今回は平成18年度 機械科目 A問題12を解説します。デジタルカメラやハイブリッド車用電源としても使われるニッケル・水素蓄電池の電解液・正極/負極の活物質・公称電圧・ニッケルカドミウム電池との比較に関する空所補充問題です。
電解液に水酸化カリウム水溶液、正極にオキシ水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金を用い、公称電圧はニッケルカドミウム蓄電池と同じ1.2Vである点、体積エネルギー密度が高い点がポイントです。
平成18年度 機械科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題12
電験3種 機械科目 【電気化学】 平成18年度 A問題12
ニッケル・水素蓄電池※は,電解液として(ア)水溶液を用い,(イ)にオキシ水酸化ニッケル,(ウ)に水素吸蔵合金をそれぞれ活物質として用いている。
公称電圧は(エ)〔V〕である。
この電池は,形状,電圧特性などはニッケル・カドミウム蓄電池に類似し,さらに,ニッケル・カドミウム蓄電池に比べ,(オ)が高く,カドミウムの環境問題が回避できる点が優れているので,デジタルカメラ,MDプレーヤ,ノートパソコンなど携帯形電子機器用の電源として使用されてきたが,近年,携帯用電動工具用やハイブリッド車用の電池としても使用されるようになってきている。
(注)※の「ニッケル・水素蓄電池」は,「ニッケル・金属水素化物電池」と呼ぶこともある。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる語句又は数値として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) H₂SO₄ 正極 負極 1.5 耐過放電性能 (2) KOH 負極 正極 1.2 体積エネルギー密度 (3) KOH 正極 負極 1.5 耐過放電性能 (4) KOH 正極 負極 1.2 体積エネルギー密度 (5) H₂SO₄ 負極 正極 1.2 耐過放電性能
メモリー効果という現象
ニッケル系の電池に特有の劣化——使い方で容量が減ってしまう現象です。
浅い放電と充電を繰り返すと、電池が「そこまでしか使わない」と覚えてしまう——放電できる容量が見かけ上減るのです。これがメモリー効果。
| 電池 | メモリー効果 | 対策 |
| ニッケル・カドミウム | ★大きい | ときどき完全放電させる |
| ★ニッケル・水素 | 比較的小さい | 同上(ただし頻度は少なくてよい) |
| リチウムイオン | ★ほとんどない | 不要(むしろ完全放電は避ける) |
リチウムイオン電池には、この心配がありません——継ぎ足し充電してよいのはそのためです。むしろ完全放電のほうが電池を傷める——ニッケル系とは扱い方が正反対になります。
「昔の充電池は使い切ってから充電」と言われたのは、ニッケル・カドミウムが主流だった時代の話——電池の種類で正しい使い方が変わるのです。
ニッケル・水素電池が使われた場所
問題文が挙げる用途の変遷——電池の性能がそのまま反映されています。
| 時期 | 主な用途 | 求められた性能 |
| 1990年代 | デジタルカメラ、ノートパソコン | ★体積エネルギー密度 |
| 2000年代 | ★ハイブリッド車 | ★大電流の充放電・長寿命 |
| 現在 | ハイブリッド車、電動工具 | 安全性・コスト |
携帯機器はリチウムイオンに置き換わりました——より軽く、より高電圧だからです。
ところがハイブリッド車では今も使われています——大電流の充放電に強く、安全で、寿命が長いから。電圧の高さより信頼性が優先される用途だと言えます。
「用途によって最適な電池が違う」——新しいものが常に優れているわけではないのです。本問が用途の変遷を書いているのも、この電池の位置づけを示すためでしょう。
二次電池を1枚の表で比べる
電気化学の分野では、5種類の二次電池が繰り返し出題されます——まとめて覚えるのが効率的です。
| 二次電池 | 公称電圧 | 正極 | 負極 | 電解質 |
| 鉛蓄電池 | 2.0 V | 二酸化鉛 | 鉛 | 希硫酸 |
| ニッケル・カドミウム | 1.2 V | オキシ水酸化ニッケル | カドミウム | KOH 水溶液 |
| ★ニッケル・水素 | 1.2 V | オキシ水酸化ニッケル | 水素吸蔵合金 | KOH 水溶液 |
| リチウムイオン | 3.7 V | リチウム含有金属酸化物 | 黒鉛 | 有機電解液 |
| ナトリウム-硫黄 | 2.0 V | 硫黄 | ナトリウム | ベータアルミナ(固体) |
ニッケル・水素電池は、ニッケル・カドミウム電池の負極を置き換えたもの——正極も電解液も公称電圧も同じです。だから「形状、電圧特性などは類似」と問題文にあります。
変わったのは負極だけ——カドミウムを水素吸蔵合金に。これで環境問題を回避し、容量も増えたのです。

(ア) 電解液はKOH
ニッケル系の電池はアルカリ電解液——水酸化カリウム(KOH)水溶液です。硫酸は鉛蓄電池のもの——混同しないでください。
| 電解液の性質 | 該当する電池 |
| ★酸性(希硫酸) | 鉛蓄電池 |
| ★アルカリ性(KOH) | ニッケル・カドミウム、ニッケル・水素 |
| 非水(有機電解液) | リチウムイオン |
「アルカリ電池」という呼び方は、電解液がアルカリ性であることに由来します。ニッケル系はすべてアルカリだと押さえてください。
(エ) 公称電圧1.2 V の意味
ニッケル・カドミウムと同じ1.2 V——正極が同じオキシ水酸化ニッケルだからです。
電池の電圧は、正極と負極の材料の組合せで決まります——大きさや容量では変わりません。単1でも単4でも1.2 V なのはこのためです。
1.5 V は乾電池(マンガン・アルカリ)の値——選択肢に用意されているのは、そこを問うためでしょう。充電池に替えると少し電圧が低い——実感として覚えている方も多いはずです。
(オ) 水素吸蔵合金という材料
金属の結晶のすき間に水素を取り込む合金——自分の体積の1,000倍もの水素を蓄えられるものもあります。
| ニッケル・カドミウム | ★ニッケル・水素 | |
| 負極 | カドミウム | ★水素吸蔵合金 |
| 体積エネルギー密度 | 基準 | ★約2倍 |
| 環境負荷 | ★カドミウムは有害 | ★問題なし |
| メモリー効果 | 大きい | 比較的小さい |
カドミウムはイタイイタイ病の原因物質——使用が強く制限されています。だから「カドミウムの環境問題が回避できる点が優れている」のです。
体積エネルギー密度が約2倍——同じ大きさで2倍の電気を蓄えられるということ。だから携帯機器に向いていたのです。
「耐過放電性能」という選択肢もありますが、これはニッケル・カドミウムの長所——ニッケル・水素はむしろ過放電に弱いのです。優位点として挙げるなら体積エネルギー密度になります。

⚠️ よくある間違い
(ア)を硫酸としてしまう——選択肢(1)(5)がそれです。
硫酸は鉛蓄電池の電解液——ニッケル系はアルカリ(KOH)。(ア)だけで2つ落とせます。
(エ)を1.5 V とする選択肢(1)(3)——1.5 V は乾電池の値です。問題文に「ニッケル・カドミウム蓄電池に類似」とあるので、同じ1.2 V だと分かります。
(ア)と(エ)の2つで確定——(イ)(ウ)(オ)は見なくてよいことになります。
⏱️ 本番での進め方
①(ア) ニッケル系はアルカリ(KOH)。硫酸は鉛蓄電池。
②(エ) ニッケル系は1.2 V。乾電池の1.5 V と混同しない。
③(オ)★体積エネルギー密度が約2倍。耐過放電ではない。
④(ア)と(エ)の2欄だけで正解が確定する。
💡 覚え方
「ニッケル系は1.2 V でアルカリ」——Ni-Cd も Ni-MH も同じ。違うのは負極だけ(カドミウム→水素吸蔵合金)——その置き換えで環境問題を解決したのです。
リチウムイオン電池は平成30年度 A問題12(電気化学:リチウムイオン二次電池の構造)、NAS電池は令和4年度上期 A問題12(ナトリウム-硫黄電池)にあります。

まとめ
| (ア) | KOH |
| (イ) | 正極 |
| (ウ) | 負極 |
| (エ) | 1.2 |
| (オ) | 体積エネルギー密度 |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・リチウムイオン二次電池の構造の穴埋め問題:【機械】平成30年度A問題12
・固体高分子形燃料電池の発電原理の穴埋め問題:【機械】平成26年度A問題12

コメント