今回は平成18年度 電力科目 A問題5、受電端電圧を一定に保つための調相設備の使い分けを問う空欄補充問題です。令和6年度下期A問題6(変電3)や平成21年度A問題6(変電42)と同じ、変電の看板テーマです。
覚え方は「重C軽L」。重負荷時=遅れ無効電力で電圧が下がる→電力用コンデンサで進相負荷をとらせて持ち上げ、軽負荷時=フェランチ効果で電圧が上がる→分路リアクトルで遅相負荷をとらせて抑える。同期調相機は界磁電流の調整で進み⇔遅れを連続制御できる万能型です。
平成18年度 電力科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題5
電験3種 電力科目 【変電】 平成18年度 A問題5
交流送配電系統では、負荷が変動しても受電端電圧値をほぼ一定に保つために、変電所等に力率を調整する設備を設置している。この装置を調相設備という。
調相設備には、(ア)、(イ)、同期調相機等がある。(ウ)には(ア)により調相設備に進相負荷をとらせ、(エ)には(イ)により遅相負荷をとらせて、受電端電圧を調整する。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 電力用コンデンサ 分路リアクトル 重負荷時 軽負荷時 (2) 電力用コンデンサ 分路リアクトル 軽負荷時 重負荷時 (3) 直列リアクトル 電力用コンデンサ 重負荷時 軽負荷時 (4) 分路リアクトル 電力用コンデンサ 軽負荷時 重負荷時 (5) 電力用コンデンサ 直列リアクトル 重負荷時 軽負荷時

(ウ)(エ) 重負荷と軽負荷で入れ替える
本問の要点は、いつどちらを使うかという対応です。
| ★重負荷時 | ★軽負荷時 | |
| ★受電端電圧 | ★下がる | ★上がる |
| ★原因 | ★負荷の遅れ電流による電圧降下 | ★線路の静電容量による充電電流 |
| ★投入するもの | ★電力用コンデンサ | ★分路リアクトル |
| ★とらせる負荷 | ★進相負荷 | ★遅相負荷 |
重負荷時は電圧が下がるので、上げる必要があります——進み無効電力を供給すればよいのです。
軽負荷時は電圧が上がるので、下げる必要があります——遅れ無効電力を吸収します。
問題文の「進相負荷をとらせ」は、系統から見た表現——調相設備が進み電流を流すという意味です。
なぜ軽負荷時に電圧が上がるのか
フェランチ効果と呼ばれる現象です。
| 負荷の状態 | 支配的な電流 | 受電端電圧 |
| ★重負荷 | ★負荷の遅れ電流 | ★送電端より低い |
| ★軽負荷・無負荷 | ★線路の静電容量による進み電流 | ★★送電端より高くなる |
送電線は電線と大地の間がコンデンサになっています——そこへ充電電流が流れるのです。
進み電流が線路のリアクタンスを通ると、電圧が上がります——遅れ電流なら下がるのと逆になります。
だから夜間や休日に電圧が上がりすぎることがある——分路リアクトルで抑えます。
長い送電線やケーブル系統ほど静電容量が大きく、効果が顕著——地中送電では特に問題になります。
(ア)(イ) 直列リアクトルとの区別
| 機器 | 接続 | 目的 |
| ★分路リアクトル | ★線路と並列 | ★遅れ無効電力を吸収し電圧を下げる |
| ★直列リアクトル | ★コンデンサと直列 | ★高調波の拡大防止・突入電流の抑制 |
名前が似ていますが、役割がまったく違います——調相設備なのは分路リアクトルです。
直列リアクトルは電力用コンデンサの付属品——単独では調相の役に立ちません。
容量はコンデンサの6 % が標準——第5調波に対して誘導性にするためです。
⚠️ よくある間違い
(ウ)(エ)を入れ替えてしまう——選択肢(2)(4)がそれです。重負荷で電圧が下がるからコンデンサ——そこを取り違えると逆になります。
(ア)を「直列リアクトル」としてしまう——選択肢(3)。コンデンサの付属品であって調相設備ではありません。
(イ)を「直列リアクトル」としてしまう——選択肢(5)。遅相負荷をとらせるのは分路リアクトル。
(ア)(イ)を入れ替えてしまう——選択肢(4)。進相ならコンデンサ、遅相ならリアクトルです。
(ア)だけで(1)(2)(5)に絞れます——あとは(ウ)で確定するでしょう。
⏱️ 本番での進め方
①★重負荷で電圧が下がる→コンデンサで進相。
②★軽負荷で電圧が上がる→リアクトルで遅相。
③★軽負荷で上がるのはフェランチ効果。
④★分路リアクトルと直列リアクトルは別物。
💡 覚え方
「重いときは足す、軽いときは吸う」——進み無効電力を足すか、吸うかです。電圧が下がるか上がるかを先に判断すれば、設備は自然に決まります。
調相設備の種類は平成24年度 A問題8(変電:調相設備)で詳しく扱っています。
力率改善がもたらすもの
調相設備は電圧調整だけでなく、損失も減らします。
| 効果 | 内容 |
| ★電圧降下の減少 | ★XQ の項が減る |
| ★線路損失の減少 | ★電流が減るので I²R が減る |
| ★設備容量の余裕 | ★同じ kV·A でより多くの kW を送れる |
| ★電気料金の低減 | ★力率割引が適用される |
力率0.8 を0.95 にすれば、電流は約16 % 減ります——損失は電流の2乗なので約29 % 減。
★16 % 減
★29 % 減
だから力率改善は、電圧・損失・容量の3つに同時に効きます——費用対効果が高いのです。
需要家側でも進相コンデンサを設置します——電気料金の力率割引があるからです。
要点をもう一度
4つの空欄が、調相設備の使い分けを問うています。
| 空欄 | 答え | 対応 |
| (ア) | ★電力用コンデンサ | ★進相負荷をとらせる |
| (イ) | ★分路リアクトル | ★遅相負荷をとらせる |
| (ウ) | ★重負荷時 | ★電圧が下がるとき |
| (エ) | ★軽負荷時 | ★電圧が上がるとき |
(ア)だけで(1)(2)(5)に絞れます——あとは(ウ)で確定です。
電圧が下がるか上がるかを先に判断すれば、設備は自然に決まります。
同期調相機という第3の選択肢
問題文が「同期調相機等」と挙げています。
| 設備 | 進相 | 遅相 | 調整 |
| ★電力用コンデンサ | ★可 | ★不可 | ★段階的 |
| ★分路リアクトル | ★不可 | ★可 | ★段階的 |
| ★同期調相機 | ★可 | ★可 | ★連続的 |
1台で両方まかなえるのが同期調相機の強み——けれども回転機なので損失が大きいのです。
調相設備の投入と開放
実際の運用では、時刻に応じて切り換えます。
| 時間帯 | 負荷 | 電圧 | 操作 |
| ★昼(平日) | ★重い | ★下がりやすい | ★コンデンサを投入 |
| ★夜間・休日 | ★軽い | ★上がりやすい | ★コンデンサを開放しリアクトルを投入 |
1日のうちで何度も切り換えます——変電所の日常業務です。
近年は太陽光の影響で、昼でも軽負荷のような状態になります——春秋の晴天日は特に。
だから従来の「昼は重負荷」という前提が崩れつつある——制御が複雑になっています。
段階的な投入
電力用コンデンサは、いくつかの群に分けて設置します。
必要な分だけ投入すれば、細かく調整できます——1台ずつ入切するのです。
それでも段階的な調整にとどまります——連続的に変えたいなら同期調相機かSVCになります。
受電端電圧を一定に保つ意味
問題文の冒頭が、調相設備の目的を述べています。
| 電圧が変動すると | 影響 |
| ★高すぎる | ★絶縁の劣化・照明の短寿命化 |
| ★低すぎる | ★電動機のトルク不足・始動困難 |
| ★変動が大きい | ★照明のちらつき・電子機器の誤動作 |
電動機のトルクは電圧の2乗に比例します——1割下がるとトルクは約2割減るのです。
だから工場では電圧低下が生産に直結します——始動できないこともあるから。
低圧では101±6 V、202±20 V に保つ義務があります——電気事業法で定められています。
その義務を果たすために、変電所で調整する——調相設備はそのための設備です。
まとめ
| (ア) | 電力用コンデンサ(進相負荷) |
| (イ) | 分路リアクトル(遅相負荷) |
| (ウ) | 重負荷時(電圧降下をC で持ち上げ) |
| (エ) | 軽負荷時(フェランチをLで抑制) |
| 直列リアクトル | 調相設備ではない(コンデンサの付属機器) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・調相設備は並列・C進めL遅らせ(変電3):【電力】令和6年度下期 A問題6
・変電所の役割と重C軽L(変電42):【電力】平成21年度 A問題6
・調相設備の空欄補充(変電33):【電力】平成24年度 A問題8

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