日常点検と特別点検の違いです。
進相コンデンサに入れる直列リアクトルは平成21年度 A問題8にあります(保護機器:直列リアクトルの使用目的と6%)。

進相コンデンサによる力率改善
電力用コンデンサの代表格——なぜ力率が改善するのかを確認しておきましょう。
電動機などの誘導性負荷は、電流が電圧より遅れます——遅れ無効電力を消費している状態です。
コンデンサは逆に、電流が電圧より進む——進み無効電力を供給することになります。両者が打ち消し合って、合計の無効電力が減るのです。
| 力率改善の効果 | 内容 |
| ★線路電流の減少 | 同じ電力を少ない電流で送れる |
| 電力損失の減少 | ★I2R が減る |
| 電圧降下の減少 | 末端の電圧が上がる |
| 設備容量の余裕 | 変圧器などに余力が生まれる |
電流が減れば、損失は電流の2乗で減ります——力率0.8 を1.0 にすれば電流は0.8倍、損失は0.64倍。大きな省エネ効果があります。
だから電気料金にも力率割引がある——需要家が力率を改善すると、系統全体の効率が上がるからです。
コンデンサの構造と自己回復
問題文の「薄葉誘電体を金属はく電極とともに巻き込み」——フィルムと金属はくを巻いたロール状の構造です。
| 方式 | 電極 | 特徴 |
| はく電極方式 | アルミはくを重ねる | 大電流に強い |
| ★蒸着電極方式 | ★フィルムに金属を蒸着 | ★自己回復機能をもつ |
蒸着電極では、絶縁が破れた部分の金属が瞬時に蒸発して飛びます——短絡点が自動的に切り離されるのです。これが自己回復(セルフヒーリング)。
小さな絶縁破壊なら、運転を続けられる——その代わり静電容量がわずかに減ることになります。だから特別点検で静電容量を測る意味があるのです。
容量が規定値より減っていれば、内部で絶縁破壊が進んでいる証拠——問題文の「静電容量・損失の測定」は、この劣化を捉えるためだと分かります。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (イ) | 小さく | ★(1)(4) |
| (ウ) | 高い | ★(1)に確定 |
(イ)の誘電正接は損失を表す量——損失は小さいほどよい。これで3つ落ちます。
(ウ)の絶縁抵抗・絶縁耐力は高いほどよい——絶縁が弱くては使えません。これで確定です。
「性能を表す量は、良い方向がどちらか」——それだけで判断できる空欄が多いのが、この種の問題の特徴です。損失は小さく、絶縁は高く、誘電率は高く——すべて理由から導けます。
点検で何を見つけたいのか
点検項目には、それぞれ狙いがあります——丸暗記せず、意味から覚えましょう。
| 点検項目 | 見つけたい異常 |
| 油漏れ | ★容器の損傷・内圧上昇 |
| 容器の変形(膨れ) | ★内部短絡によるガス発生 |
| 端子部の過熱 | 接続の緩み・接触不良 |
| がいしの汚損 | 絶縁低下・地絡の予兆 |
容器が膨れていたら危険信号——内部で絶縁破壊が進み、ガスが発生している可能性があります。そのまま使うと破裂のおそれがあるのです。
だから目視だけの日常点検にも意味がある——測定しなくても分かる異常を早く見つけるためです。
特別点検では、目に見えない劣化を数値で捉えます——静電容量の減少、tanδ の増大、絶縁抵抗の低下。両者を組み合わせて設備を守るという考え方になります。
まとめ
| (ア) | 高く |
| (イ) | 小さく |
| (ウ) | 高い |
| (エ) | 日常 |
| (オ) | 特別 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・直列リアクトルの使用目的:【機械】平成21年度A問題8
・直列リアクトルのL計算:【機械】平成22年度A問題7

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