今回は平成22年度 機械科目 A問題11を解説します。エレベータ昇降用電動機の出力を求める一般式の穴埋めと、釣合いおもり質量の設計思想、かごが空荷で上昇するときの力行・回生運転の判定に関する空欄補充問題です。
出力の一般式はP=9.8M(v/60)(100/η)×10-3〔kW〕。釣合いおもりMB=MC+αMnとすることで積載量による必要トルクの変動を小さくします。空荷上昇時はM<0となるため回生運転になります。
平成22年度 機械科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題11
電験3種 機械科目 【電動機応用】 平成22年度 A問題11
エレベータの昇降に使用する電動機の出力Pを求めるためには,昇降する実質の質量をM〔kg〕,一定の昇降速度をv〔m/min〕,機械効率をη〔%〕とすると,
P = 9.8×M×(v/60)×〔(ア)〕×10-3
となる。ただし,出力Pの単位は〔(イ)〕であり,加速に要する動力及びロープの質量は無視している。
昇降する実質の質量M〔kg〕は,かご質量MC〔kg〕と積載質量ML〔kg〕とのかご側合計質量と,釣合いおもり質量MB〔kg〕との〔(ウ)〕から決まる。定格積載質量をMn〔kg〕とすると,平均的に電動機の必要トルクが〔(エ)〕なるように,釣合いおもり質量MB〔kg〕は,
MB = MC + α×Mn
とする。ただし,αは1/3〜1/2程度に設計されることが多い。
電動機は,負荷となる質量M〔kg〕を上昇させるときは力行運転,下降させるときは回生運転となる。したがって,乗客がいない(積載質量がない)かごを上昇させるときは〔(オ)〕運転となる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる語句,式又は単位として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる語句,式又は単位として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 100/η kW 差 小さく 力行 (2) η/100 kW 和 大きく 力行 (3) 100/η kW 差 小さく 回生 (4) η/100 W 差 小さく 力行 (5) 100/η W 和 大きく 回生
出題のポイント:(オ)空荷で上昇すると回生になる
本問の山場は(オ)です。「かごを上昇させるのだから力行だろう」——そう考えると引っかかります。
釣合いおもりは「かご質量+αMn」。空荷のかごは MC しかないので、おもりのほうが αMn だけ重い——つまり、おもりが下がる力でかごが持ち上がるのです。
| 状態 | かご側の質量 | 釣合いおもり | 実質質量M | 上昇時の運転 |
| 満載 | MC+Mn | MC+αMn | (1−α)Mn(正) | 力行 |
| 空荷 | MC | MC+αMn | −αMn(★負) | ★回生 |
電動機は外から回されている状態——発電機として働き、回生運転になります。むしろ速度が上がりすぎないようブレーキをかける側です。
問題文の「M を上昇させるときは力行、下降させるときは回生」という前置きも手がかりです。空荷では M が負になる——「負の質量を上昇させる」=「正の質量を下降させる」と同じですから、回生です。

(ア)(イ)効率が百分率で与えられている
「機械効率をη〔%〕とすると」——ηが小数ではなく百分率だという点に注意してください。
| 効率の表し方 | 掛ける係数 | 例(75 %) |
| 小数(0.75) | ÷η | ÷0.75 |
| 百分率(75) | ★×(100/η) | ×(100/75) |
どちらも同じ計算ですが、百分率なら 100/η を掛ける——「η/100」では効率を掛けたことになり、逆になってしまいます。
(イ)の単位は kWです。9.8M(v/60) は〔W〕——それに 10-3 を掛けているのだから kWだと分かります。式の中の 10-3 が単位を教えてくれるわけです。
(ウ)(エ)釣合いおもりの設計思想
(ウ)は「差」——電動機が支えるのはかご側とおもり側の差だけです。「和」では、おもりを付ける意味がなくなってしまいます。
(エ)は「小さく」。MB=MC+αMn とすると、必要トルクの変動幅が小さくなる——これがおもりの設計思想です。
| 積載 ML | 実質質量 M(α=0.5) | おもりなしなら |
| 0(空荷) | −0.5Mn | MC |
| 0.5Mn | 0 | MC+0.5Mn |
| Mn(満載) | +0.5Mn | MC+Mn |
おもりがあれば、実質質量は −0.5Mn から +0.5Mn の範囲——絶対値の最大は0.5Mn。おもりがなければ MC+Mn まで必要です。電動機がずっと小さくて済むのが分かります。
αを1/3〜1/2 にするのは、平均的な乗車率を想定しているから。問題文も「αは1/3〜1/2程度に設計されることが多い」と明記しています。

⚠️ よくある間違い
(1)は(オ)だけが「力行」——4つ合っていても、ここで落とせば0点です。「上昇=力行」と反射的に答えさせる罠——「どちらが重いか」を必ず確認してください。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)ηが%表示なので 100/η を掛ける。
②(イ)10-3 があるので単位は kW。
③(ウ)差。(エ)小さく。おもりは変動幅を減らすため。
④(オ)★空荷ではおもりのほうが重い=回生運転。
💡 覚え方
「空荷で上昇=おもりに引っ張り上げられる=回生」——動く向きではなく、力の向きで決まる。そして「ηが%なら100/η」——単位の表し方で係数が変わります。

エレベータの運転パターンと電力
本問で見たとおり、エレベータは力行と回生を頻繁に繰り返します。4つの組合せを整理しておきましょう。
| 積載 | 方向 | 実質質量M | 運転 |
| 満載 | 上昇 | 正 | 力行 |
| 満載 | 下降 | 正 | ★回生 |
| 空荷 | 上昇 | 負 | ★回生 |
| 空荷 | 下降 | 負 | 力行 |
「重いほうが下がる向きなら回生」——これが判定のコツです。かご側が重ければかごが下がるとき回生、おもり側が重ければかごが上がるとき回生。
4通りのうち2通りが回生——エレベータは運転時間の約半分が回生だということになります。この電力を捨てるか回収するかで、消費電力が大きく変わるのです。
近年は回生電力を系統へ返す方式が普及しています。ビル全体の他の負荷が消費してくれるので、回生失効の心配も少ない——省エネ効果が確実に得られる用途だと言えます。
式の記号を取り違えない
本問には M、MC、ML、MB、Mn と5つの質量記号が出てきます。整理しておかないと式を追えません。
| 記号 | 意味 | 変わるか |
| MC | かご自体の質量 | 一定 |
| ML | そのときの積載質量 | ★乗客によって変わる |
| Mn | 定格積載質量 | 一定(設計値) |
| MB | 釣合いおもりの質量 | 一定 |
| M | 実質昇降質量 | ★ML によって変わる |
ML(実際の積載)と Mn(定格積載)の区別が要点です。おもりの設計には Mn を使い、そのときの実質質量には ML を使う——混同すると式が意味をなさなくなります。
M=ML−αMn という形にまとめると見通しがよくなります。かご質量 MC は打ち消し合って消える——残るのは「実際の積載」と「おもりが肩代わりする分」の差だけだからです。
この形にすれば(オ)も一目瞭然です。空荷なら ML=0 なので M=−αMn——符号が負だから回生。「かご質量がいくらか」は関係ないと分かります。
力行と回生の境目は ML=αMn——積載が定格のα倍のとき、電動機は何もしなくてよいことになります。α=0.5 なら、ちょうど半分乗っているとき——その前後で力行と回生が入れ替わるのです。
まとめ
| (ア) | 100/η |
| (イ) | kW |
| (ウ) | 差 |
| (エ) | 小さく |
| (オ) | 回生 |
| 答え | (3) |
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