今回は令和4年度上期 機械科目 A問題12を解説します。大規模な電力貯蔵用二次電池であるナトリウム-硫黄電池(NAS電池)の動作温度・極性・電解質・起電力に関する空所補充問題です。
NAS電池はナトリウムと硫黄を液体化させて動作させるため約300℃の高温状態で使用され、負極にナトリウム、正極に硫黄、固体電解質にベータアルミナを用いる点、セル電圧は1.7〜2.1Vと低い点がポイントです。
令和4年度上期 機械科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題12
電験3種 機械科目 【電気化学】 令和4年度上期 A問題12
次の文章は,ナトリウム-硫黄電池に関する記述である。
大規模な電力貯蔵用の二次電池として,ナトリウム-硫黄電池がある。この電池は(ア)状態で使用されることが一般的である。(イ)極活性物質にナトリウム,(ウ)極活性物質に硫黄を使用し,仕切りとなる固体電解物質には,ナトリウムイオンだけを透過する特性がある(エ)を用いている。
セル当たりの起電力は(オ)Vと低く,容量も小さいため,実際の電池では,多数のセルを直並列に接続して集合化し,モジュール電池としている。この電池は,鉛蓄電池に比べて単位質量当たりのエネルギー密度が3倍と高く,長寿命な二次電池である。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 高温 正 負 多孔質ポリマー 1.2〜1.5 (2) 常温 正 負 ベータアルミナ 1.2〜1.5 (3) 低温 正 負 多孔質ポリマー 1.2〜1.5 (4) 高温 負 正 ベータアルミナ 1.7〜2.1 (5) 低温 負 正 多孔質ポリマー 1.7〜2.1
(ア) なぜ約300 ℃ という高温なのか
ナトリウムも硫黄も、常温では固体——溶かさないと反応が進みません。
| 物質 | 融点 | 300 ℃ での状態 |
| ナトリウム Na | 約98 ℃ | ★液体 |
| 硫黄 S | 約115 ℃ | ★液体 |
| ベータアルミナ | 固体のまま | ★高温ほどイオンが通りやすい |
両極とも液体、電解質だけが固体——ふつうの電池と正反対です。だから「固体電解物質」と問題文にあります。
もう1つの理由は、ベータアルミナのイオン導電性——常温ではナトリウムイオンがほとんど通れません。300 ℃ に上げて初めて実用的な電流が流せるのです。
だから運転を止められない——ヒータで保温し続ける必要があるということ。大規模な設備に限られる理由でもあります。

(イ)(ウ) ナトリウムが負極、硫黄が正極
ナトリウムは非常にイオン化しやすい金属——電子を放出する側、つまり負極になります。
★酸化
★還元
Na+ はベータアルミナを通って正極側へ——電子は外部回路を通る。合流して多硫化ナトリウムができるという反応です。
イオン化傾向を思い出せば、ナトリウムが負極だと分かります——アルカリ金属は最もイオン化しやすいグループ。硫黄は非金属なので電子を受け取る側です。
(エ) ベータアルミナの役割
ナトリウムイオンだけを通す固体電解質——イオン交換膜と同じ働きをします。
同時に、液体のナトリウムと硫黄を隔てる壁でもあります——直接触れると激しく反応してしまうからです。1つの部品が2役をこなしていることになります。
「多孔質ポリマー」という選択肢はリチウムイオン電池のセパレータ——300 ℃ では溶けてしまいます。高温という条件から、材料が絞られるのです。

⚠️ よくある間違い
(イ)(ウ)を逆にしてしまう——選択肢(1)(2)(3)が「正極ナトリウム、負極硫黄」です。
金属が負極、非金属が正極——イオン化傾向で判断できます。金属は電子を出してイオンになりたがるのです。
(ア)が「高温」だと分かれば(1)(4)に絞れる——あとは(イ)を見るだけ。2手で確定します。
(オ)の1.2〜1.5 V はニッケル系の値——NAS電池は約2 V です。「鉛蓄電池に比べて」という比較が問題文にあるので、近い電圧だと見当がつきます。
大規模電力貯蔵という用途
NAS電池は「大規模な電力貯蔵用」——携帯機器には使えません。その理由と役割を見ておきましょう。
| 貯蔵方式 | 規模 | 特徴 |
| 揚水発電 | ★最大(GW級) | 地形が必要 |
| ★NAS電池 | MW級 | ★設置場所を選ばない・長時間放電 |
| リチウムイオン | MW級 | 高価だが応答が速い |
| レドックスフロー | MW級 | 電解液タンクで容量を決められる |
夜間の余剰電力を溜めて昼間に使う——ピークシフトという使い方です。数時間にわたって放電し続ける用途に向いています。
再生可能エネルギーの出力変動を吸収する用途も広がっています——太陽光や風力は天候で変わるので、蓄電池で平準化するのです。
一方で、高温運転による安全管理が課題——過去には火災事故も起きています。溶融ナトリウムを扱う以上、厳重な管理が要ることになります。
⏱️ 本番での進め方
①(ア) Na(98 ℃)とS(115 ℃)を溶かすため★高温。
②(イ)(ウ) 金属Na が負極、非金属S が正極。
③(エ) ベータアルミナはNa+ だけを通す★固体電解質。
④(ア)と(イ)の2欄で確定する。
💡 覚え方
「金属は負極、非金属は正極」——イオン化傾向で決まります。そして「300 ℃ はNa とS を溶かすため」——融点98 ℃ と115 ℃ を思い出せば納得できます。
他の二次電池は平成18年度 A問題12(ニッケル・水素蓄電池)、平成30年度 A問題12(リチウムイオン二次電池)にあります。

NAS電池の充放電反応
放電で多硫化ナトリウムができ、充電で元に戻る——可逆反応です。
放電が進むほど硫黄側の組成が変わり、電圧も少しずつ下がります——問題文の「1.7〜2.1 V」という幅は、この組成変化によるものです。
満充電に近いほど2.1 V、放電が進むと1.7 V——電圧から充電状態が推定できることになります。鉛蓄電池で比重を測るのと同じ発想です。
自己放電がほとんどない
固体電解質なので、電極どうしが混ざりません——放置しても電気が減らないのが利点です。
ただし温度を保つためのヒータ電力が要る——実質的にはそれが自己放電にあたると言えます。長期間止めておく用途には向かないのです。
だから毎日充放電を繰り返す用途(ピークシフト)に最適——用途と特性が一致していることになります。
空欄の絞り込み手順
5つの空欄がありますが、2つで確定します。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (ア) | 高温 | ★(1)(4) |
| (イ) | 負 | ★(4)に確定 |
(ア)は「ナトリウムと硫黄を液体にする」という説明から高温——常温や低温では反応が進みません。これで3つ落ちます。
次に(イ)——金属ナトリウムが負極。これで確定します。(ウ)(エ)(オ)は見なくてよいことになります。
穴埋め問題では、確信のある欄から潰していく——すべての空欄を検討する必要はありません。A問題は1問4〜5分ですから、この絞り込みで1分以内に終わります。
まとめ
| (ア) | 高温 |
| (イ) | 負 |
| (ウ) | 正 |
| (エ) | ベータアルミナ |
| (オ) | 1.7〜2.1 |
| 答え | (4) |
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