電験3種の機械科目で問われる外部特性曲線と回生制動。本記事では、平成27年度 A問題2の穴埋め問題を解説します。発電機の特性と電動機運転・回生制動がひとつながりで問われる良問です。
カギは「分巻発電機は垂下が大きい(B)」と「同じ極性なら界磁も回転方向も同じ向き → 結線変更なしで回生制動」です。
平成27年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢
なぜ分巻のほうが大きく垂下するのかを考えるところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2
電験3種 機械科目 【直流機】 平成27年度 A問題2
次の文章は、直流機に関する記述である。
図は、ある直流機を他励発電機として運転した場合と分巻発電機として運転した場合との外部特性曲線を比較したものである。回転速度はいずれも一定の同じ値であったとする。このとき、分巻発電機の場合の特性は (ア) である。
また、この直流機を分巻発電機として運転した場合と同じ極性の端子電圧を外部から加えて分巻電動機として運転すると、界磁電流の向きは発電機運転時と (イ) となり、回転方向は (ウ) となる。これらの向きの関係から、分巻機では、電源電圧を誘導起電力より低くすることで、電動機運転の状態から結線を変更せずに (エ) ができ、エネルギーを有効に利用できる。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
|---|---|---|---|---|
| (1) | A | 同じ向き | 逆向き | 回生制動 |
| (2) | B | 同じ向き | 同じ向き | 回生制動 |
| (3) | A | 逆向き | 逆向き | 発電制動 |
| (4) | B | 逆向き | 同じ向き | 回生制動 |
| (5) | A | 逆向き | 同じ向き | 発電制動 |
出題のポイント:(ア)は「なぜ分巻のほうが大きく垂下するのか」
外部特性曲線とは「負荷電流を増やしていったとき、端子電圧がどう下がるか」を描いたグラフです。他励と分巻を比べると、分巻のほうが大きく垂下(低下)します——(ア)=B。
理由は分巻だけに「悪循環」があるからです。
| 他励発電機 | 分巻発電機 | |
| 界磁の電源 | 独立した別電源 | 自分の端子電圧 |
| 負荷電流が増えると | 電機子抵抗降下 IaRa が増える 電機子反作用で主磁束が減る | 同じ2つに加えて… |
| さらに起きること | — | 端子電圧の低下 → 界磁電流の低下 → 磁束の低下 → 起電力の低下 → さらに端子電圧が低下 |
| 外部特性 | 垂下は小さい(曲線A) | 垂下が大きい(曲線B) |
分巻では「電圧が下がると、その結果としてもっと電圧が下がる」という正のフィードバックが働く——これが垂下が大きくなる本質です。他励は界磁が外部電源で守られているので、この連鎖が起きません。
この性質を極端まで進めると過負荷時に電圧が急激に崩れることになりますが、短絡事故のときには短絡電流が小さくて済むという利点にもなります。同じ性質が状況によって長所にも短所にもなるのが面白いところです。

(イ)(ウ):同じ極性なら界磁も回転も同じ向き
問題文は「分巻発電機として運転した場合と同じ極性の端子電圧を外部から加えて」と条件を置いています。ここから2つのことが決まります。
界磁巻線は端子に並列。端子電圧の極性が同じなら界磁電流の向きも同じ ⇒ 磁束の向きも同じ。
磁束の向きが同じで、電機子電流の向きが(発電機のときと比べて)逆になる ⇒ トルクの向きが回転を保つ側に働く ⇒ 回転方向は同じ。
(イ)=同じ向き、(ウ)=同じ向き。少していねいに言うと、発電機のときは「回っているから電流が出てくる」、電動機のときは「電流を入れるから回る」——どちらも同じ向きの回転と同じ向きの磁束で成り立ちます。

(エ):結線を変えずに回生制動へ移れる理由
界磁の向きも回転方向も同じままということは、電機子電流の向きだけを反転させれば、電動機から発電機へ移れるということです。そして電機子電流の向きは Ia=(V−E)/Ra の符号、つまりV と E の大小だけで決まります。
| 状態 | V と E の関係 | 電機子電流の向き | トルク | エネルギーの流れ |
| 電動機(力行) | V > E | 電源 → 直流機 | 回転を助ける | 電源 → 機械 |
| 回生制動 | V < E | 直流機 → 電源 | 回転を妨げる | 機械 → 電源 |
問題文の「電源電圧を誘導起電力より低くすることで」がまさにこの操作です。スイッチもつなぎ替えも要らず、電圧を下げるだけで制動に入れる——(エ)=回生制動。
「発電制動」ではありません。発電制動は電源から切り離して抵抗につなぎ替え、熱として捨てる方式なので、結線の変更が必要ですしエネルギーも有効利用できません。問題文の「結線を変更せずに」「エネルギーを有効に利用できる」という2つの語句が、回生制動を名指ししています。

選択肢を絞り込む手順
| 段階 | 根拠 | 残る選択肢 |
| (ア)=B | 分巻は電圧低下が界磁低下を招く悪循環で垂下が大きい | (1)(3)(5)が消えて(2)(4) |
| (イ)=同じ向き | 端子電圧の極性が同じ ⇒ 並列の界磁に流れる電流も同じ向き | (4)が消えて(2)に確定 |
2段階で決着します。さらに(エ)を先に見てもよい——「結線を変更せず」「エネルギーを有効利用」という語から回生制動が確定し、(3)(5)が消えます。自信のある空欄はどこからでも構わないのが穴埋め問題の利点です。
分巻発電機が「自励」できる条件
分巻発電機は自分が発電した電圧で自分の界磁を励磁する——いわば自分で自分を持ち上げる仕組みです。ではなぜ、最初に電圧がゼロの状態から立ち上がれるのでしょうか。
鍵は鉄心に残っている残留磁気です。回し始めると、わずかな残留磁束によって小さな起電力が発生します。その電圧が界磁巻線に電流を流し、磁束が増え、起電力がさらに大きくなり……という正のフィードバックで電圧が育っていきます。
| 自励が成立する条件 | 満たされないと |
| 鉄心に残留磁気がある | 最初の起電力が生まれず、まったく電圧が立たない |
| 界磁巻線の接続の向きが正しい | 残留磁束を打ち消す向きに電流が流れ、電圧が育たない |
| 界磁抵抗が臨界値より小さい | 電圧の成長が途中で止まってしまう(臨界界磁抵抗) |
| 回転速度が十分高い | 同じく成長が止まる(臨界速度) |
2番目の条件が実務でよく問題になります。界磁巻線を逆につないでしまうと、電圧がまったく立ちません。この場合は接続を逆にするか、外部電源で一度励磁して残留磁気を付け直す(フラッシング)ことで直ります。
この「自励の仕組み」と「外部特性が大きく垂下する理由」は同じ正のフィードバックの表と裏です。電圧が上がれば磁束が増えてもっと上がるのが自励、電圧が下がれば磁束が減ってもっと下がるのが垂下——同じ性質が、立ち上げでは味方に、負荷時には敵になるわけです。
外部特性曲線をもう少し詳しく
直流発電機の外部特性は、界磁の接続方式によってはっきり違います。グラフの形を言葉で言えるようにしておくと、図が出る問題にも対応できます。
| 発電機の種類 | 外部特性 | 理由 |
| 他励 | わずかに垂下(ほぼ水平) | 界磁が独立電源で守られる。下がるのは IaRa と電機子反作用のぶんだけ |
| 分巻 | 大きく垂下 | 電圧低下 → 界磁低下 → さらに電圧低下の悪循環 |
| 直巻 | 最初は上昇し、途中から急降下 | 負荷電流が磁束を作るので負荷が増えるほど電圧が上がる。飽和後は抵抗降下が勝って崩れる |
| 複巻(和動) | ほぼ水平にできる | 分巻の垂下を直巻の上昇で打ち消す ⇒ 平複巻の特性 |
複巻発電機が実用的なのはこの表の最終行のためです。分巻の「下がる性質」と直巻の「上がる性質」を組み合わせて、負荷が変わっても端子電圧が変わらないようにする——直巻巻線の巻数を調整すれば、わずかに上昇させる(過複巻)ことも可能です。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「悪循環があるほうが大きく垂下」:分巻=B。他励は界磁が守られている。
② 「同じ極性」=界磁も回転も同じ向き。(イ)(ウ)はセットで決まる。
③ 「結線を変更せず」「有効利用」=回生制動。抵抗で熱にするなら発電制動。
④ (ア)と(イ)の2つだけで正解が1つに決まる。全部を悩む必要はない。
💡 覚え方
分巻発電機は「電圧低下→界磁低下→さらに電圧低下」の悪循環で大きく垂下(他励はわずか)。同じ極性を加えれば界磁も回転も同じ向きなので、電源電圧を E より下げるだけで電機子電流が反転して回生制動に入れる。回生=電源へ返す(結線変更なし)、発電制動=抵抗で熱にする(つなぎ替え要)。
⚠️ よくある間違い
(ア)で他励と分巻を逆にするのが最頻です。「界磁が自分の電圧に依存しているほうが弱い」と考えれば分巻=Bだと分かります。もう一つは(エ)を発電制動とする誤り。問題文に「結線を変更せずに」「エネルギーを有効に利用」とあるので、抵抗につなぎ替える発電制動ではありません。

コメント