今回は平成25年度 機械科目 A問題10を解説します。★電動機応用15(令和5年度下期A問題11)と問題文・選択肢が一言一句同一の再出題です。電動機ではずみ車を加速して運動エネルギーを蓄えるときの関係式を求める空欄補充問題です。
毎分回転数N〔min-1〕から毎秒回転数n=N/60、角速度ω=2πn、出力P=Tωの関係からトルクT=P/ω、はずみ車の運動エネルギーE=(1/2)Iω02を導く、という電動機応用15と全く同じ流れです。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和5年度下期A問題11 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成25年度 機械科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題10
電験3種 機械科目 【電動機応用】 平成25年度 A問題10
電動機ではずみ車を加速して,運動エネルギーを蓄えることを考える。
まず,加速するための電動機のトルクを考える。加速途中の電動機の回転速度をN〔min-1〕とすると,そのときの毎秒の回転速度n〔s-1〕は①式で表される。
〔(ア)〕 ……①
この回転速度n〔s-1〕から②式で角速度ω〔rad/s〕を求めることができる。
〔(イ)〕 ……②
このときの電動機が1秒間にする仕事,すなわち出力をP〔W〕とすると,トルクT〔N・m〕は③式となる。
〔(ウ)〕 ……③
③式のトルクによってはずみ車を加速する。電動機が出力し続けて加速している間,この分のエネルギーがはずみ車に注入される。電動機に直結するはずみ車の慣性モーメントをI〔kg・m2〕として,加速が完了したときの電動機の角速度をω0〔rad/s〕とすると,このはずみ車に蓄えられている運動エネルギーE〔J〕は④式となる。
〔(エ)〕 ……④
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア)n (イ)ω (ウ)T (エ)E (1) n=N/60 ω=2π×n T=P/ω E=(1/2)I2ω0 (2) n=60N ω=n/(2π) T=Pω E=(1/2)I2ω0 (3) n=N/60 ω=2π×n T=Pω E=(1/2)Iω02 (4) n=60N ω=n/(2π) T=P/ω E=(1/2)I2ω0 (5) n=N/60 ω=2π×n T=P/ω E=(1/2)Iω02
出題のポイント:4つの式を単位で確かめる
本問は計算がありません。4つの式が正しいかどうかを見分けるだけ——単位を確かめれば、覚えていなくても判断できます。
| 空欄 | 正しい式 | 単位で確かめる |
| (ア)n | \( n=N/60 \) | 毎分→毎秒だから割る |
| (イ)ω | \( \omega=2\pi n \) | 1回転=2π rad |
| (ウ)T | \( T=P/\omega \) | W÷(rad/s)=N·m |
| (エ)E | \( E=\dfrac{1}{2}I\omega_0^{2} \) | ★ωが2乗、Iは1乗 |
(ア)は毎分から毎秒への換算。1分は60秒なので、毎分の回転数を60で割れば毎秒——「60N」では1分間に60倍回ることになり、明らかにおかしいのです。
(イ)は1回転が2π rad だから掛け算。毎秒n回転なら、毎秒 2πn ラジアン進む——「n/(2π)」では単位が合いません。

(ウ)出力とトルクの関係
「T=Pω」としている選択肢(3)が引っかけです。掛けるのか割るのか——単位で確かめれば一発で分かります。
トルク×角速度
★割り算でないと合わない
意味でも確かめられます。同じ出力なら、回転が速いほどトルクは小さくてよい——ωが分母にあるのが自然です。「T=Pω」では回転が速いほどトルクが大きくなり、逆になってしまいます。
(エ)回転の運動エネルギー
誤りの選択肢は「(1/2)I2ω0」——2乗する対象が入れ替わっています。2乗するのは速度のほう——直線運動で (1/2)m2v とは書かないのと同じです。
| 直線運動 | 回転運動 | |
| 慣性を表す量 | 質量 m〔kg〕 | 慣性モーメント I〔kg·m2〕 |
| 速さ | 速度 v〔m/s〕 | 角速度 ω〔rad/s〕 |
| 力に相当 | 力 F〔N〕 | トルク T〔N·m〕 |
| 運動エネルギー | \( \frac{1}{2}mv^{2} \) | \( \frac{1}{2}I\omega^{2} \) |
| 運動方程式 | \( F=ma \) | \( T=I\dfrac{d\omega}{dt} \) |
回転の力学は、直線運動の量を置き換えただけです。この対応表を頭に入れておけば、公式を覚え直す必要はありません——直線運動の式から作れるからです。

絞り込みは(ア)から始めるのが効率的です。n=N/60 でないものを外せば(2)(4)が落ちる——残る(1)(3)(5)を(ウ)(エ)で見分けます。(1)は(エ)が誤り、(3)は(ウ)が誤り——残るのは(5)だけです。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)毎分→毎秒は60で割る。60N の選択肢を外す。
②(イ)1回転=2π rad なので ω=2πn。
③(ウ)P=Tω なので T=P/ω。単位で確かめる。
④(エ)2乗するのは ω のほう。(1/2)Iω02。
💡 覚え方
「回転は直線運動の置き換え」——m→I、v→ω、F→T。(1/2)mv2 が (1/2)Iω2 になると覚えれば、2乗する対象を間違えません。
出題履歴:令和5年度下期と一言一句同一
本問は令和5年度下期 A問題11と、問題文も選択肢も完全に同一です(電動機応用:はずみ車の運動エネルギー)。10年ぶりに、まったく手を加えずに再出題されたことになります。
ここまで完全に同じ問題は珍しい——それだけ「回転運動の基本式」が重要視されているということでもあります。過去問を解いておけば確実に得点できる設問です。

はずみ車はなぜ役に立つのか
はずみ車(フライホイール)は、回転の運動エネルギーを蓄える装置です。負荷が急に変わる装置で、電動機の負担を平準化します。
プレス機を例に考えてみましょう。打ち抜く一瞬だけ大きな力が要り、それ以外はほとんど負荷がない——ピークに合わせて電動機を選べば、大部分の時間は無駄になります。
| はずみ車なし | はずみ車あり | |
| 電動機の容量 | ピーク負荷に合わせる | ★平均負荷に合わせればよい |
| 電源への影響 | 大きく変動する | なめらかになる |
| 回転速度 | ほぼ一定 | 少し変動する(それが必要) |
はずみ車が効くには、回転速度が少し落ちることが前提です。エネルギーは (1/2)Iω2 なので、ωが変わらなければ取り出せない——速度変動を許すことが条件になります。
だから、すべりの大きい巻線形誘導電動機と組み合わせるのが定石でした。二次抵抗を大きくして、負荷が増えたら回転が落ちるようにする——そうすればはずみ車がエネルギーを吐き出すのです。
どれだけのエネルギーを取り出せるか
回転速度が ω1 から ω2 へ落ちるとき、取り出せるエネルギーは差で求められます。
たとえば回転が10 %落ちるだけで、エネルギーは約19 %放出されます(1−0.92=0.19)。2乗が効くので、少しの速度変動で大きなエネルギーが動く——これがはずみ車の効き目の正体です。
近年はフライホイール蓄電(FESS)としても注目されています。真空中で磁気軸受により高速回転させ、電力を運動エネルギーとして貯める——電池と違って劣化がなく、充放電の回数に制限がないのが利点です。
まとめ
| (ア) | n=N/60 |
| (イ) | ω=2π×n |
| (ウ) | T=P/ω |
| (エ) | E=(1/2)Iω0² |
| 答え | (5) |
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