今回は平成24年度 機械科目 B問題17を解説します。オフィスの天井照明の間引き点灯による節電電力(a)と、空調機の成績係数(COP)を用いた冷房電力削減効果の比率(b)を求める計算問題です。
光束法の公式N=EA/(FMU)から間引き前後の必要器具台数を求め、その差に消費電力を掛けて節電電力を求めます。冷房負荷の削減はCOPで割ることで求まり、節電電力に対する比率を計算します。
平成24年度 機械科目 B問題17:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題17
電験3種 機械科目 【照明】 平成24年度 B問題17
間口10〔m〕,奥行き40〔m〕のオフィスがある.夏季の節電のため,天井の照明を間引き点灯することにした.また,間引くことによる冷房電力の削減効果も併せて見積もりたい.節電電力(節電による消費電力の減少分)について,次の(a)及び(b)の問に答えよ.
(a)このオフィスの天井照明を間引く前の作業面平均照度は1000〔lx〕(設計照度)である.間引いた後は750〔lx〕(設計照度)にしたい.天井に設置してある照明器具は2灯用蛍光灯器具(蛍光ランプ2本と安定器)で,消費電力は70〔W〕である.また,蛍光ランプ1本当たりのランプ光束は3520〔lm〕である.照明率0.65,保守率0.7としたとき,天井照明の間引きによって期待される節電電力〔W〕の値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
(b)この照明の節電によって照明器具から発生する熱が減るためオフィスの空調機の熱負荷(冷房負荷)も減る.このため,冷房電力の減少が期待される.空調機の成績係数(COP)を3とすると,照明の節電によって減る空調機の消費電力は照明の節電電力の何倍か.最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
(1)420 (2)980 (3)1540 (4)2170 (5)4340〔W〕
(1)0.3 (2)0.33 (3)0.63 (4)1.3 (5)1.33〔倍〕
(a) 間引き前後の台数を別々に求める
光束法を2回使うだけ——ただし切り上げの順序が大切です。
★先に計算しておく
★切り上げ
★切り上げ
★答え
分母のFUM=3,203 lm を先に出しておく——2回とも同じ値を使うので、計算が1回で済みます。あとは分子の照度が1000 か750 かの違いだけです。
照度が0.75倍になれば台数も0.75倍——124.9×0.75=93.7 と、②は暗算でも出せます。
切り上げは必ず個別に
| 手順 | 計算 | 結果 |
| ★正しい | 125−94 | ★31台 |
| 差を先に取る | 124.9−93.7=31.2 →32 | 32台(誤り) |
実際に設置される台数は、それぞれ切り上げた整数——その差が間引く台数です。差を先に計算してから切り上げるのは順序が逆になります。

(b) COP とは何か
成績係数(COP)は「消費電力1 に対して、何倍の熱を運べるか」——効率ではなく倍率です。
1 を超えるのは、熱を「作る」のではなく「運ぶ」から——エネルギー保存則に反しているわけではありません。ヒートポンプの原理です。
★COP で割る
★答え
じつは2,170 W という値すら不要——比率を問われているので、答えは必ず1/COP になります。COP=3 なら0.33——(a)を落としても(b)は取れる設問です。
照明が2,170 W 減れば、その分の発熱も2,170 W 減る——電気は最終的にすべて熱になるからです。その熱を運び出す電力が3分の1で済む——だから空調は723 W 減るのです。

⚠️ よくある間違い
台数の端数を切り捨ててしまうのが典型的な誤り——124.9台では1000 lx に届きません。
設計照度は「下回ってはいけない値」——だから必ず切り上げです。124台と93台にすると差は31台で答えは同じですが、考え方としては誤りです。
(b)でCOP を掛けてしまうのも多い誤り——2170×3=6510 W では比率が3倍になり、選択肢(4)の1.3 や(5)の1.33 に近づきます。「1 kW の電力で3 kW の熱を運ぶ」のですから、熱が減れば電力はその3分の1しか減らない——割り算です。
照明の節電が空調に効く理由
照明器具が消費した電力は、最終的にすべて熱になります——光として出た分も、壁や床に吸収されて熱に変わるからです。
| 季節 | 照明を減らすと | 空調への影響 |
| ★夏(冷房) | 室内の発熱が減る | ★冷房電力も減る(相乗効果) |
| 冬(暖房) | 室内の発熱が減る | ★暖房電力は増える(相殺) |
本問が「夏季の節電のため」と書いているのは、この季節性を踏まえてのこと——冬に同じことをすると、暖房が余分に働きます。
ただし冬でも、暖房のCOP も3程度——照明で1 kW 減らせば暖房は0.33 kW 増えるだけ。差し引き0.67 kW の節約にはなります。
⏱️ 本番での進め方
①FUM=7040×0.65×0.7=3203 を先に計算。
②★台数はそれぞれ切り上げてから差を取る(125−94=31)。
③節電電力=台数差×1台の消費電力70 W。
④★(b)は比率なので答えは必ず1/COP=0.33。
💡 覚え方
「照度が0.75倍なら台数も0.75倍」——光束法は単純な比例です。そして「COP は運ぶ倍率」——熱が減ったときの電力削減は割り算になります。
光束法の基本問題は令和2年度 A問題12にあります(照明:光束法による必要最小限の光源数)。

節電の手段は間引きだけではない
本問は「間引き点灯」による節電——他にどんな方法があるかも知っておきましょう。
| 方法 | 効果 | 注意点 |
| 間引き点灯(本問) | 台数に比例して削減 | ★均一さが損なわれる |
| 高効率ランプへ交換 | ★同じ照度で電力を削減 | 初期費用がかかる |
| 調光制御 | 必要なときだけ明るく | 調光器が必要 |
| 昼光利用 | 窓際の照明を落とす | センサと制御が必要 |
間引き点灯の弱点は、明暗のむらができること——1つおきに消すと、消えた場所の下が暗くなります。平均照度は750 lx でも、場所によっては600 lx 程度になりかねません。
だから「どの器具を消すか」も設計の一部——市松模様に消すなど、均一さを保つ工夫が必要になります。
設計照度の考え方
1,000 lx から750 lx へ落とす——作業に支障のない範囲だから可能な判断です。
事務室の推奨照度は300〜750 lx——750 lx はその上限にあたります。1,000 lx はやや過剰だったとも言えるでしょう。
照度を落とせるかどうかは、そこで何をするか次第——細かい図面を引く机と、通路とでは必要な明るさが違います。一律に下げるのではなく、場所ごとに見直すのが本来の省エネです。
まとめ
| N1(1000lx) | 125台 |
| N2(750lx) | 94台 |
| ΔPL | 2170W |
| (a) | (4) |
| ΔPR/ΔPL=1/COP | ≒0.33 |
| (b) | (2) |
| 答え | (a)-(4),(b)-(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
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・円板光源による廊下の平均照度:【機械】平成29年度B問題17

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