直流機41【電験3種 機械】回生制動で電流と起電力の向きはどうなる?平成29年 A問題2 完全解説

電験3種 機械科目 直流機 平成29年度 A問題2 回生制動では電流が逆向きに!起電力はどうなる?

今回は平成29年度 機械科目 A問題2を解説します。テーマは永久磁石界磁の直流機による回生制動で、上り坂・下り坂を一定速度で走る車を題材に、電流・誘導起電力・トルクの向きを問う論説問題です。

回生制動は「電動機を発電機として使いブレーキをかけながら電力を電源へ戻す運転」です。何が反転して何が反転しないのかを、式で整理できれば確実に得点できます。

目次

問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成29年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2

 界磁に永久磁石を用いた磁束一定の直流機で走行する車があり,上り坂で電動機運転を,下り坂では常に回生制動(直流機が発電機としてブレーキをかける運転)を行い,一定の速度(直流機が一定の回転速度)を保って走行している。

 この車の駆動システムでは,直流機の電機子銅損以外の損失は小さく無視できる。電源の正極側電流,直流機内の誘導起電力などに関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 上り坂における正極側の電流は,電源から直流機へ向かって流れている。

(2) 上り坂から下り坂に変わるとき,誘導起電力の方向が反転する。

(3) 上り坂から下り坂に変わるとき,直流機が発生するトルクの方向が反転する。

(4) 上り坂から下り坂に変わるとき,電源電圧を下げる制御が行われる。

(5) 下り坂における正極側の電流は,直流機から電源へ向かって流れている。

出題のポイント:回生で「反転するもの」と「しないもの」を仕分ける

回生制動の問題は、力行(電動機運転)から回生(発電機運転)へ切り替わるとき、何が反転して何が反転しないか——この仕分けがすべてです。3本柱の式に戻れば、機械的に判定できます。

回生制動で見るべき3つの量

\( E=k_E\,\phi\,n \qquad I_a=\dfrac{V-E}{R_a} \qquad T=k_T\,\phi\,I_a \)

本問は永久磁石界磁で φ 一定、しかも「一定の速度を保って走行」——つまり n も一定です。

φ も n も変わらないのだから、E=kEφn も変わりません。大きさも向きもそのまま。これが本問の核心で、選択肢(2)はまさにここを突いています。

上り坂(力行)下り坂(回生)反転するか
磁束 φ一定(永久磁石)一定しない
回転速度 n一定・同じ向き一定・同じ向きしない
誘導起電力 EkEφnkEφn(同じ)しない
電源電圧 V と E の関係V > EV < E
電機子電流 Ia電源 → 直流機直流機 → 電源する
トルク T回転方向と同じ(駆動)回転方向と逆(制動)する

反転するのは Ia と T の2つだけ。しかもT が反転するのは Ia が反転したからなので、本当に反転しているのは電流1つとも言えます。

上り坂の力行と下り坂の回生で誘導起電力は反転せず電流とトルクが反転する出題のポイント
φとnが同じならEは同方向で、反転するのはIₐとTです。

電流の向きは V と E の大小で決まる

電機子電流は Ia=(V−E)/Ra で決まります。E は変えられないので、電流の向きを決めているのは V の側です。

V を E より高くすれば力行、低くすれば回生——だから選択肢(4)の「上り坂から下り坂に変わるとき、電源電圧を下げる制御が行われる」は正しいのです。回生に入るには、電源電圧を E より下げなければ電流が逆流しません

\( V>E \;\Rightarrow\; I_a=\dfrac{V-E}{R_a}>0 \)
力行(上り坂)
電流は電源から直流機へ。T は回転方向と同じ ⇒ 車を押し上げる。
\( V<E \;\Rightarrow\; I_a=\dfrac{V-E}{R_a}<0 \)
回生(下り坂)
電流は直流機から電源へ。T は回転方向と逆 ⇒ ブレーキになる。
永久磁石直流機の力行と回生における電圧大小関係と電流電力トルクの向き
V>Eで力行、E>Vで回生となり、Eの向きは変えずに電流が逆転します。

5つの選択肢を1つずつ検証する

(1) 上り坂の正極側電流は電源から直流機へ → 正しい

上り坂は力行——電動機として車を押し上げているので、電力は電源から直流機へ流れます。電流の向きも同じです。

(2) 上り坂から下り坂に変わるとき、誘導起電力の方向が反転する → 誤り

E=kEφn のうち、φ は永久磁石なので一定、n は「一定の速度を保って走行」なので一定。したがってE は大きさも向きも変わりません

誘導起電力が反転するのは「回転方向が逆になったとき」だけです。車は前進したまま坂を下るのですから、回転方向は変わりません。これが答えです

☝️ ひっかけの作り方:「反転する」という語を、電流・トルク・起電力のうち間違ったものに付けるのがこの問題の作り方。反転するのは電流とトルクだけで、起電力は反転しない——3つを並べて仕分けておけば迷いません。

(3) 直流機が発生するトルクの方向が反転する → 正しい

T=kTφIa で φ は一定、Ia が反転するのでトルクも反転します。回転方向と逆向きのトルク=ブレーキになり、下り坂で速度が上がるのを抑えます。

(4) 電源電圧を下げる制御が行われる → 正しい

回生に入るには V < E にする必要があります。E は変えられないので、V を下げるしかありません「回生ブレーキをかけるには電源電圧を下げる」——一見わかりにくいですが、式から必然的に導かれます。

(5) 下り坂の正極側電流は直流機から電源へ → 正しい

回生=発電した電力を電源へ返す運転ですから、電流は直流機から電源へ流れます。「回生」という言葉自体が「電力を回して生かす」という意味です。

答え誤っているのは (2) / 磁束も回転方向も同じなので、誘導起電力は反転しない
回生制動に関する5選択肢を比較し誘導起電力の方向が反転するという選択肢2を誤りとする問題解説
磁束と回転方向が同じならEは反転しないため、正解は(2)です。

回生制動が成り立つ条件と限界

回生制動は「運動エネルギーを電気に戻す」ブレーキなので、摩擦ブレーキと違ってエネルギーを捨てません。電気自動車や電車で航続距離が伸びるのは、この仕組みのおかげです。

ただし成り立つには条件があります

条件満たされないと実際の対策
電源が電力を受け取れる行き場のない電流で電圧が上昇し、機器が壊れる蓄電池に充電する/他の負荷へ回す(電車なら他の列車)
V を E より下げられる電流が逆流せず回生できないチョッパやインバータで電圧を可変にする
回転しているE=kEφn=0 でブレーキ力がゼロ低速域では摩擦ブレーキに切り替える

3つ目が特に大事です。回生ブレーキは停止直前には効かなくなるので、実際の車両は低速域で機械ブレーキへ滑らかに切り替えています。電車で「回生失効」と呼ばれるのは1つ目の条件が崩れた場合で、近くに電力を消費する列車がいないと回生が使えなくなります。

本問が「電機子銅損以外の損失は無視できる」としているのも意味があります。回生中も銅損 Ia2Ra は発生するので、位置エネルギーの全部が電気として戻るわけではありません。戻せるのは E·Ia のうち V·Ia の分だけで、差の Ia2Ra は熱になります。

⏱️ 本番での進め方
φ・n・E・Ia・T の5つを縦に並べて「反転するか」を書き込む。30秒で表ができる。
反転するのは Ia と T だけ。φ・n・E は反転しない。
電流の向きを決めるのは V と E の大小。V>E なら力行、V<E なら回生。
④ 「回生するには電源電圧を下げる」——直感に反するので、式 Ia=(V−E)/Ra で確認する。

💡 覚え方
回生で反転するのは電流とトルクだけ。磁束・回転速度・誘導起電力は反転しないE=kEφn なので、E が反転するのは回転方向が逆になったときだけ力行は V>E、回生は V<E——だから回生するには電源電圧を下げる。回生ブレーキは低速では効かない(E が小さくなるから)。

⚠️ よくある間違い
「発電機になるのだから起電力の向きも変わるはず」と考えてしまうのがこの問題の狙いです。発電機か電動機かを決めているのは電流の向きであって、起電力の向きではありません。同じ E のまま、V との大小関係だけで役割が入れ替わる——この理解が回生制動の本質です。

まとめ

力行(上り坂)\(V\gt E\)、電流は電源→直流機、\(P\gt 0\) で駆動
回生(下り坂)\(E\gt V\)、電流は直流機→電源、トルク反転でブレーキ
反転しないもの誘導起電力 \(E=k_{\mathrm E}\phi n\)(磁束・回転方向が同じため)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・回生制動を含む運転の穴埋め:【機械】令和4年度上期A問題1
・永久磁石界磁と回生を扱う穴埋め:【機械】平成27年度A問題2

📚 次に解くべき関連問題
【機械】令和3年度A問題1(直流機42)
【機械】平成26年度A問題1(直流機43)
【機械】平成19年度A問題1(直流機48)
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