今回は令和4年度上期 電力科目 A問題9、フェランチ効果の誤り選択問題です。受電端電圧が送電端より高くなるこの現象は、ケーブルの静電容量が大きい地中送電(地中送電6の「C大」)でとくに顕著になります。
フェランチ効果の発生メカニズム:無負荷・軽負荷時は線路の対地静電容量への充電電流(進み電流)が支配的になり、進み電流がリアクタンスを流れると受電端電圧が送電端より上がる。「重負荷で発生しやすい」は正反対で、対策は分路リアクトル(変電48の重C軽L)です。
誤りは(3):軽負荷のときに起きる
「負荷が重い場合に発生しやすい」——逆です。
| 条件 | 起きやすい | 起きにくい | 理由 |
| ★負荷 | ★★軽負荷・無負荷 | ★★重負荷 | ★★負荷の遅れ電流が線路の進み電流を打ち消す |
| ★こう長 | ★★長い | ★短い | ★長いほど静電容量が大きい |
| ★線路の種類 | ★★ケーブル(地中線) | ★架空線 | ★★静電容量が数十倍 |
| ★電流の位相 | ★★進み | ★★遅れ | ★進み電流が電圧を押し上げる |
線路には、いつでも進み電流(充電電流)が流れています——静電容量があるからです。
負荷が重いときは、遅れ電流のほうが大きい——だから合計は遅れになります。
負荷が軽くなると、遅れ電流が減ります——すると進み電流が勝つのです。
だから軽負荷・無負荷のときに起きます——深夜や連休中がその条件。
「重い」と書いてあれば、それだけで誤りと分かります。
令和4年度上期 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【地中送電】 令和4年度上期 A問題9
送電線路のフェランチ効果に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 受電端電圧の方が送電端電圧よりも高くなる現象である。
(2) 短距離送電線路よりも、長距離送電線路の方が発生しやすい。
(3) 無負荷や軽負荷の場合よりも、負荷が重い場合に発生しやすい。
(4) フェランチ効果発生時の線路電流の位相は、電圧に対して進んでいる。
(5) 分路リアクトルの運転により防止している。

(4) 進み電流が電圧を押し上げる
★受電端のほうが高い
電圧降下が負になるという言い方に慣れておきます——実際には上昇しているのです。
送電線では X が R より大きいので、第2項が主役——その符号がすべてを決めます。
だから(4)の「電圧に対して進んでいる」は正しい——進み電流こそが原因だから。
(1)(2)(5)も、この表と式から確かめられます。
(5) 分路リアクトルで打ち消す
| 設備 | 流す電流 | 効果 | 使う場面 |
| ★分路リアクトル | ★★遅れ電流 | ★★電圧を下げる | ★★軽負荷時 |
| ★電力用コンデンサ | ★★進み電流 | ★★電圧を上げる | ★★重負荷時 |
進み電流が原因なので、遅れ電流をぶつけます——打ち消せば電圧上昇が収まるのです。
「重C軽L」と覚えます——重負荷にはコンデンサ、軽負荷にはリアクトル。
入れっぱなしにすると、昼間に電圧が下がりすぎます——だから時間帯で切り替えるのです。
複数台に分けておけば、細かく調整できます——日々の運用そのものになります。
⚠️ よくある間違い
(3)の「負荷が重い場合」を見落とす——フェランチは軽負荷の現象です。この1語だけで誤りと分かります。
(1)を疑ってしまう——受電端のほうが高くなるのが定義。
(2)を疑ってしまう——長いほど静電容量が大きく起きやすい。
(4)を疑ってしまう——進み電流こそが原因です。
(5)を疑ってしまう——分路リアクトルが正しい対策。
「重い」「軽い」「進み」「遅れ」を拾う——フェランチはこの4語で解けます。
⏱️ 本番での進め方
①★フェランチは軽負荷・無負荷で起きる。
②★長距離・ケーブルほど起きやすい。
③★線路電流は電圧より進んでいる。
④★対策は分路リアクトル(重C軽L)。
💡 覚え方
「軽いときに上がる」——負荷が減ると進み電流が勝ちます。重C軽L——フェランチは軽負荷なのでLです。
★フェランチは3回出題されています——平成19年度 A問題9(地中送電:フェランチ現象)の空欄補充、平成24年度 A問題12(地中送電:フェランチ効果)の誤り選択、そして本問です。
充電電流の大きさを見積もる
線路に流れる進み電流を、式で確かめましょう。
| 条件 | 充電電流 | フェランチ |
| ★短い架空線 | ★★ごくわずか | ★起きない |
| ★長い架空線 | ★大きい | ★★起きる |
| ★ケーブル | ★★きわめて大きい | ★★短くても起きる |
静電容量はこう長に比例します——だから長いほど充電電流が大きいのです。
周波数にも比例するので、60 Hz のほうがやや大きい。
負荷電流がこれより小さくなれば、合計は進みになります——そこがフェランチの境目です。
だから「軽負荷」と「長距離」が条件として並ぶ——どちらも同じことを言っているのです。
(2) 長距離ほど起きやすい理由
こう長が2つの経路で効いてきます。
| 量 | こう長との関係 | フェランチへの効き方 |
| ★静電容量 C | ★★比例して増える | ★★充電電流が増える |
| ★リアクタンス X | ★★比例して増える | ★★同じ電流でも電圧上昇が大きい |
充電電流が増え、しかもリアクタンスも増えます——両方が同じ向きに働くのです。
電圧上昇は、その積に効いてきます——だからこう長の2乗に近い形で増える。
だから長距離送電線ではとりわけ顕著になります——短い線路ではまず問題になりません。
(2)が「短距離よりも長距離」と書くのはそのため——2つの理由が重なっているのです。
フェランチと自己励磁を区別する
どちらも進み電流が絡むので、混同されがちです。
| ★フェランチ効果 | ★自己励磁現象 | |
| ★起きる場所 | ★★送電線の受電端 | ★★発電機の端子 |
| ★状況 | ★★軽負荷・長距離 | ★★無負荷の発電機に長い線路をつなぐ |
| ★何が起きるか | ★★受電端電圧が送電端より高くなる | ★★励磁しなくても電圧が立ち上がる |
| ★対策 | ★★分路リアクトル | ★発電機の容量を大きくする |
自己励磁は、発電機の残留磁気から始まります——進み電流が磁束を強める向きに働くのです。
電圧が上がればさらに進み電流が増えます——正のはたらきかけが続いて暴走する。
フェランチは線路の現象、自己励磁は発電機の現象——起きる場所で区別できます。
問題文は「送電線路の」と書いています——だからフェランチです。
(1) 定義そのものを確かめる
フェランチ効果とは何かを、はっきりさせておきます。
| 通常 | ★フェランチ効果 | |
| ★送電端電圧 | ★高い | ★★低い |
| ★受電端電圧 | ★低い | ★★高い |
| ★電圧降下 | ★正 | ★★負(実際は上昇) |
ふつうは送るほうが高く、届くほうが低い——途中で電圧降下があるからです。
その関係がひっくり返るのがフェランチ効果——だから「効果」という名前が付いた。
受け取る側のほうが高いというのは、直感に反します——だから発見当時は驚かれたのです。
けれども進み電流を考えれば、当然の結果——式の符号がそのまま表していることになります。
(5) 分路リアクトルの置き方
どこに、どれだけ入れるのでしょうか。
| 項目 | 内容 |
| ★置く場所 | ★★変電所の母線または変圧器の三次側 |
| ★容量 | ★線路の充電容量に見合う分 |
| ★運用 | ★★軽負荷時に投入し、重負荷時に切り離す |
| ★調整 | ★複数台を段階的に入り切りする |
入れっぱなしにすると、昼間に電圧が下がりすぎます——だから時間帯で切り替えるのです。
複数台に分けておけば、細かく調整できます——1台ずつ入れていくことになります。
変圧器の三次側に付けることも多い——低い電圧で扱えるので装置が小さくて済む。
電力用コンデンサと同じ場所に並べて置かれます——状況に応じて使い分けるのです。
まとめ
| 誤り | (3) フェランチ効果は無負荷・軽負荷で発生しやすい |
| 現象 | 受電端電圧>送電端電圧(1) |
| 原因 | 充電電流(進み電流)×線路リアクタンス(4) |
| 条件 | 長距離(2)・ケーブル系統(C大)で顕著 |
| 対策 | 分路リアクトル(5) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・ケーブルはC大(地中送電6):【電力】令和5年度上期 A問題10
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