今回は平成21年度 機械科目 A問題8を解説します。進相コンデンサに接続する直列リアクトルの使用目的と定格容量(6%)を問う穴埋め問題です。
直列リアクトルはコンデンサ電圧波形のひずみを軽減し、投入時の突入電流を抑制します。第5次以上の高調波に対しインピーダンスを誘導性にするため、容量の6%を挿入します。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
高圧負荷の力率改善用として,その負荷が接続されている三相高圧母線回路に進相コンデンサが設置される。この進相コンデンサは,保護のためにリアクトルが(ア)に挿入されるが,その目的は,コンデンサの電圧波形の(イ)を軽減させ,かつ,進相コンデンサ投入時の突入電流を抑制するものである。したがって,進相コンデンサの定格設備容量は,コンデンサと(ア)リアクトルを組み合わせた設備の定格電圧及び定格周波数における無効電力を示す。
この(ア)リアクトルの定格容量は,一般的には5次以上の高調波に対して,進相コンデンサ設備のインピーダンスを(ウ)にし,また,コンデンサの端子電圧の上昇を考慮して,コンデンサの定格容量の(エ)〔%〕としている。空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる語句又は数値として正しいものを組み合わせたのはどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 直列 ひずみ 容量性 3 (2) 並列 波高率 誘導性 6 (3) 直列 波高率 容量性 3 (4) 並列 ひずみ 容量性 6 (5) 直列 ひずみ 誘導性 6
(ア)(イ) 直列リアクトルの2つの目的
進相コンデンサに直列に入れるリアクトル——目的は2つあります。
| 目的 | 内容 | 効く場面 |
| ★高調波対策 | ★電圧波形のひずみを軽減 | 常時 |
| ★突入電流の抑制 | 投入時の急激な電流を抑える | 投入の瞬間 |
コンデンサだけを電源に投入すると、非常に大きな突入電流が流れます——コンデンサは電圧の急変を許さないので、i=C dv/dt が瞬間的に巨大になるのです。
リアクトルを直列に入れると、電流の急変が抑えられます——v=L di/dt。コンデンサとリアクトルは、互いの弱点を補い合う関係です。

(ウ)(エ) なぜ6 % なのか
この数値には、はっきりした根拠があります——第5次高調波に対して誘導性にするためです。
リアクタンスは周波数に比例、容量性リアクタンスは反比例——高調波ほどリアクトルが効いてくるのです。
★理論値4 %
★答え
理論上は4 % を超えればよい——ところが実際には余裕が要ります。だから6 % が標準とされているのです。
誘導性にしなければならない理由
もし容量性のままだと、系統のインダクタンスと直列共振——高調波電流が大きく増幅されてしまいます。
| リアクトルの% | 第5次に対して | 結果 |
| 0 %(なし) | 容量性 | ★系統と共振して高調波が拡大 |
| 4 % | ちょうど共振 | ★最も危険 |
| ★6 % | ★誘導性 | ★高調波を吸収する側になる |
| 13 % | 誘導性 | 第3次高調波が多い場合に採用 |
4 % ちょうどが最も危険——そこで共振してしまうからです。だから余裕をみて6 %——「余裕」の意味がここにあります。
第3次高調波が多い系統では13 %——X3=3xL−xC/3>0 なら xL/xC>1/9=11.1 %。やはり余裕をみて13 % という数値になります。

⚠️ よくある間違い
(ウ)を「容量性」としてしまう——選択肢(1)(3)(4)がそれです。
容量性のままなら、リアクトルを入れる意味がありません——誘導性に変えることが目的だからです。(ウ)だけで3つ落とせます。
(エ)を3 % とする選択肢(1)(3)——3 % では理論値の4 % に届きません。共振してしまうので、この値は使えないのです。
(ア)を「並列」とする選択肢(2)(4)——問題文に「直列リアクトル」という語が何度も出ています。読めば分かるところです。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)(イ) 直列に入れて、ひずみ軽減+突入電流抑制。
②(ウ)★第5次以上で誘導性にする。容量性では共振する。
③(エ) X5>0 から4 % 超→余裕をみて★6 %。
④第3次対策なら11.1 % 超→13 %。
💡 覚え方
「Xn=n xL−xC/n>0」——この式から4 % が出てきます。余裕をみて6 %——数値の根拠まで押さえておけば忘れません。
直列リアクトルのインダクタンス計算は平成22年度 A問題7にあります(保護機器:直列リアクトルのインダクタンス計算)。

高調波はどこから来るのか
直列リアクトルが対策するのは高調波——その発生源を知っておきましょう。
| 発生源 | 主な次数 | 例 |
| ★三相整流器 | ★第5次、第7次 | インバータ、電源装置 |
| 単相整流器 | 第3次 | 家電機器 |
| 変圧器の励磁電流 | 第3次 | 鉄心の飽和 |
| アーク炉 | 広範囲 | 製鋼 |
三相の整流回路からは第5次・第7次が多く出ます——だから直列リアクトルは第5次を基準に設計されるのです。
第3次は三相回路では相殺されやすい——Δ結線の中を循環して外へ出にくいからです。だから通常は6 % で足りることになります。
高調波が引き起こす障害
| 障害 | 内容 |
| ★コンデンサの過熱 | ★高調波電流が流れ込んで発熱・焼損 |
| 機器の誤動作 | 制御装置や継電器が誤って動く |
| 電圧波形のひずみ | 系統全体に波及する |
コンデンサは高調波に対してインピーダンスが小さい——xC/n なので、次数が高いほど流れ込みやすいのです。放っておくとコンデンサが焼損します。
直列リアクトルは、この流れ込みを抑える働きもします——誘導性にすることで、高調波電流を制限できるのです。
直列リアクトルによる電圧上昇
問題文の「コンデンサの端子電圧の上昇を考慮して」——ここも重要な論点です。
| 直列リアクトル | コンデンサ電圧 | 上昇率 |
| 0 % | Vs | — |
| ★6 % | ★Vs/0.94 | ★約6.4 % 上昇 |
| 13 % | Vs/0.87 | 約14.9 % 上昇 |
リアクトルとコンデンサの電圧は逆位相——差し引きで回路電圧になるので、コンデンサには回路電圧より高い電圧がかかります。
だからコンデンサの定格電圧を上げておく必要がある——6 % のリアクトルなら、定格電圧も約6 % 高いものを選びます。
13 % を選ぶと、電圧上昇はさらに大きい——第3次高調波対策には有効ですが、その分コンデンサの負担が増えるのです。だから必要な場合に限って採用されることになります。
空欄の絞り込み手順
4つの空欄がありますが、1つで大半が絞れます。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (ウ) | 誘導性 | ★(2)(5) |
| (ア) | 直列 | ★(5)に確定 |
(ウ)が「誘導性」だと分かれば3つ落ちます——容量性のままではリアクトルを入れる意味がないからです。
(ア)は問題文に「直列リアクトル」と何度も書かれている——読めば分かるところ。2手で確定します。
6 % という数値の覚え方
1/25=4 % に余裕をみて6 %——第5次だから25(5の2乗)という関係で覚えられます。
第3次なら1/9=11.1 % に余裕をみて13 %——同じ考え方です。数値を丸暗記せず、n2 の逆数から導くようにしておけば、どちらを問われても対応できます。
進相コンデンサ設備の構成
コンデンサ単体ではなく、いくつかの機器がセットになります。
| 機器 | 役割 |
| 進相コンデンサ | ★進み無効電力を供給(力率改善) |
| ★直列リアクトル | ★高調波対策・突入電流抑制 |
| 放電コイル(放電抵抗) | ★開放後の残留電荷を放電させる |
| 開閉装置 | 投入・開放 |
放電コイルは安全のために不可欠——コンデンサは開放後も電荷を保持しているからです。触れると感電するので、素早く放電させる必要があります。
また、残留電荷があるまま再投入すると、大きな突入電流が流れます——直列リアクトルと合わせて、投入時の保護になるのです。
「進相コンデンサの定格設備容量は、コンデンサと直列リアクトルを組み合わせた設備の…無効電力」——問題文のこの一文は、設備全体で1つと考えることを示しています。
まとめ
| (ア) | 直列 |
| (イ) | ひずみ |
| (ウ) | 誘導性 |
| (エ) | 6 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・直列リアクトルのL計算:【機械】平成22年度A問題7
・電力用コンデンサ:【機械】平成29年度A問題9

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